福祉業界における転職活動の心得

福祉業界における転職活動の心得

福祉業界への転職活動をする前に

僕は学校を卒業して社会人になってから20年以上、社会福祉士になってから18年以上にわたり福祉業界で過ごしてきました。その間、数回の転職を経験しましたが、初志貫徹で福祉の仕事を続けてきました。

というワケで、他業界には疎いですが「井の中の蛙大海を知らず、されど空の深さを知る」者として、福祉業界の事情については多少の知識があります。

そこで今回は、異業種から福祉業界へ転職を検討しているヒトや、転職経験がないヒト向けに体験談を交えながら、狙った求人で内定を取るためのノウハウを綴りたいと思います。

 

履歴書を出す前の心得~求人情報を鵜呑みにしない

転職活動をする際、あらかじめ転職先が確定している方は別ですが、最初から転職先をハローワークやネットでの求人広告をもとに情報収集する方に注意していただきたいコトがあります。

それは、一般公開されている求人情報に求人側のホンネのすべては掲載されないというコトです。

推察するに、法律に抵触するホンネだから載せられないという理由と、あらかじめ書類選考を通過した有能な人材に対して直接ホンネをぶつけて反応をみたいという理由があると思われます。

法律に抵触するホンネというのは求める人材の年齢層や性別が決まっている場合です。例えば、同性介護の原則から、女性スタッフの人出が欲しいとしましょう。

雇用主は、ホンネでは絶対に女性を雇う気でいる。ところが男女雇用機会均等法の規定に違反するコトになる。だから、ホンネは書けないのです。そのため、あらかじめ法律に抵触しない表現でジャブを繰り出す。

いわゆる、「私たちの事業所は女性が多い職場です」とか「20代~50代が多いです」といったメッセージには、「女性しか雇う気ない」「50代以上は雇わない」といった暗喩(メタファー)が隠されているのです。

もうひとつの理由ですが、書類選考を通過する前に求職者にホンネのすべてを曝け出してしまうと、応募が殺到して書類選考が大変だとか、逆に応募が来なくて困るといった事情があるコトが考えられます。

後者の防止対策のために、特に求職者が注目するであろう給与面で具体的な提示をしていない求人があります。例えば年収で提示されている場合です。これはあくまで最高年収として想定している記載で、この数値を下回ったとしても虚偽ではないという理屈です。

雇いたい人材について、妥当な理由があれば納得できます。利用者のニーズや業務内容によって、年齢や性別が限定される場合もあるでしょう。ですが、求職者を騙し打ちにするような求人であれば、こちらから見切りをつけて問題ありません。

こっちは履歴書や職務経歴書に自分のすべてを曝け出して面接に臨んでいるのに、迎える側が隠し玉を秘め、いきなり求人広告とは違う話を繰り出すのはフェアなやり方ではありません。仮に内定をもらっても雇用契約は熟慮すべきです。

辞退したコトで異議申し立てがあれば、その旨も含めて労働基準監督署に申告すれば良いのです。「求人情報と明らかな乖離(かけ離れている)があったので、辞退させていただきました」と。

重要なポイントなので繰り返しますが、求人広告に出される情報は求人側のホンネではありません。それが明確に提示されるのは、書類選考を通過して面接試験に入った段階であります。

 

面談の心得~求人側が何を求めているかを見誤ってはならない

僕は過去3回の転職をしたので、4つの職場を経験したコトになります。最後の転職はお互いに気心が知れた同士での採用だったのでスムーズだったのですが、それ以外の面接では、知らない者同士の腹の探り合いでした。

しかしながら、求人側がどんな人材を求めているのかについては、書類選考を通過した後の面接の場面で、ようやくすべてが曝け出されるカタチで明らかになります。

僕が求められたのは、最初の職場ではスタッフとの協調性、次は社会福祉士としての職務経験、その次は介護技術と積極性、そして現在の職場では計画相談支援を単独で完遂できるための知識と技術でした。

待遇面についてはお見合いの釣書のようなもので、「ウチはホントに安いから。ホントにそれでいい?」と率直に明示してくれた現在の職場もあれば、採用後に提示以上の待遇で迎えてくれた職場やその逆の職場もありました。

中には「賞与は貢献度や業績、将来の期待度をふまえて決める」と雇用契約書に謳っておきながら、それらの判断基準や算出根拠は一切言及されておらず、実質的にボーナスゼロという職場もありました。

今にして思えば、雇用主に対し「貢献度や業績、将来の期待度の判断基準は何ですか? 具体的に教えてください」と覚書を求めるくらいの踏み込みが必要でした。

また、求人情報では一言も謳っていないような労働条件を面接の場でいきなり持ち出されたところもありました。

こういったケースでは「いえ、私が御社で尽力したい役割は…」とキッパリ拒否するか、それとも呑むか。面接試験を受けている場で即断しなければなりません。

面談で想定外の質問をされた時や、「うちではこういった人材を求めている」と具体的な提示があった際、「果たして自分がその期待に応えられる人材なのか?」と自己評価する必要があります。

なぜなら、採用されたのは良いが、いざ就職してみたら想像と現実が全然違う、これでは長続きしそうにないと思ってしまったら誰にとっても不幸な結末になるからです。

自分が求人側の期待に応えられるだけのスキルやキャリアを備えているかという点であります。あるいは、求人側のスタッフたちと馴染める適性があるかどうかも重要なポイントです。

 

福祉の職務経歴者の心得~即戦力にならなければ内定は厳しい

異業種から福祉業界で仕事をしたいと一念発起して介護職員初任者研修を修了し、現在もなお介護福祉士の取得に向けて猛勉強に励んでいる知人がいます。

その知人は、かつて僕が所属した老人ホームで業務命令が下された際に受講していたクラスメイトですが、メディアで何度も取り上げられているように介護業界は慢性的な人手不足。このような期待の新人は諸手を挙げて歓迎されます。

一方で、僕のような中途ハンパに年齢を重ねた前歴がある社会福祉士の場合、求職活動をする際は新人に比べてハードルが高く設定される傾向にあります。

つまりは即戦力の有無であります。もっと具体的にいえば求人側が運営する事業の職務経験があるかどうかで採用が決まるという話です。

さらにもっと具体的に申し上げますと、最初の求職活動の際、わがマチで募集されていた医療ソーシャルワーカーの求人に全部落選しました。しかも、いずれも書類選考で落とされる始末。

医療ソーシャルワーカーとしての前歴がない求職者を採用する気は一切ないと宣告されたようなものです。10年以上の福祉職としての職務経歴は価値ゼロでした。

当時はとてもガッカリしたものですが、結果的には落とされて良かったと思っています。なぜなら、相当数のスタッフが配置され、かつ新人教育を徹底して行う病院でない限り、とても前歴なしで務まる仕事ではないからです。

逆に、医療ソーシャルワーカーが障害者ケアマネの仕事をするのは相当厳しいでしょう。高齢者福祉や介護保険には精通していても、障害福祉サービスについての心得がほとんどないからです。

一方、精神科ソーシャルワーカーであれば、主たる業務が障害福祉分野ですので、精神科ソーシャルワーカーが障害者ケアマネに転職すれば、即戦力として快調なリスタートができます。

よほどの理由がない限り、「餅は餅屋」の諺どおり、福祉職の経験があるなら過去の前歴が活かせる分野での転職先を探すべきです。

 

最後の心得~転職活動は戦略的に

以上、福祉業界での転職心得について綴りました。今回のポイントは次のとおりです。

・誰もが閲覧できる求人情報は参考程度であり、最低限の表面的なものでしかない

・求人側のホンネは、書類選考を通過して面接した際に明らかにされるものである

・雇う側と雇われる側のニーズが合致しているか? 面接時に即断しなければならない

・経験者の転職活動の成否は、転職先と同じ実務経験の有無に大きく左右される

新卒あるいは異業種からの経験年数ゼロからのリスタートという条件で転職活動を展開するのと、福祉業界で職務経験を有する条件で転職活動を展開するのとでは、傾向も対策もまったく別なものになります。

最後に補足として、これはどの業界でも共通でしょうが、転職活動を行う際は、求人側の求めの有無にかかわらず、履歴書だけでなく職務経歴書も提出すべきです。

職務経歴書を作成する際、どうも筆が進まないというコトであれば、それはアピールポイントがない、すなわち求人側が求める人材ではないと自己分析できる客観的材料となります。

それぞれのシチュエーションに応じて、転職活動の戦略を立てる際の参考にしていただければ幸いです。