ギタリスト目線で語るSpitz(スピッツ)の魅力

ギタリスト目線で語るSpitz(スピッツ)の魅力

10代の頃から未だに聴き続けているバンドといえば

僕の人生を振り返って、最も楽しかったなと思える時期は大学4年間と最初の就職をしてからの数年間でした。つまり10代後半から20代半ばにかけての青春時代であります。

その当時はバブル経済が弾け、この国の景気が悪化の一途を辿っていた時代でした。

あの頃は良かった的な話や若かりし頃の武勇伝を当時の上司からさんざん聞かされ、「自慢話はウンザリ」と食傷気味だったのも良い思い出であります。

僕の音楽の嗜好性は10代後半でほぼ形成されたと言って良く、その当時に好んで聴いていた曲は40代半ばに差しかかった今もなお聴き直すコトがよくあります。

だからと言って最近の流行を聴かないのかというとそうではなく、イイと思う音楽ならジャンルを問わず、貪欲に聴きまくっているという節操のなさもありますが。

こういう話をすると、往年のプロのバンドの曲を何でも聴いているように思われますが、20年以上にわたって聴き続けているのは5本の指で足りる程度であります。

僕が20年以上にわたり聴き続けているバンドはBOØWY、BARBEE BOYS、Mr.Children、L’Arc〜en〜Ciel、そしてSpitzです。公用車兼マイカーには、いずれのCDも搭載済みであります。

今回はエレキギター弾きとしての視点で、人気ロックバンドの魅力を語ってみたいと思います。テーマに取り上げるのは、最後に挙げたSpitz(スピッツ)についてです。

 

バンドの顔といえば、やはりヴォーカル担当

Spitzの魅力といえば、ヴォーカル草野マサムネさんの乾いたハイトーンヴォーカルとフシギな歌詞の世界、そして誰のココロにもスーッと入っていく心地好いメロディラインでしょう。

僕がSpitzを知るコトになった「ロビンソン」、「空も飛べるはず」、「チェリー」は偉大な初期3部作であり、リリースされてから20年以上が経過した今もなお色褪せない名曲であります。

「君」と2人称を多用する草野さんの作詞。

それは独特な世界観とフシギなキーワードが散りばめられているだけでなく、恋を歌った曲なのか別の何かを伝えたい曲なのか、何度聴いても未だによく判らないのも魅力です。

また、どんなに強めに攻めようがノリノリで歌おうが、どこか必ず寂しさや切なさを漂わせる草野さんのヴォーカルは女子のココロをつかんで離さないのだろうなと思います。

どちらかといえば、「草野さん」というよりは「草野クン」と呼んだ方がしっくりくる。どんなに売れても、そんな親しみがいつまでもファンから持たれるというのもSpitzの魅力の1つでしょう。

ですが、バンドである以上、草野さんだけではなく、他のパートも重要な役割を担っています。

僕はエレキギター弾きでギターのコトしか語れないので、ここではギター担当の三輪テツヤさんの魅力を存分に語ってみたいと思います。

 

Spitzサウンドの代名詞、三輪テツヤさんのアルペジオ

見た目オーソドックスな草野さんに比べると、三輪さんは奇抜なファッションが目立ちます。曲だけ聴いていると、あのメロディを刻むギタリストが金髪のモヒカンとは誰も思わないでしょう。

Spitzの曲は、全体的に決して難しくはありません。初心者バンドでも充分コピーできます。

ところが、エレキギターに関しては三輪さんワールド炸裂の癖のあるプレーに手こずるコトになるでしょう。

曲名でいえば、「空も飛べるはず」はカンタンにコピーできます。コード進行もマイナーやシャープがほとんどない単純なものですし、ギターソロも1ヶ月もかからず弾けるようになります。

一方、先に紹介した「ロビンソン」や、アルバム「フェイクファー」に収録され、当時コマーシャルソングにも起用された「冷たい頬」は、最初から最後までミスなく弾くには相当苦労します。

その理由は、三輪さんの代名詞でもあるギター奏法「アルペジオ」の凝ったアレンジにあります。

アルペジオという奏法は、コード弾きを単音で弾いていくというものです。例えば、4本の指でそれぞれの弦を押さえて「ジャラーン」と鳴らすのは弾き語りでお馴染みのコード弾きです。

コード弾きに対して、4弦・3弦・2弦・1弦・2弦・3弦・4弦、ひとつずつ弾きながら単音で鳴らしていくのがアルペジオ奏法であります。

要は、「ロビンソン」や「冷たい頬」のイントロフレーズがソレであるとご理解いただければ、それでよろしいかという話です。

聴いている限りではカンタンに弾いているように感じる。ところが、いざ実践してみるとなると、弦を押さえっぱなしではなく、要所で素早くコードチェンジしながら弾かねばならない。

僕が所属するバンドの初期から中期にかけて「ロビンソン」は定番ナンバーだったのですが、弾けるようになるまでに延々3ヶ月以上かかったと思います。おかげで九九並みに身につきましたが。

 

決して耳障りにならないエレキギターのサウンドメイク

三輪さんの使用ギターといえば、シングルコイル搭載のギブソン・レスポールが代名詞でしょう。54年製のP-90搭載ゴールドトップモデルといえば、ギブソン好きには通用する話ですが。

エレキギターのピックアップ(弦振動をアンプに送るパーツ)は、ピックアップ1つのみで構成されるシングルコイルと、2つ重ねて構成されるハムバッカーに大別されます。

フェンダー系のモデルはシングルコイル、ギブソン系のモデルはハムバッカーが主たるものですが、三輪さんがライヴで好んで使用するレスポールはP-90が搭載されています。

シングルコイルの魅力はキレの良い小気味よさと高音域のシャープな音質なのですが、欠点として、リア側がキンキン耳障りなのとノイズが乗りやすい特性があります。

「P-90」とは、ギブソンが開発したハムバッカーサイズのシングルコイルです。

フェンダー系に比べ、シングルコイル独特の適度なキレを残しつつ、まろやかな音質に仕上がっています。まさに、Spitzサウンドにピッタリな特性なのであります。

なので、フェンダー・ストラトキャスターで「ロビンソン」あたりを弾くと、繊細でキレの良いサウンドではあるものの、高音域がキレ過ぎて耳障りになります。

なお、草野さんがエレキギターを鳴らす際は、たいていフェンダー系のギターを使っています。イントロのアルペジオが印象的な「さらさら」のPVでは、同社のマスタングを使っています。

往年の名曲を何度も聴き続けるコトも愉しみではありますが、現在もなお活動を続けているバンドの面々には、新たにステキな曲をリリースしてほしいものであります。

僕もアマチュアギタリストとして、その素晴らしさを少しだけでもコピーバンドの中で共有させていただければと思います。

三輪さんといえばアルペジオのイメージがあまりにも強いですが、それだけではありません。

「チェリー」に代表される小気味よいカッティングや、「楓」で草野さん以上に淡く切ない泣きのギターソロも大きな魅力であります。