ゴージャスかつエレガント、それでいてハードボイルド~ギブソン・ES-335

ゴージャスかつエレガント、それでいてハードボイルド~ギブソン・ES-335

世界初のセミアコ~ギブソン・ES-335

通称「サンサンゴ」と呼ばれるギブソンES-335。

本家ギブソンだと初心者が1本目に手を出すにはあまりに高額で尻込みしますが(後述)、ギブソン系列の廉価版ブランド、エピフォン製であれば4~5万円程度から購入できる1本です。

僕と同世代の方は「ああ、あのギターか!」とすぐにピンとくると思われますが、1985年に世界的ヒットを記録したSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のワンシーン。

主演のマイケル・J・フォックスが「ジョニー・B・グッド」を弾きまくっているアレです。

ES-335は1958年に発売された世界初のセミアコことセミ・アコースティックギターであります。以来、その外観をほとんど変えずに製造され続けて現在に至ります。

ES-335を使う有名ギタリストとしては、ラリー・カールトンやB.B.キングがいます。

バンド時代にエリック・クラプトンが使っていましたし、日本人では福山雅治さんがアルバム「HUMAN」収録曲の「「246」や「cherry」に使っています。

例によって本家ギブソンではありませんが、僕が自作した335モデルのキットをもとに、このモデルの魅力や使い勝手について詳しく綴ってみたいと思います。

 

ジャズやブルースだけでなく、ハードロックにも使える懐の広さ

ES-335は「セミ・アコースティック」と呼ばれる独自構造をしています。

フル・アコースティックギターのようにボディが完全に空洞ではなく、中心部に木の板が埋め込まれており、両端のみが空洞になっています。

ボディ構造やサイズの違いは除き、ハムバッカー2基にヴォリュームとトーンが2つずつ装備されている点や、ストップテールピースによるブリッジ部分や3つずつ並列に装備されたヘッドペグ。

ボディ以外はレスポールと共通です。

セミアコ構造のメリットは、ソリッドギター(空洞がない1枚板)と同等のボディ強度を確保し、フル・アコースティックギターのように弦振動をボディ両端の空洞部で共鳴させるコトで甘い音が出せる点です。

ES-335の音質はフェンダー・ストラトキャスターやギブソン・レスポールのようなソリッドタイプのギターでは絶対に出せないまろやかなニュアンス。

その音質から、主にジャズやブルースギタリストに好んで使用されています。

何時間でも聞いていられる甘くまろやかなメロディを奏でるにはうってつけのES-335ですが、実はハードロックとの親和性もあります。

真空管アンプや歪み系エフェクターで適度に歪ませれば、クリーンサウンドからは想像もつかない極上のクランチサウンドが出せるからです。

メタル系の歪みは向きません。ボディが共鳴する特性でハウリングが起こるので。

歪みを少なめに調整してピッキングを工夫するコトによって、ハードロックの曲でも充分に使用できます。

むしろ、クリーントーンだけで使うのは宝の持ち腐れ、実にもったいない話です。

あれほど極上のクランチサウンドが出せるのですから、1回のステージでハードロックからバラードまで幅広く演奏するのであればES-335の方がサウンドメイクがやり易く、とても面白いと思います。

 

見た目はデカイが、抱き心地が良くて弾きやすい

思わず「デカっ!」と言いたくなるボディ、それがES-335の実物を目の当たりにしたヒトが最初に抱く印象でしょう。写真や映像で観ても大柄なのは判りますが、実物はそれ以上の迫力があります。

レスポールの軽く1.5倍はありそうです。

ところが、表面積のデカさとは裏腹に、ボディの厚みがレスポールとほぼ同じサイズに設計されているため、脇に抱えると見た目ほどの大きさを感じさせないのです。

そのため、僕のような短躯のギタリストでも違和感なく扱えます。

これがフル・アコースティック構造のギターですと表面積はデカい上に厚みもあるので、ストラトキャスターやレスポールと持ち換えると非常に違和感を覚えるのです。

また、正面から見ると平坦に見えるES-335のボディですが、実際には「アーチトップ」と呼ばれる緩やかなカーブ加工がボディ表裏ともにつけられています。ちなみに、レスポールのアーチトップ加工はボディトップのみです。

「テレキャスターvsストラトキャスター」でご紹介したストラトキャスターに施されるコンター加工とは一味違うフィット感が得られ、演奏性の向上につながります。

テレキャスターのボディトップのように平坦ですと、前腕部がエッジに当たって痛いのです。

 

軽くて重量バランスが取れたライヴ仕様のデザイン

ES-335の魅力は他にもあります。大柄なボディには似つかない軽量設計であるコト、ストラップを肩にかけてもヘッド落ちしない重量バランスに優れた構造であるコトです。

つまり、ステージ向けのモデルであるというコトです。

軽量なのはボディが中空構造になっているコトによる恩恵ですが、ES-335が優れているのは、ネックを手放してもヘッドがずり落ちないコトです。

ボディが軽量であれば、その分だけ重心がヘッド側に偏るコトになります。そのため、ネックを掴んでいないとヘッドが下へ向かってズルズル垂れ下がってしまうのです。

この現象を「ヘッド落ち」と呼びますが、「異端の正統派~ギブソン・フライングⅤ」でご紹介したフライングⅤにもヘッド落ち現象があります。他にもギブソン・SGやオベーションの全モデルがヘッド落ちします。

ヘッド落ちを解決するには、ストラップピンの位置をズラして重量バランスを図るか(僕の自作ギターはコレで調整)、ボディ下部に重りをつけるか、摩擦係数の高いストラップを使うしかありません。

その点、ES-335は以上のような面倒な加工を一切せずに理想的な重量バランスを保ってくれるのです。

ES-335が、いかに基本設計に優れた完成度の高いモデルであるかを証明する特徴のひとつであります。

 

一見クラシックな外観だが、へヴィメタル以外なら何でも使える

本家ギブソン製ES-335は恐ろしく値が張りますので、相当な覚悟と思い切りが必要でしょう。ここでは335モデルをオススメしますという話で留めておきたいと思います。

中古でも20万円以上、新品なら30~50万円以上、ヴィンテージになれば中古の10倍以上します。

以上、335モデルの特徴を綴ってきましたが、結論はタイトルどおりです。唯一の例外であるへヴィメタル以外であれば、どんなジャンルでも使えます。

弾き語りで使うのもアリです。335モデルの箱鳴りは、ヴォーカルと非常に親和性が高いので。

クリーントーンまたはクランチサウンドといった歪みを抑えた曲を演奏する際は、ぜひとも335モデルをオススメします。

ストラトやレスポールなどのソリッドボディのギターでは今ひとつな物足りなさが一瞬で吹き飛びます。

フルアコとソリッドのハイブリッドモデルの最高傑作、それが335モデルです。