相談者が安心して暮らしていけるために寄り添う~モニタリング

相談者が安心して暮らしていけるために寄り添う~モニタリング

障害者ケアマネの存在意義が問われるのはモニタリング次第

ケアマネジメントにおいてインテーク(初回面談)やアセスメント(課題分析)がいかに重要かについては、以前のブログ「障害者ケアマネが行う初回面談」で綴りました。

また、相談者との信頼関係の構築がインテークの成否にかかっているコトについても綴ったところですが、最初が良ければそれで良しというほど単純な話ではありません。最初に作成するサービス等利用計画はあくまでもスタートラインに過ぎません。

高齢者福祉とは違い、数十年にわたる長きにわたって相談者の人生に寄り添うコトが宿命づけられた障害者ケアマネの真価が問われるのは、サービス等利用計画を作成した後に続く継続的支援、すなわちモニタリングの如何(いかん)にかかっているのであります。

 

高齢者福祉と障害者福祉におけるモニタリングでは意義が異なる

刻一刻と時間が経過する中で加齢に伴う心身機能の変化を専門職の目で観察し続け、当初のケアプランを振り返りながら、その時点において相応しいサービス提供のあり方を模索するのが介護保険のケアマネの役割です。

一方、高齢者よりも身体機能の低下がはるかに緩やかであり、それどころか人生の絶頂期に向かって肉体的に最も発達していく若年層も対象となる障害者ケアマネの場合、モニタリングの目的そのものが大きく異なります。

同じ「今この瞬間を生きる相談者」であっても、余生を安心安楽に過ごしてもらう支援を行う高齢者ケアマネと、数十年単位の長きにわたって就業面も含めて支援する障害者ケアマネ。相談者のライフスタイルが違うのですから、それぞれの役割が違うのも当然であります。

高齢者・障害者を問わず、ケアマネジャーが福祉サービスを利用するために作成する計画は「いったん作ってハイおしまい」ではありません。その計画が妥当なものであるか、常に見直しをかけていかねばなりません。

現時点で提供しているサービスの支給量は妥当か? 多過ぎないか、少なすぎないか? 現行で提供する以外に新たに必要なサービスはないか? 何らかの変更は必要ないか? それとも現行のまま継続するコトで問題ないか?

相談者本人や支援者からの聴き取りを行い、あるいはサービスを利用している現場を視察し、それらをもとにケアマネジャーが計画の評価を行うための一連のプロセスを総称して「モニタリング」と呼ぶのです。

 

理想と現実の狭間(はざま)で苦悩する障害者ケアマネたち

モニタリングの意義について、そして高齢者福祉と障害者福祉においてモニタリングのあり方が異なるコトについてはご理解をいただけたかと思います。ライフステージの変遷に伴いケアマネの果たすべき役割が違うのは当然です。

その意味においては、同じ障害福祉でも18歳未満を対象とする障害児福祉と18歳以上を対象とする障害者福祉でもモニタリングのあり方は大きく異なってきます。

わがマチでは障害児と障害者で担当ケアマネが変わる場合があるという棲み分けがあるのですが、本来のケアマネジメントの考え方に則るのであれば、年齢でケアマネがバトンタッチするというのは好ましくありません。

とはいえ、そもそも障害者ケアマネが圧倒的に足りていないわがマチの現状においては、本来の趣旨とは異なるとはいいつつも止むを得ない側面もあるのです。

利用者の希望に応じてセルフプランあるいは計画相談支援の選択ができるのが障害者総合支援法の趣旨なのですが、わがマチの現状では限られたマンパワーの中で困難ケースへの支援を優先せざるを得ないので。

 

障害福祉におけるモニタリングには「プラス評価」も数多くある

少々話が逸れましたので本筋に戻しますが、障害者ケアマネのモニタリングは老化に伴う能力の低下や障害の重度化に応じた支援のあり方について現行の計画についての見直しを図る「マイナス評価」のケースもありますが、その逆のケースもあります。

すなわち、若年層における肉体的・精神的な成長や、福祉的就労などの日中系サービス利用や家事援助などの在宅系サービスの利用によって、やり方を教わったり一緒に行うコトによって、これまでできなかったコトができるようになるといった「プラス評価」であります。

プラス評価ができれば、例えばこれまで月20時間でホームヘルパーに来てもらっていたのを月15時間に減らし、残り5時間を自力でこなすとか、福祉的就労から一般就労に向けて職業評価を受けるといったように、これまで掲げてきた目標を高く設定し直すコトができます。

僕が過去に担当した中で最も劇的な成長を遂げた相談者のひとりに、タダ子さん(例によって仮名)がいました。前職を辞める際に後任に計画相談支援を引き継いだのですが、業界復帰後に事業所へ挨拶回りをした際、熱心に作業に取り組むタダ子さんと再会しました。

 

プラス評価が行えるモニタリングは障害者ケアマネ冥利に尽きる

タダ子さんは中度の知的障害がある30代後半の女性利用者でした。その当時のタダ子さんは一軒家で母親と2人暮らしをしており、近所には自営業を営む兄夫婦が別居しているとのコトでした。

タダ子さんは高等養護学校を卒業後、10年以上にわたり一般就労をしていたのですが職場でのイジメに遭って自主退職してしまい、それ以来は母親が言うがまま引きこもり同然の生活を10年以上にわたり続けていたとのコトでした。

僕が担当する別な相談者を支援している知人からの紹介というコトで、タダ子さんの兄と嫂が来所し、タダ子さんの福祉的支援の要望を受理しました。「あとは本人の意向次第で」というコトでしたが、それ以来パッタリ音沙汰がないまま数年が経過したのです。

そして、いきなりタダ子さんの嫂から急遽「ゼロさんに相談に乗ってほしい」との電話連絡があり、ふたたび僕のもとを訪ねてきたのでした。

嫂の話では、数週間前、しばらくぶりに実家を訪問してみるとタダ子さんの母親が転んで骨折して寝たきり状態、タダ子さんもロクに食事ができないまま1週間ほど過ごしていたコトが判明。

母親は緊急入院したのですが、とても在宅復帰はムリとのコトで、退院後は福祉施設に直行する運びになったのでした。

そうなると、一軒家に独り残されるコトになるタダ子さんへの福祉的支援が絶対に必要になります。嫂も幼いわが子を養育している真っ最中、つきっきりでタダ子さんの面倒を看るのは実質的に不可能とのコト。

本人が望んでいなかったというコトで福祉サービスの利用に懐疑的だった兄に代わり、以上の状況を見かねた嫂が相談にきたというワケであります。

そこで後日、嫂と日程調整してタダ子さん宅を訪問するコトに。インテーク面談を行い、アセスメントを実施。タダ子さんの希望は住み慣れた我が家で暮らし続けるコト、しばらく仕事は休んでいたけれど復帰したいとのコトでした。

そこでまずは家事援助サービスの利用を導入し、タダ子さんの単身生活を全面的にバックアップするコトを提案。同時進行で、福祉的就労に向けてタダ子さんのフィーリングに合致しそうな福祉就労所を紹介。見学と体験利用をしてもらうコトに。

いずれもタダ子さんは一発で気に入って下さったので即、サービス利用に向けて調整。速攻でサービス等利用計画の作成を行い(本人の気が変わっては困るというコトもあり)、一気呵成にサービス提供までこぎつけました。

その後、当時の計画相談支援は6ヶ月モニタリングが基本だったので、初回後の連続3ヶ月モニタリングを行った後は半年ごとにタダ子さん宅を訪問して面談を行い、また支援者からのヒアリングも行っていきました。

そんなタダ子さんの在宅生活ですが、当初の不安は何処へやらといった話に。その成長は目を見張るものがありました。兄夫婦のフォローありきでしたが、みるみるうちに単身生活に馴染んでしまいました。

タダ子さんはもともと料理好きなヒトだったそうで、ヘルパーの支援を受けながらとはいえ、兄も嫂も「とてもそこまではできないだろう」と思われていた家事全般、特に調理がバツグンにできるようになったのです。

最初こそ「火の始末が不安だ」というコトでガスの使用を兄から禁止されていたのですが、家事援助を受けながらヘルパーと一緒に調理しているうちにレパートリーが徐々に増えていき、最後はお菓子作りまで着手。

また、10年以上にわたって母親の言うままに実家に引きこもっていたコトが信じられないほどタダ子さんは福祉的就労でも秘めたポテンシャルを如何なく発揮。毎日休まずに通所するコトに。

数回目のモニタリングでタダ子さんから聴き取ったところによると、障害福祉サービスの利用については母親が頑強に反対していたので見送っていたとのコト。タダ子さん自身が拒んでいたワケではなかったのです。

 

モニタリングを通じて、長きにわたり相談者の人生に寄り添っていく

以上、ご紹介したタダ子さんのように障害者ケアマネ冥利に尽きる事例は残念ながらレアケースでして、体調を崩して入退院を繰り返したり、福祉的就労が順調なようで順調でなかったりするケースが圧倒的多数を占めます。

とはいえ、もしモニタリングという制度がなく、われわれ障害者ケアマネがサービス等利用計画を作りっぱなしでその後の相談支援を放置するようなアプローチをしたらどうなるでしょうか?

モニタリングさえ実施し続けていれば順調にいくであろうと思われたサービス利用や日常生活で躓いてしまい、その躓きを未然に察知したり初動ケアを適切に行うコトでリカバリーができなくなったりするというコトになります。

こうして深く傷ついたり人間不信になったりするコトで、場合によっては相談者の以後の人生に大きな禍根を残すリスクがあるのです。

その意味においては、われわれ障害者ケアマネの業務のひとつ、モニタリングこそが相談者の数十年にわたる長い人生を安心して過ごしていくために必要不可欠であるコトが判っていただけると思います。

相談者と担当ケアマネが邂逅するキッカケは偶然か必然か、そこは神のみぞ知るといったところです。そこから1対1の長いお付き合いが始まるのです。

しかしながら、いったん利用契約を締結した以上、双方の異議申し立てがない限り、われわれ障害者ケアマネはモニタリングを通じて、担当するコトになった相談者の人生に深く関わっていくコトになるのであります。