「障害者の仕事」就労支援とその実態について

「障害者の仕事」就労支援とその実態について

実はとても難しい障害者の就労支援

障害福祉には唯一、「給料がもらえる福祉サービス」というものがあります。就労系障害福祉サービス(以下「就労系」とします)は他の福祉分野には存在しないサービスで、具体的には就労継続支援(A型・B型)、就労移行支援があります。

就労系のサービスは以上の他、平成30年度の制度改正で就労定着支援が新設されました。また、工賃が発生する障害福祉サービスには生活介護や自立訓練(生活訓練)も含まれます。

以上、いずれも一般就労が困難な障害者向けのサービスであります。実は障害者の手帳を持っているという一般就労従事者と関わる機会は少ないため(特に計画相談支援では)、実態につきましては推測の域を出ません。

障害者手帳を持って一般就労をしている皆さんは税制面での優遇や障害年金の受給など、障害福祉制度のメリットを活用しながら日常生活を送っておられますし、僕ら障害者ケアマネの出番はほとんどありません。

一方、就労系のサービスを利用している皆さんは計画相談支援の対象となりますので、業務上での関わりは非常に深くなります。特に、雇用契約を締結せずに福祉的支援を受けながら就労できる就労継続支援B型を利用するヒトが圧倒的多数を占めます。

僕がわがマチの計画相談支援に携わっている中の印象では、就労継続支援B型事業の利用者がブッチギリで多く、就労移行支援と就労継続支援A型は似たり寄ったりといったところでしょうか。

厚生労働省のホームページ「障害者の就労支援対策の状況」を閲覧しますと、全国的にも同様の傾向であります。平成30年3月現在、最も多いのが就労継続支援B型で約24万人、次に就労継続支援A型で約6.9万人、最後に就労移行支援で約3.3万人です。

わがマチでは就労継続支援A型の絶対数が少なく、就労移行支援には2年間の利用期限(最大1年間の延長が可能)があるコトから全国平均値との差異がありますが、就労継続支援B型が圧倒的多数である点は同じです。

本来であれば福祉的就労から一般就労へ、あるいは就労継続支援B型からA型へとステップアップできるための支援を行っていくべきですが、意欲にも就業能力にも就業先にも恵まれているごく一部の利用者のみです。

僕の8年以上のキャリアの中で、一般相談支援や計画相談支援を含めて300人以上もの相談に携わってきましたが、その中で福祉的就労から一般就労へステップアップでいたのは、たったの1人だけでした。

逆に、福祉的就労が続けられなくなったヒト、就労移行支援で一般就労に挑戦したが続けられず辞めてしまったヒト、福祉的就労が続けられなくなったヒトの相談支援は数多く携わってきました。

このように、国が想定していた「障害者が福祉的就労を経て一般就労へ」という就労支援の現実は非常に厳しいというコトが判ります。特に、就労継続支援B型から一般就労へのハードルは国が想定している以上に高いです。

そのため、僕ら障害者ケアマネが手がける就労支援の大多数を占めるのは「福祉的就労をいかに継続できるか」といった相談支援に偏りがちになります。

一般就労をしながらホームヘルプサービスなど在宅系の障害福祉サービスを利用する相談者もおります。僕が担当したヒトの職種をご紹介しますと、スーパーマーケットの惣菜調理や仕出し、自動車ディーラーの中古車クリーニング、ショッピングモールの清掃業があります。

障害者の就労支援を阻む最大の障壁とは

問題の根本にあるのは景気や地域格差にあらず

首都圏から離れるほど不景気であり、地方になるほど職業選択の自由が狭まれているといった地域間における格差の課題もゼロではありません。しかしながら、最も深刻なのは「求人側が障害者の就労支援に消極的」という一点に尽きます。

もちろん例外もあると信じたいですが、最初から民間企業にヤル気がないとしか思えない上、肝心の行政機関でさえ後述のような呆れた不祥事を起こす始末。障害者の一般就労のチャンスそのものが与えられない現状なのです。

また、収益を上げなければいけない民間企業にとっては当然そうなるのかと思われるのですが、障害種別によって求人を制限するケースがあります。この障害に該当するのであれば雇わないというものです。

かつて前職でお世話になっていた障害者の一般就労を推進する専門職から、「こんなヒトいませんか?」と打診を受ける中で少なくなかったのは、「軽度の身体障害者のみで」という相談でした。

要は、合理的配慮を必要とする知的障害者・精神障害者・発達障害者を雇う気は一切ないと断言しているのも同然で、不当な差別的扱いを禁ずる障害者基本法に抵触するものであります。

わがマチでいえば、それほど優秀な人材であればとっくにどこかで就業しているワケであります。大都市で相応の人材が確保できないがゆえに辺境の地方都市に人材を求めたところで「そんな都合の良い人材なんかいないよ」と返答するしかありません。

最近のニュースで、国民のお手本にならねばならない官公省庁や地方公共団体で、障害者手帳を取得していないヒトを障害者としてカウントし、雇用率を水増ししていた不祥事が取り沙汰されました。

法律を作り、遵守させ、国民のお手本にならねばならない側でさえウソをついてまで障害者雇用促進法に違反するワケですから、民間企業にそれを期待するコトがバカバカしくなります。

そもそも障害者雇用推進法が成立されたのは、景気や地域間格差の以前の問題として、障害者の雇用義務を課さねば行政や民間がいつまでも障害者の雇用に消極的であるという課題があってこそのものだと分析しています。

障害者と健常者のワクを超えて平等なチャンスを

ただ障害者を雇えばイイという話ではないコトくらい、僕も充分に理解しています。障害者の手帳を取得している、それだけの理由ですべての可能性を否定してほしくないと訴えたいだけです。

有能な人材であれば採用されて然るべき。そこには障害者と健常者のワクなど皆無のハズです。

オープンに業務内容を提示して平等に求人募集のチャンスを与える。特定の障害種別で求人枠を設けるのであれば、その合理的な理由について明確にする。その上で合否結果を出すのであれば、誰も文句はいいません。

僕が腹立たしく思うのは、明らかにその業務を遂行できると思われる可能性がある障害者の門戸ですら閉ざそうとする無知かつ狭量なその姿勢であります。

例えば上記で紹介した「軽度の身体障害者が可能な仕事」であれば、難解な頭脳労働でない限り、軽度の知的障害者がこなせる可能性だってある。しかしながら、療育手帳を持っているヒトは絶対ダメだと態度を頑なにする。

健常者とは異なるアプローチや合理的配慮は必要ですし、それが判らない雇用側と障害者の仲介役となるジョブコーチや障害者職業センターといった公的支援もあります。民間企業がすべてを背負い込む必要はありません。

この課題を解決しない限り、今後どんなに景気が上向いて求人率が上昇しようとも、障害者の雇用促進には直結しないコトは間違いありません。

 

ガンガン稼いで、ガンガン税金を納めてほしい

「一生懸命働いて、給料をいっぱいもらいたい」と思うのは、障害者も健常者も同じです。障害者だからといって、公的サービスに頼りっぱなしで一般就労をはるかに下回る作業工賃に甘んじている必要性はありません。

その障害特性によって一般就労はおろか、福祉的就労ですら困難な障害者は存在します。障害者の就労支援が一向に進まない理由が行政や民間企業だけにあるとは思いません。

だからこそ、せめて就業のチャンスだけは平等に与えてほしいと切に願っています。そして、1人でも多くのヒトが見事に一般就労で採用され、ガンガン稼いでガンガン税金を納めてくれるモデルケースが生まれてほしいです。

今後、僕が担当する相談者の中でモデルケースが生まれたら、その時は本人や家族からの了承を得た上で当ブログにてご紹介したいと思います。