B&Wというハイエンドスピーカーについて

B&Wというハイエンドスピーカーについて

B&Wとの邂逅、それが高級オーディオにハマった理由

20代前半、社会人になって経済的な意味で親の束縛から解放され、欲しいものは自分の稼ぎで買うコトができるようになって数年後、マイカーの次に高額な買物をしたのはオーディオ関連でした。

かつてオーディオ関連でゆうに100万円を超える大金を費やしたコトは「絶対に成功するオーディオ選び」でも触れましたが、そのキッカケとなったのが当時の職場に近い地方都市にある高級オーディオ専門店でした。

まさにマニアックなオーディオ専門店で、店長のこだわりのハイエンドモデルが新品・中古ともに充実した品揃えを誇っていたので何度も足を運んでいたのですが、店長の気さくな人柄で多くの顧客を抱えていた店でもありました。

そこで運命的な邂逅(かいこう)を果たしたのですが、アキュフェーズやラックスマンにティアックといった有名メーカーがリリースするアンプでもCDプレイヤーでもなく、ある海外メーカーがリリースするスピーカーでした。

それはイギリスのハイエンドブランド、B&Wのスピーカーでした。

 

すっかり惚れ込み、B&Wのスピーカーに54万円を投資

そのオーディオ専門店でひときわ僕の意識を強く惹きつけたスピーカーがB&W製でした。明らかに、そしてあまりにも他メーカーのスピーカーと音が違ったのです。

「音が違う」という点では当たり前の話でして、メーカーによって音はすべて違います。難しいのはメーカーや価格帯で音の良し悪しを決められないコトで、何をもって「良い音」と定義するかは主観的なヒトの好みなのです。

当時の僕はジャズといったアコースティック系の生々しい音楽を一切好まず(今は大好きですが)、エレキギターの歪んだ音や打ち込みによるデジタルサウンドが好きでした。そして、これらのジャンルを最も僕好みに鳴らしてみせたのがB&Wだったのです。

オーディオの良し悪しを判断するのは普段聴き慣れているCDアルバムを試すのが最も正しい識別方法であります。そこで、当時愛聴していたマライア・キャリーの「Butterfly(バタフライ)」を持ち込み、オープニングを飾る「Honey(ハニー)」を聴き比べさせてもらいました。

Honeyのイントロ、マライアが第一声を放つ直前のバスドラの一発から違いました。B&Wは他のメーカーのスピーカーとは一線を画する音質、明らかに異彩を放っていました。とにかく音の粒がきらめくのです。

僕の父親もこだわりのオーディオマニアでしたが、実に偏狭で理屈っぽく、息子の僕に対して自分の価値観を押しつける人間だったので特定のメーカーしか聴いたコトがありませんでした。

そのため、「この音のキラメキは錯覚なのか?」と自分の聴覚に疑問を抱きながら、何度も繰り返し聴き比べをさせてもらったのですが、やはり錯覚ではありませんでした。B&Wの音は違ったのです。

活字で音質を表現するのは実質上は不可能ですので、あとは各自で確認してくださいという話になるのですが、B&Wなどハイエンドオーディオの販売店は限定されます。

そこで擬似的にフンイキだけでも知りたいのであれば、ヘッドホンやイヤホンを主にリリースしている国産メーカー「オーディオテクニカ」の開放型ヘッドホンを試していただきたいと思います。

というのも、音質の類似性という点で、B&W製のスピーカーとオーディオテクニカ製の開放型ヘッドホンのきらびやかなサウンドキャラクターがフシギなくらいソックリだからです。

 

音がスピーカーよりも前で鳴る~B&Wのもうひとつの特質

すっかりB&Wのトリコになってしまった僕は、当初予算を大幅に超過するメインスピーカーを購入するコトに。思い切って購入したのは当時の看板モデルだった「Matrix(マトリックス)」の802でした。

マトリックスとは3ウェイ(高音域・中音域・低音域を3つのスピーカーで独立して再生)のトールボーイ型スピーカーで、最高グレードの801は大型のウーファー1発、僕が選んだ802は801よりも小型のウーファー2発のモデルでした。

高音域と中音域を再生する可動式スピーカーをウーファー搭載のスピーカーの上に載せたデザインで、801は雪ダルマを連想するズングリしたもので(スターウォーズのエピソード7に登場するBB-8を四角くしたような)、802はその1/2のスリムなフォルムでした。

値段はオトナ買いを条件に勉強してもらって1セット54万円でしたが、サイズも重量も日本のウサギ小屋には似つかわしくない規模でした。スピーカー1基で35キロといえば、その大きさがイメージできるでしょうか。

購入してエイジング(慣らし)をしてから聴き込んでいくうちに、視聴で気づいたB&Wのもうひとつの特筆すべき点について深い満足を感じ、改めて惚れ込んだものでした。

それは「音のフォーカスの違い」というべきもので、スピーカーからの音が本体よりも前方で鳴っているように聴こえるB&W独特の再生音であります。「音がスピーカーの中から響いてくる」のではなく、「音がスピーカーよりも前で鳴っている」ように聴こえる感覚なのです。

カメラでピントを合わせるコトを「フォーカス(焦点)を合わせる」と表現しますが、フツウのスピーカーは耳が音を拾いに行く感覚で聴こえるものです。フォーカスがスピーカー本体なのです。

ところがB&Wは、フォーカスがスピーカー本体よりも前なのです。まるで、スピーカーの前に見えないスピーカーがあるかのような錯覚を覚えるフシギな音の鳴り方をするのです。この特性は、大音量でなくとも高音質を愉しめるというメリットにつながります。

ところでB&Wというメーカーは、「とにかく良い音が出せるならなんでもやる」という姿勢で、高音質を追求するためであれば、どんな異様かつ奇抜なデザインも辞さないスタイルを貫いています。

その意味では万人受けするオシャレなデザインとは一線を画するものであり、B&Wの名を世界に知らしめたであろう「Nautilus(ノーチラス)」です。その外見はSFホラー映画の金字塔、エイリアンのデザインそのものです。

とてもスピーカーには見えないフォルムに、販売価格は500万円というハイエンドモデル。残念ながら実物を観たコトは一度もないのですが、くだんの店長の話では「とにかく生々しい音が出ますよ」とのコト。いつか試聴してみたいところです。

 

もし、お金に余裕があって一軒家に住めるのなら…

今後、半独立型社会福祉士として計画相談支援の件数の限界に挑戦し、金銭的に多少の余裕ができて再びオーディオ熱が高まったとしたら、賃貸で一軒家に移り住んでオーディオセットを買い直すコトでしょう。

その際は是非ともB&Wのスピーカーを選びたいと思うのですが、あれから20年以上の歳月が経過していますので、そこは慎重に考えたいところであります。

B&Wへの信頼性が揺らいだのではありません。最もよく聴く音楽ジャンルとのマッチングを最優先に選ばないと後悔するコトになるからです。すべての音を最高に鳴らせる魔法のようなスピーカーなど存在しません。それぞれのメーカーごとに得意分野があるのです。

当時の僕はたまたま好きな音楽ジャンルがB&Wとマッチしたから手を出したワケで、あれから音楽の趣味が幅広くなった現在、スピーカーを複数所有し、セレクターで切り換えできるようセッティングし、使い分けるコトでしょう。

これがジャズやブルースなどのジャンルや、チェロやバイオリンなどの生楽器が奏でる音楽を主に聴く場合、B&Wを選ぶと音質がキラキラしすぎて浮いてしまいます。もう少し落ち着いたキャラクター、例えばJBLやタンノイから選ぶコトをオススメします。