コピーバンドのギタリスト向け~脱初心者講座
- 2018.12.25
- エレキギター

初心者のコピーバンドがライヴで客を盛り上げるためには
ライヴで演奏するなら、まずはアップテンポな曲を選ぶ
初心者にはスローテンポなバラードの方が弾き易いと思われがちですが、実は逆です。リズム隊がよほどしっかりしていないと、テンポが遅い方が一定のリズムをキープするのが難しいのです。
そのため、アップテンポな曲の方がコピーしやすいです。ライヴでも盛り上がります。オススメは「モンパチ」ことMONGOL800の「小さな恋の歌」やブルーハーツ全般です。ギターソロがなく、ややこしいコードもありません。1ヶ月もあれば充分弾けます。
ギターソロを弾かないなら、ギターソロがない曲を選ぶ
ギターソロに自信がない初心者がコピー曲を選ぶ際に最も気をつけるべきポイントがあります。それは、「ギターソロがある曲を選んだのに、ギターソロを弾かない」というパターンは極力避けた方がイイですよという話です。
ものすごく極端な表現をしますと、ギターソロがある曲でギターソロを弾かないというコトは、カラオケボックスで一切歌わずに曲だけ流すコトと全く同じくらい白けてしまうのです。特に、その曲に思い入れがある客にとっては。
ギタリストたる者、ギターソロがある曲を選ぶのなら、たとえ本番でミスしようがソロに挑戦すべきです。その方が絶対に盛り上がりますし、お客さんも喜んでくれます。
難易度が低いギターソロの曲を選ぶのも充分アリ
キーが高い男性ヴォーカルがいる場合や女性ヴォーカルがいるバンドなら、Spitzのコピーもオススメです。アルペジオがない曲なら、ギターソロもすぐに弾けます。オススメは「空も飛べるはず」でしょうか。
メジャーな曲でキャッチーかつ弾き易いギターソロをプレイしたいなら布袋寅泰さんがイチオシです。初心者にはBOØWYやCOMPLEXなどバンド時代やソロ初期の頃は難易度が高いですが、ソロ中期以降の曲は弾き易いと思います。
布袋さんのコピーをするのであれば、初心者向けで知名度が高く、ライヴで盛り上がると思われるのは「スリル」や「POISON」でしょうか。
初心者と中級者以上の違いは「リラックス感」
CDだけを聴いていると想像もつかないところですが、超絶テクニックを体現するロックギタリストの誰もが、実際にプレイしているところを観ると拍子抜けするほど力みとは無縁な動きをしています。
もちろんステージアクションはハデだったり控え目だったり違いはありますが、プレイだけを切り取ってみると、仮に背後から観たら両手首から先以外はストップモーションかと思うほどムダな動きがありません。
僕が好きな速弾きギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンのプレイを映像で観たのは大学時代の深夜番組でしたが、あの超絶速弾きを目の当たりにして驚いたのが、まるで指板を指先で撫でるかのような動きでした。
弦を弾く右手は手首が1cm上下するかどうか、指板を押さえる左手はネックを上下する以外はほとんど動いていません。手首から先が最低限の仕事をするのみ。
力の限り手首を酷使し、弦を削るかのような右手のピッキング、映画「マトリックス」の格闘シーンのような残像のような左手のフィンガリングを想像していた僕にとっては、まさに拍子抜けした思いでした。
そして、イングヴェイだけでなく、ポール・ギルバートだろうがヌーノ・ベッテンコートだろうがジョー・サトリアーニだろうが、プレイやスタイルは違えどリラックス感満載のプレイは見事なくらい共通していたのでした。
以上のギタリストは超絶技巧を体現する凄腕の一部ですが、そこまで至らずともリラックス感は中級以上のギタリストに共通した特徴です。巧くなるほどムダな力みがなくなり、まるで動いていないような錯覚さえ抱かせるのです。
右利きギタリストであれば、左手はまるで指板を撫でるかのように弦を押さえ、右手は手首から下だけが最低限の動きで弦を弾く。シャカリキに力んでいるうちは脱初心者の道は遠いです。まずはリラックスを。
脱初心者のために、ライヴでこだわってほしいポイント
ライヴで最も重要なのは、「いかにキレイな音を出すか」というコト
ギタリストだけに限ったコトではないのかも知れませんが、中級以上のバンドは雑音というものを一切出さないものです。ノイズ(雑音全般)やハウリング(キーンと鳴る耳障りな雑音)とは無縁なのです。
これは使用している機材の問題ではありません。ギターやアンプ、エフェクターの値段の問題ではなく、仮にプロが初心者の機材を借りて同じステージに立ったとしても、ノイズやハウリングを一切出さないコトでしょう。
僕が初心者だった十代の頃と同じだったのでデカい口は叩けませんが、初心者は歪み系をはじめてとして、過剰なエフェクト効果を狙って必要以上にレベルを上げがちです。
しかしながら、中級者以上のギタリストは、自宅練習やスタジオ練習で鳴らしているエフェクト効果を少しだけ抑えてセッティングします。なぜなら、大音量で鳴らすステージと普段の練習ではエフェクト効果の効き具合がまるで違うからです。
ギターアンプのヴォリュームを上げるほどエフェクト効果は正比例するのですが、実は正比例どころではなく、ステージでは、ギタリストが思っている以上にエフェクトが利きすぎるのです。そのため、中級以上のギタリストは、エフェクト効果を練習時よりも抑え気味にセッティングします。
いったんPAに音を作ってもらったら、あとはエフェクトで足りないと思うところをピッキングのニュアンスを変えたり、ギター本体のヴォリュームやトーンで調整したりするコトによってキレイな音を出しているのです。
ノイズを一切出さないのがスマートなバンド
「ねえ、ゼロさん。あのバンドさ、ジージーガーガーうるさいよね?」
以前、僕らのバンドが出演したイベントで初心者バンドの演奏を聴いていて、バンドメンバーのギタリストがボソッと呟いた一言が脳裡に焼き付いています。ギタリスト同士、考えるコトは同じと思った次第です。
もうひとりのギタリストの指摘はエフェクターのセッティングの拙さだけに言及したものでなく(必要以上にゲインやヴォリュームを上げたがる)、ノイズをいかに出さないかの配慮がない未熟さについても言いたいコトがあったのでしょう。
エレキギターはその性質上、電源を入れれば必ずといってイイほどノイズが出ます。クリーントーンであれば「サー」と静かな気にならない程度のノイズですが、歪み系エフェクターを使用すると上記のようなノイズが出ます。
こうしたノイズを出さない方法は幾つかありまして、演奏する以外はギター本体のヴォリュームを0にしておく、歪み系エフェクターをオフにしておく、右手か左手でギター弦に触れて押さえておく、これらでノイズは消せます。
ライヴでは、様々な要因でノイズやハウリングが起こります。ギターアンプ同士の共鳴やヴォーカルのマイクが原因でのハウリング、不適切なセッティングによっては思わず顔をしかめるほど耳障りなノイズが発生してしまいます。
初心者が特にライヴでこだわってほしいのは、「いかにキレイな音を出すか」についてです。ノイズやハウリングは一切出さない。エフェクターのレベルを上げ過ぎない。これが脱初心者の最低要件です。
例えば、プロのギタリストの動きをよく観ていれば気づくコトですが、演奏が終わった次の瞬間、左手でヴォリュームノブ(つまみ)をサッと動かしてゼロにしています。また、抑え目のエフェクトを補うために、ピッキングの強弱でニュアンスの違いを生み出し、歪んだ音を出しています。
以前のテレビ番組で、押尾コータローさんがアコースティックギターで歪んだ音をピッキングのみで表現するのを視聴したコトがありますが、一流になるとこうしたハナレワザをいとも簡単にこなしてしまうのです。
僕が所属しているバンドは多種多様なコピーバンドですので、セッティングが非常に難しくてギタリスト泣かせなバンドであります。僕は歪んだ音が好きなので、曲ごとに、いかにソフトな音が出せるか苦心しています。
例えば、バリバリ歪ませたディストーションサウンドでSpitzの「ロビンソン」を弾き、繊細かつ耳障りがイイ音を響かせるためのピッキングに苦心していた時期がありました。なるたけセッティングを変えないコトがライヴ本番におけるトラブル回避の最善策だからです。
超絶技巧を追求する前に、いかに心地よい音を出せるかにこだわる
コピー・オリジナルを問わず、バンド活動をする上での究極の目的は唯一「自己満足」であります。収益なんか関係ない、自己満足さえできれば何をやってもイイというのがアマチュアの特権でありましょう。
しかしながら、僕としては、せっかくエレキギターを弾きたいと思ってギタリストになった以上、ぜひともバンドを組んでステージで演奏し、その興奮や充実感を満喫してほしいと思います。
たとえ僕のようにオリジナル曲を作る才能がなければアドリブでソロを弾ける才能がなくても、エレキギターは楽しめます。たとえコピーバンドでも、仲間が集まって練習し、ライヴでお客さんを前にプレイするのは最高に興奮します。
何をやるのも自由ですし、表現の方法は千差万別ですが、ひとつだけこだわってほしいコトがあります。それは、誰が聞いても心地好く聴こえるプレイやサウンドメイクを追求してほしいというコトです。
別に難解なフレーズを弾けなくても全然問題はありません。超絶技巧のテクニックを持ったギタリストが全員とも速弾きを披露するワケではないのですから。しかしながら、キレイな音を出すというコトにだけはこだわってほしいと思います。
プロ・アマを問わず、巧いギタリストは例外なくキレイな音を出します。速弾きをするギタリストであっても同様です。みな一様にキレイな音を出すのです。そして、思わず顔をしかめたり耳を塞ぎたくなるようなノイズを出すコトは絶対にありません。
バンド演奏を聴きに来てくれたヒトやバンド仲間から、「キレイな音を出してたね」と褒められたら、その時は脱初心者のお墨付きをもらったのも同然であります。速さよりも巧さよりもキレイな音を優先して下さい。そういうギタリストこそが最もステージ映えするのです。
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