異端の正統派~ギブソン・フライングⅤ

異端の正統派~ギブソン・フライングⅤ

変形ギターの元祖にして不変のスタイル~ギブソン・フライングⅤ

エレキギターのスタンダード(正統派)の代表格といえば、当ブログの「エレキギター・初めての1本を選ぶなら」「弾き易さでエレキギターを選ぶなら」でご紹介した2大メーカー、フェンダーのストラトキャスターとギブソンのレスポールです。

また、「テレキャスターvsストラトキャスター」でご紹介したフェンダーのテレキャスター、ジャズマスター、ジャガー、マスタングもまたスタンダードであります。

これらはヘッドデザインやボディデザイン、ピックアップの形状がどれも異なるのですが、エレキギターを弾かないヒトにはどれも同じに見えるコトでしょう。スタンダードとして一括りに扱って差し支えないと思います。

ギブソンのレスポールにしても、スタンダード、カスタム、スタジオ、スペシャル、ジュニアと様々なバリエーションがあります。これらも仕様や価格が異なるのですが、どれも同じに見えるコトでしょう。僕もそうでした。

これらのエレキギターは王道ともいえるデザインですが、たとえエレキギターのシロウトであっても、いちど目にしたら間違いなく記憶に残る変形ギターがあります。Ⅴ型のシンメトリー(左右対称)で造形されたボディと矢印を思わせるヘッドデザイン……。

ギブソンが誇る変形ギターのスタンダード、フライングⅤです。

僕も10年近く前ですが、中古のフライングⅤを所有していたコトがあります。「ゴシック」と呼ばれるシリーズで、ギブソンのロゴとネックのインレイ(ポジションマーク)以外は全てサテンブラック(ツヤ消し漆黒)で構成されたモデルでした。

その当時は弾きづらくてすぐに手放してしまいましたが(ネックが捻じれた不良品)、転職して現在のバンド加入後、B‘zの松本さんが使っているのを見かけてすっかり惚れ込んでしまい、例によってホスコ製のギターキットを2本も組んでしまいました。

以来、練習やライヴで自作のフライングⅤモデルを存分に使っています。

 

フライングⅤの特徴

フライングⅤの歴史は長く、1958年にデビューしてから50年代に98本、60年代に113本が出荷されました。その後、1975年にレギュラーモデルとして定着します。形状としては、58年モデルから67年モデルになってマイナーチェンジがなされ、その後は67年モデルが一般的です。

ギブソンのフライングⅤを愛用するロックギタリストとして有名なのは、ジミ・ヘンドリックス、レニー・クラヴィッツ、ザック・ワイルド、マイケル・シェンカーです。

日本では、前述の松本さんの他にシンガーソングライターのmiwaさんや筋肉少女帯の橘高文彦さんが有名です。また、Spitzの草野マサムネさんが「愛のしるし」のプロモーションヴィデオでフライングⅤを使用しています。

変形ギターの代表格でありながら、意外と使用ミュージシャンが多いフライングⅤ。ただのキワモノでは括れない、長く愛されるだけの理由があります。

ステージ映えする個性的なルックス

エレキギターを弾かないヒトからみれば、どれも似たり寄ったりで同じにしか見えないものですが、フライングⅤのルックスは目立ちます。観客の印象に強く残るコトでしょう。「ああ、あのヘンなカタチしたヤツ」というふうに。

個性的なデザインですので好き嫌いはハッキリ分かれると思いますが、ライヴでステージに持ち込めば派手なデザインで目立つコト請け合いです。

尖がったデザインだが、実は意外に弾き易い

そんな先鋭的なフライングⅤですが、実は非常に弾き易いように設計されています。その独特なルックスには違和感を覚えますが、ストラップを装着し、立って弾いてみると、その弾き易さに驚かされます。

僕は手が小さく指が短いというコトは当ブログで何度も綴ってきましたが、フライングⅤはその形状から高音域が非常に弾き易いのです。これは速弾き派にとって大きなメリットになります。

1958年モデルと1967年モデルでは多少形状が異なるものの(1958年モデルのボディの方が深く抉れたデザイン)、いずれもレスポールのようにネック接合部のボディ形状が指板を押さえる上で障害にならないデザインであるためです。

イメージに似合わないマイルドな音質

見た目は派手ですが、その音質はマイルドなもので、たとえ歪ませても甘くまろやかでさえあります。ボディ・ネックとも材質がマホガニー(1958年モデルはコリーナ材)で構成されており、その特質によるものと思われます。

そのため、フライングⅤが活躍するのはハードロックだけでなく、ブルースでも好んで使われています。有名なのはブルースギタリストの3大キングのひとり、アルバート・キングです。

この特性はハードロックやメタルのジャンルでは非常に重宝します。ディストーション系のエフェクターのゲイン(歪み)を上げても心地好い音が出せるからです。

見た目からは想像がつかないほど軽く、取り扱いがラク

ボディやネックがマホガニーというコトは、非常に軽く仕上がるというコトでもあります。一般的に木材は柔らかいものほど軽く、堅くなるほど重くなる傾向があります。

その点、フライングⅤは軽く柔らかいマホガニーで構成されているため、見た目からは想像もつかないほど軽量であり、ステージで腰や肩を痛めずに済みます。また、運搬もラクにできます。

逆に、レスポールはボディトップにメイプルを貼り合わせた構造上、重くなりがちです。もっとも最近のレスポールはボディ内部に穴を開け、軽量化を図ったモデルが出回るようになってきたようですが。

ギタースタンドを使わなくても安定する

ボディ下部が左右対称で突き出したデザインから、地面に置いた際に支点が2ヶ所となります。ギタースタンドを使わずギターアンプか何かに立てかけて直置きしても安定するのです。他のギターはストラップピン1ヶ所だけですので、ちょっとした拍子に倒れてしまいます。フライングⅤだけのメリットです。

座って弾くのは難しい

フライングⅤはステージ使用に特化したエレキギターとして割り切る必要があります。座って弾く場合はフツウのエレキギターのように太腿に載せて弾くコトができません。太腿の表面をズルズル滑り落ちていきます。

そのため、琵琶法師のようにボディ下部を内股に挟むように固定しなければ弾けません。これがまた実に弾きづらい。ボディの重心がネック側にズレますので(右利きなら左側へ)、その分、ネックが遠くなるからです。

フライングⅤは立って弾く以外に使い道がないと思った方が間違いありません。弾き語りをする場合は、ストラトキャスターやレスポールなどのスタンダードを使いましょう

ボディ先端をよくぶつける

左右対称にニョッキリと突き出したボディ下部は、特に狭い部屋で扱う場合、よほど注意していないと壁やドアにガツガツぶつけて傷がつきます。また、狭いステージで演奏する場合、メンバーの楽器に干渉するコトになります。

ギターケースがデカくてジャマ

ギブソン製のフライングⅤはハードケースが標準仕様です。ソフトケースならまだしも、ハードケースは非常に大柄になります。まるで冷蔵庫をタテに輪切りにしたようなヴォリューム感です。持ち運ぶのもクルマで運搬するのも場所を取り、ジャマになります。

*  *  *

以上、フライングⅤの魅力やデメリットについてご紹介しました。

そのルックスから派手で尖ったイメージが先行しがちなフライングⅤですが、実は見た目以上に取り扱いがしやすくて弾きやすく、しかも軽量なので女性にもオススメです。

学生さんなどのように経済的な事情がある方は万能タイプのストラトキャスターやレスポールをオススメしますが、もう1本買えるだけの余裕があり、バンドを組んでステージに立つのであれば、次にフライングⅤの購入を検討してみてはいかがでしょうか。