みんなが幸せになれる障害者の地域生活とは

みんなが幸せになれる障害者の地域生活とは

障害福祉のトレンドは「施設から地域へ」

人里離れた僻地に巨大なコロニー(大規模収容施設)を造り、親元を離れ、そこで守られながら一生を過ごすというのが、かつてのこの国における障害者施策の根幹でした。

ところが現在は「施設から地域へ」を合言葉に、福祉的支援を受けながら地域で暮らせる可能性があり、本人も地域での生活を望んでいるのであれば、地域移行や地域定着の支援を推進せよとの方針を打ち立てております。

このように、ノーマライゼーションの理念のもと、地域生活を営むコトができるための支援を推進するのが現在の障害福祉のトレンドであります。

ちなみにノーマライゼーションの理念とは、厚生労働省のホームページによれば「障害のある人もない人も、互いに支え合い、地域で生き生きと明るく豊かに暮らしていける社会を目指す」コトであります。

とはいえ、施設福祉が果たしてきた功績やこれから期待される役割がなくなるワケではありません。施設でしか生きられない障害者が生活する場を提供してきたコトは「正当に評価されるべき史実」であります。

 

「施設から地域へ」の大きな第一歩~住まいの確保

「施設から地域へ」という課題解決のために最優先される具体策は何でしょうか? いうまでもなく、住まいの確保であります。家が見つからなければ、地域移行も地域定着もないのです。

そして、われわれ障害者ケアマネが地域移行や地域定着の支援を行うためにいつも苦慮するのは、相談者の住まいの確保です。

障害者の地域生活を実現するために想定される「安心して暮らせる住まいの確保」については、主に次のような手段が考えられます。

①自宅で親族の支援を受けながらの同居生活+在宅系サービス

②共同生活援助事業所(グループホーム)や住宅型有料老人ホーム等の居住系サービス

③下宿による共同生活+在宅系サービス

④賃貸契約による独居生活+在宅系サービス

相談者それぞれの置かれた状況によって住まいの確保の方法は千差万別かつ一長一短ではありますが、これらのうち、②のグループホームもなかなか空きがなく困っているものの、支援に最も支援に困難を極めるのが④の、賃貸契約による独居生活の実現であります。

 

これだけ物件が余っていると言われて久しいのに…

僕が障害福祉の業界に転職してから、相談支援の困難ケースの中でつねに苦労を強いられていたのが、障害者の賃貸契約におけるハードルの高さでした。

独居生活を望む相談者やそうせざるを得ない事情にある相談者は、一般就労と障害年金で暮らしているヒトもいれば、福祉的就労と障害年金と生活保護で暮らしているヒトもいました。

月々の家賃はしっかり支払えるだけの経済力があり、日々の仕事もマジメにこなし、僕ら障害者ケアマネがバックについている。にもかかわらず、障害があるコトを理由に契約を断わられてしまうのです。

ちなみに、平成25年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」、いわゆる「障害者差別解消法」が制定され、平成28年4月1日から施行されました。したがって、障害があるというコトで契約をしないという対応はすべて差別になります。

僕が障害者ケアマネになった当時は上記の法律が施行される前で、当時は知的障害や精神障害があるのを理由に契約を拒否するのが当然といった扱いを受けるコトが少なくありませんでした。

 

賃貸契約のネックになるのは連帯保証人の有無

われわれ障害者ケアマネの存在がそれなりに認知されるようになってきたのか、それとも背に腹は代えられぬと思ったのか定かではありませんが、障害者の賃貸契約も理解が進んできました。

ところが、わがマチにおいて賃貸契約を阻む「障害の有無とは別な障害」に頭を痛めております。「連帯保証人の有無」であります。

不動産会社が説明するには、現在は療育手帳を持っていようが精神保健福祉手帳を持っていようが、われわれ障害者ケアマネがいるなら貸主は支払いの面で心配していないとの話でした。

福祉的就労と障害年金と生活保護で毎月ギリギリの生活をしていようとも、「生活保護の上限額の物件であれば家賃が未払いになる心配はしていない」という話もありました。

では、一体何が心配なのかという話になりますが、それは「本人が突然、行方不明になったとか死亡した際に部屋の後始末を誰がするのか?」という点に集約されるのです。

つまり、貸主が「是が非でも連帯保証人をつけろ」という理由は、家賃の未払いがあった際の連帯保証ではなく、以上の状況になった際の連帯保証であります。

そして、それは親族のいずれかでなければならないと、わがマチの大家さんは口を揃える。僕ら障害者ケアマネがその職権をもって全面的にバックアップするといっても納得してくれないのです。

 

では、どのように賃貸契約にこぎつけるのか?

 これまで述べたとおり、いくら不動産会社が売り出しをしてきても、肝心の貸主が承諾してくれなければ何の解決にもなりません。特に、親や身寄りのない児童養護施設出身の相談者が高等養護学校を卒業した後の住まい探しには本当に苦慮します。

既存のサービスや正攻法ではとても対処できないというのであれば、それは現代における錬金術の如く、チエを絞り、人脈を活用あるいは発掘し、「ゼロから生み出す」のみであります。

そこで、わがマチの障害者ケアマネが実践している住まい探しの方法を列挙しますと、主に次のとおりになります。

連帯保証人がいなくても契約してくれる不動産会社を頼る

1つ目のケースは、わがマチにたった1社だけ存在します。社長が本人と面談し、社長の裁量で自社物件を貸してくれるというものです。障害者ケアマネの多くがお世話になっています。大手の不動産会社が絶対にやらないスキマ産業、相当売り上げに貢献していると思います。

 

連帯保証人がいなくても契約してくれる貸主の紹介を頼る

2つ目は僕が前職で担当した中で、ごく少数ですが存在しました。緊急連絡先に障害者ケアマネの電話番号を明記するとか、敷金とは別に保証料を家賃1ヶ月分で納入するコトを条件に。

 

成年後見人を連帯保証人と同等の存在とみなしてもらう

3つ目は僕が担当したレアケースです。成年後見制度を利用し、保佐人となった職業後見人が顧問として担当している不動産会社の物件を「このセンセイが後ろ盾なら」というコトで特別に承諾を得たという稀有な事例でした。

 

解決策はひとつ~「みんなが幸せになれる方法」を模索するのみ

このように、障害があるコトを理由に賃貸契約を断られるケースが減ってきた一方、連帯保証人が立てられないコトを理由に賃貸契約を断られるという地域課題が抜本的に解決しないまま現在に至ります。

ですが、「これだけ物件が余っているのに。障害者に対する理解が足りない」とか「貸主は家賃が入る。借主は住まいを確保できる。断る理由はないじゃないか」などと貸主を責めるつもりはありません。

なぜなら、大事な物件を多額の自己負担で原状回復しなければならない事態になったらどうしようと不安に思うのも当然だからです。また、差別的な扱いさえなければ、大家さんには物件を貸すかどうかを最終的に決める権限があります。それに異論を挟むつもりもありません。

ならば、どうしたら良いか? 僕が考え得る答えはひとつです。それは「誰もがシアワセになる方法を模索するしかない」というものです。

「障害者なんだから仕方ない」と、障害者のために支援者が自己犠牲を払うコトが当然といわんばかりの風潮がありました。転職当時、そういった考え方の支援者が少なくないコトに驚きを隠せませんでした。

批判を承知でハッキリ断言しますが、僕は障害者のために支援者が自己犠牲を払うのが当然という考えは絶対に間違っていると思っています。僕は誰かの犠牲になるために障害者ケアマネをやっているワケじゃない。

障害者もその家族も支援者も関係者も、みんなが幸せになれる方法を模索し続けるコトこそが正しい。そう信じて疑いません。

だからこそ、家を借りたい障害者も、家を貸したい大家さんも、そして僕ら障害者ケアマネも、誰もが納得した上で地域生活の拠点を確保できる方法を模索しなければならないと考えています。

そのためには、「たとえ障害があっても、マジメにまっとうに日々の生活を送っている借主がいる」というモデルケースをわれわれ障害者ケアマネが1つでも多く輩出し、わがマチの大家さんに向けて情報発信していくコトしかないと考えています。