社会福祉士が行う初回面談の重要性について

社会福祉士が行う初回面談の重要性について

初回面談の際に、障害者ケアマネは何を観て、何を聴くのか

一般的に用いられるアセスメントの意味は「評価・査定」ですが、福祉業界で用いられる場合は、もう少し具体的な解釈がなされております。

一般社団法人長寿社会開発センターが発行している「介護職員初任者研修テキスト」から引用しますと、「利用者に関する情報を収集・分析し、自立した日常生活を営むために解決すべき課題を把握すること」とあります。

このテキストはあくまで高齢者の介護についてまとめたものですが、身体障害者に対するケアの基本についての参考にもなるので、高齢者福祉の業界を離れた現在も、たまに辞書代わりに活用しています。

さて、アセスメントの目的は以上のとおりなのですが、第一段階となる情報収集のために、障害者総合支援法に規定されているとおり、居住地を訪問し、相談者本人の居住地で初回面談をしなければなりません。

そこで、以後の相談者とのラポール(相互信頼・感情共有が成立している心理緩和状態)構築のために、僕が初回面談の際に用いる技法や配慮について綴りたいと思います。

 

障害者ケアマネとして観るべきポイント

タイトルに「観る」と綴りましたが、「見る」ではなく「観る」でなければなりません。なぜなら、われわれ障害者ケアマネは初回訪問においては、アセスメントを行うための「観察者」でなければならないからです。

かといって、あまりにジロジロ無遠慮に部屋中を眺めるようなコトをすれば、「何このヒト?」「失礼な…」と、不快感を与えてしまいます。

相談者が住んでいるところには、本人の生活情報のほぼすべてが凝縮されています。住所と建物の外観も大切な情報ですが、ただ漫然と出向くだけでは充分なアセスメントができません。観るべきポイントを絞っておくべきです。

僕の場合、「お邪魔します」と玄関に入ってから着席を勧められるまでの間、まずは視野を最大限広げ、なるべく首を左右に大きく振らないよう配慮しながら居室内を目視します。

「相談者本人の居住地」といっても、居住のスタイルはさまざまです。ざっと一例を挙げれば、一軒家、借家、下宿、障害者も受け入れしている老人ホーム、障害者グループホーム、障害者支援施設があります。

また、一軒家や借家といっても、家族と同居しているのか独居世帯なのかによっても居住スタイルは全く違いますし、居住系サービスや入所施設にしても受け入れ人数や規模などによって雰囲気が全く違います。

居住支援を受けている場合は居室内の清潔保持や整理整頓がなされ、食事も栄養バランスや調理メニューが考慮されていますが、自宅生活の場合は生活面での課題を抱えていることがあるため、より一層の注視が必要です。

さすがに冷蔵庫の中を開けて中身をチェックというワケにはいきませんが、掃除・洗濯・整理整頓といった家事援助のサービス支給量の見立てはつきます。

わがマチ指定のゴミ袋に分別される前のゴミがひとまとめにされているのを見かければ、それらを客の目に晒しても気にしないヒトであるコトが判りますし、中身が潰れた発泡酒の空き缶だったら自分あるいは家族に飲酒者がいると推察できます。

部屋に上がってタバコの匂いがすれば喫煙者がいるコトが判りますし、匂いの強さからどの程度の喫煙者か推測できますし、灰皿の様子から几帳面なのか大雑把なのかの性格も推測できます。

部屋の整理整頓が行き届いているかどうかは障害支援区分の認定調査における必須のチェック項目の1つですが、僕は部屋のインテリアや家財道具にも注視します。置かれた所有物からも人柄が判るからです。

例えば、家財道具の量が通常の世帯よりも多く、かつ年季が入っている場合は、断舎利ができず所有物に対する執着が人一倍強いと推察できます。以前、このブログで紹介したガー子さん(もちろん仮名)がそうでした。

 

観るべきポイントを観たら、次に「聴く」

目視で知り得るポイントを押さえたら、次は「聴く」です。「聞く」ではなく、「傾聴する」コトが重要です。一方的な聴取のように、マニュアルどおり上から下へ順番に質問するようなやり方をすれば、相手に不信感や不快感を抱かせるからです。

日常生活の詳細を知りたいときに僕がよく用いる初歩的な小技として多用するのは、「自宅で目についたインテリアや家財道具について話題に取り上げ、とにかくホメる」というものであります。

例えば「白物家電を文字どおりホワイト系のコーディネートで揃えているのはオシャレですね」とか、「どれも年季が入った家具ばかりで、モノを大切にする方なんですね」といった風に。

すると相手もちょっと笑顔になり、「いや、特に考えてないですけど、たまたま…」とか、「そんなコトないですよ。おカネがなくて買えないだけで…」と、固い雰囲気が和らぎます。いわゆる、アイスブレイクの応用であります。

そして、相手の好意を得るための王道は「相手が最も好むモノを取り上げる」であります。海音寺潮五郎先生の小説「孫子」で学んだ人間心理でして、試してみると一発で効きます。

僕はオーディオやエレキギター関連であれば、それこそ手に取るようにモデルやメーカーが判りますので(若い頃の散財が役に立つ唯一の機会)、部屋に上がったら一瞬で気付き、必ずその話題を振ります。

趣味の話となれば当然、相手も乗ってくる。その後は実にスムーズに展開します。そのため、普段から幅広い興味関心をもって世の中のトレンドに敏感になるよう心がけています。

例えば、若い相談者を担当する場合であれば、ほぼ例外なくAKB系列のアイドルやジャニーズ系タレントが好みますので、これらの最低限の知識だけでもアタマに入れておくといった塩梅です。

いったん緊張が和らいだら、ある程度(もちろん言葉を選びながら)突っ込んだ質問をしても、けっこうスンナリ答えてくれます。「障害者ケアマネっていうのは、みんなこうなんだ」と先入観を抱いてくれるようです。

それと、「僕ら障害者ケアマネは、障害者自立支援法に基づいて相談支援の仕事をしなければならないんです」と利用契約書や重要事項説明書の説明をする際に念押ししておき、形式的な質問をする前置きに繰り返すのも有効です。

国がそう決めたコトだから、という大義名分になりますし、「そういうやり方をするのはゼロさんだけじゃなくて、障害者ケアマネだったら誰でも同じ」と納得してもらうためでもあります。

目視では確認できないポイントは、1週間の過ごし方や日課についての情報です。例えば、通院ひとつにしても確認すべき点が幾つもあります。

診断名(疾病・障害)/かかりつけ病院(総合病院であれば科目も)/主治医と担当医療ソーシャルワーカーの名前(今後の情報共有に必須)/受診頻度(定期・不定期の区別、定期なら月あたりの受診回数)/服薬状況(薬名や頻度)/通院方法(徒歩・バス・タクシー・JR・家族や友人の車・移動支援や通院動向などの福祉サービス利用)

 

収集した情報を一元化し、分析し、支援課題を設定する

初回訪問で得られた情報はどれも貴重なものですが、それだけでは不充分であります。かかりつけ病院の医療ソーシャルワーカーや障害福祉サービス提供事業所のスタッフなど関係機関からもヒアリングを行います。

こうして、観て、聴いて、集められるだけ集めてきた情報の数々を事務所に持ち帰り、アセスメントの集大成として個人データに一元化していく作業を行います。

前職で僕も使っていた、NPO法人 埼玉県障害者相談支援専門員協会が監修し、株式会社エス・エス・エスが開発した「ミラクルQ」などの専用ソフトがありますが、現在はエクセルとワードによる独自様式でフェイスシートとアセスメントシートを作成しています。

こうして完成したフェイスシートとアセスメントシートをもとに、ようやくサービス等利用計画案を作成するために必要な定例様式、「申請者の現状」における基本情報」と現在の生活(1週間のスケジュール表)の作成できるのです。

もっとも、独自シートを作る法的義務はありません。サービス等利用計画案に必要な定例様式さえ揃っていれば、行政からの指導監査も余裕でクリアします(監査に合格するだけの内容であれば)。

そのため、いきなり基本情報と現在の生活を作成するのでも全く問題ないのですが、障害種別や手帳の有無、障害者手帳の等級(例えば身体障害者手帳の1種1級とか、療育手帳の療育Aといった情報)など、国基準の定例様式では設定されていない重要項目が幾つかあります。

せっかく収集した貴重な情報ですので、僕の場合は調べた情報を1つ残らず記録すべく、もれなく独自様式に落とし込んでおくコトにしています。

 

障害者ケアマネとして目指す「究極のアセスメント」

以上、障害者ケアマネが行うアセスメントの一連の流れについてご紹介しました。

僕のやり方は上司や先輩から学んだ知識や自らの失敗体験をもとに独自の方法で実践していますが、障害者ケアマネの数だけ独自の方法や創意工夫があると思われます。

最後に、僕が目指す究極のアセスメントのあり方について綴ります。それは、「相談者がアセスメントをされていると感じないアセスメント」であります。

「なんかよく判んないけど、楽しくおしゃべりしてたら終わっちゃった。また来てね、ゼロさん」と、相談者から次の面談を心待ちにされるようなアセスメントができるようになるコトが当面の努力目標であります。