求められるのは「そのヒトだけのアプローチ」~相談支援はケースバイケース

求められるのは「そのヒトだけのアプローチ」~相談支援はケースバイケース

相談者は十人十色、千差万別

別にソーシャルワーカーに限った話ではありませんが、顧客に対して礼節を尽くし、堅苦しくなり過ぎず、かといって軽薄と受け取られない「社会人に相応しい言動」で対応させていただくのは社会人の常識であります。

独立型社会福祉士として障害福祉業界で再出発してからの僕は、以上の理念をもとに、新規でご紹介いただいた相談者との信頼関係の構築に向けて心血を注ぐ毎日を送っております。

その甲斐あってか、今のところ僕が所属する相談支援事業所との契約を解除したいとか、僕への苦情が出ているといった連絡は入っておりません。

しかしながら、「そんな当たり前のコトを今さら復唱して何になる?」とか「独りケアマネとし再出発するまではそんな常識すらできていなかったのか?」と疑念を抱くヒトもいると思います。

若造から中年に差しかかる年代で、いまだガキの青臭さを引きずっていたコトは確かで汗顔の至りなのですが、中には常識的な折り目正しい対応だけでは絶対に対処できないケースもあるのです。

むろん絶対数は少ないのですが、当ブログで紹介してきた登場人物のように、状況によっては苦肉の策として型破りなアプローチをせざるを得ないケースも中にはいるのです。

 

相談支援のスタイルは相談者によって臨機応変に

障害種別だけでなく、等級や特性についての詳細、場合によっては診断名も把握

本人が計画相談支援の導入を承諾したコトを前提に、支援者から個人情報の提供を受けた際、アンタッチャブルな話題について言及したり基本情報に明記したりするコトで信頼関係の構築を妨げる事態を未然に防ぐ…。

以上、前回のブログで詳しく綴りましたが(詳細はコチラ)、相手にとっても不安や緊張など少なからず精神的な負荷がかかるインテーク(初回)面談を無難に成功させるために事前に個人情報をもらっておく目的もあります。

新規で計画相談支援の依頼を受ける際、当然ですが診断名や障害名を確認します。とはいえ、ただ身体障害者手帳を取得しているというだけでは、障害種別が身体障害であるというコト以外に何も判りません。

そのため、手帳に記載されている詳細を知る必要があるのです。以上の例であれば、「1種1級、腎不全による腎臓機能障害」と判れば、透析治療を受けているとか水分・食事制限が必要といった推測もできます。

同様に、単に療育手帳を取得している情報だけでは、知的障害というコトしか判りません。最低でも療育B判定(軽度~中度)か、療育A判定(重度~最重度)か知る必要があります。また、B判定はIQの幅が広いので、その数値も把握しておく必要があります。

障害者ケアマネとしてアプローチしていく中で、まずは利用契約や重要事項説明書の説明、その後は申請書類の説明やサービス等利用計画の承諾を得るための説明と、数多くの文書を取り扱うコトになります。

その際、内部障害や肢体不自由の身体障害者や精神障害者に対しては健常者と同様のアプローチで問題ないのですが、知的障害がある相談者に対しては合理的配慮に基づく「相手が判る説明」をしなければなりません。

つまり、難解な表現をなるべく用いないとか、専門用語を噛み砕いた表現に置き換えるとか、漢字にルビ(ふりがな)を振って読めないところが一切ない文書を作成するといった合理的配慮が必要というコトであります。

また、弱視や視野狭窄など視覚障害がある身体障害者には、文書の重要な箇所にマーカーでアンダーラインを引いたり特大フォントで作成したりするといった合理的配慮が必要になります。

さらに、統合失調症などで気分に浮き沈みがあり、不慣れな人物との長時間の面談に強いストレスを感じる精神障害者には要点をまとめた説明をし、できるだけ短時間で終わらせる合理的配慮が必要になります。

障害特性に加えて、相談者の気質や性格も把握した上でアプローチ

相談者は障害特性によって「○○障害者」と認知されますが、僕ら障害者ケアマネと同じ、「知・情・意を備えた生身の人間」であります。当然、そのヒトごとに生まれ持った性分というものがあります。

一言で性分といいましても、生まれ持った先天的な気質もあるでしょうし、育った環境や出会ったヒトから受けた影響等によって後天的につくられた気質もあるでしょう。

僕は決して器用なタイプではありませんし、むしろ不器用で要領が悪く、ヒトより余計に親や教師から説教を喰らって育ってきました。その本質は今も変わりません。

しかしながら相談支援でメシを食うプロの障害者ケアマネたるもの、自分のフィールドで場数を踏みながら、事前に得られた情報提供を慎重に精査し、過去の経験と照らし合わせた上でアプローチ方法を決めなければなりません。

要は、相談者との信頼関係の構築に向けて、ひとつずつプロセスを経ながら慎重に接していけばイイのであって、極言するなら「相談者に嫌われないケアマネ」になれば目的は達成されるというワケです。

そのために最も有効なのは、その相談者を知っている支援者からの口コミ情報であります。障害特性や診断名など情報提供書には記載されない本人のパーソナリティーについての情報ほど有益となります。

例えば、「○○さんはガーッと強くモノをいわれると委縮してしまう」とか、「○○さんは書類を見せると『オレ全然そういうの判らん』とシャットアウトしてしまう」といった情報です。

こういった貴重な情報があると、そのヒトごとに、インテークにおける障害者ケアマネとしての支援方針が自ずと決まってきます。ソフトかつ丁寧な口調を意識して話すとか、難解な表現を一切排除した文書を提示するというように。

信頼関係が構築された後にアプローチを変えるコトも

これは当ブログでたびたび登場するガー子さんのケースですが、ガー子さんは生来の気性の荒さと気の小ささを併せ持った個性が強い相談者でした。

いったん興奮すると、目を引ん剝いて、タダでさえ大きな声を張り上げて喚く。一方で、「○○さんにこんなコトいわれた」とか「みんなあたしのコトばっかり悪くいう」など、気の小ささゆえのグチ話にキリがない。

また、ガー子さんは婉曲な表現というものが一切通用しないヒトでした。度重なる対人トラブルが絶えず、ついにガー子さんを受け入れてくれた福祉就労所の理事長から直々に電話が鳴りました。

「前もってゼロさんに話しておきますけど、このまま放置してはおけないので私から直々に、ガー子さんにキツく説教させていただきます。すぐに苦情の電話がゼロさん宛てに行くと思いますけど、理由あってのコトですから」

その数々のエピソードを聞く限り、残念ながら100%ガー子さんに内容でした。生来の気性の荒さに加え、「あたしが一番ここじゃ偉い」と思い違いをしてしまったコトから、気に入らない利用者をあからさまに攻めるというのです。

「ガー子さんのコトがイヤだからといって、これまで3人辞めてしまいました。このままですと、うちの事業所が潰れてしまいます」と理事長が懸念するのも、決して大げさな話ではありません。

わがマチの福祉就労所は群雄割拠の戦国時代の如く、数多くの事業所がしのぎを削っている状況にあります。そうした中で「あそこの事業所は利用者間のトラブルが絶えない」といった風評被害が出れば、すぐに死活問題になるのです。

封印しておきたかった「苛烈モード」~苦渋の選択をせざるを得ない事態に

さて、くだんの理事長から電話があってから数時間後。予告があったとおり、怒り心頭でガー子さんが僕へ電話してきました。「あたしは何も悪くないのに怒られた!」と。

いつもの僕なら、電話越しに喚かないよう諌めながらガー子さんのグチ話の聞き役に徹するのですが(前職のオフィスで、僕の2つ隣にいるスタッフにまでハッキリ聴こえるほど)、今回ばかりはそうはいきません。容赦無用の苛烈モードで臨むコトに。

「何もしてないんだったら、理事長にガー子さんが怒られるコトないんじゃないんですか?」

「そんなコトない! あたしは絶対に何も悪くない!!」

「電話口で喚くなって何回いえば判るんですか!! そんなデカい声で喚くなら電話切りますよ」

「ごめん(自分に非があると思ったらすぐ詫びる、ガー子さんの美点)」

「だったらガー子さんに聞きますけど、喫煙所で他のヒトに『あたしに挨拶がない』なんて威張ってるらしいですよね? でも、ソレっておかしくないですか?」

「おかしいって何!?」

「ガー子さんはそこの社長でもなんでもないですよね。理事長がいうならともかく、ガー子さんにそんな偉そうなコトいえる権利あるんですか? ガー子さんも他の利用者さんと同じ立場ですよね?」

「それはそうだけど…」

「みんなで仲良くタバコ吸って楽しく休憩時間を過ごせばイイ話じゃないですか? そんな『あたしに挨拶がない』なんていわれたら、誰だってイヤな気持ちになりますよ」

「……」

「理事長にとって大事な利用者が、ガー子さんにイヤなコトいわれたってコトで3人も辞めた話も聞きました。理事長が怒るのも当然でしょう。ガー子さん、この責任をどう取るつもりですか?」

「……」

「今回は、どう考えてもガー子さんが悪いです。これでガー子さんがクビにされても文句いえませんよ。もしクビになって『別なところ探して』って頼まれても、僕は引き受けませんから。きちんと反省してください」

*   *   *

グチ話を聞いてくれると思っていた相手から想定外の叱責を喰らって、ガー子さんも驚いたコトでしょう。しかしながら冒頭で綴ったように相談者は十人十色の千差万別、その中でも異彩を放つ相談者だったガー子さん。

相手を傷つけまいとする婉曲な表現で諭すといったアプローチが一切通用しないヒトだったので、こういった状況下においてはハッキリとガー子さんに非があるコトとその理由を伝えなければなりませんでした。

というのも、その理事長は障害者の自立と安定した雇用を守るために長年にわたって尽力してきたわがマチの重鎮にして功労者のひとりだったからです。

そんな理事長ですから、ガー子さんの態度が改まらなければ即、他の利用者を守るために苦渋の決断をするコトが目に見えていました。

僕としては、ガー子さんがようやく見つけた居場所を自らの非によって追い出されてしまう事態だけはどうしても避けたかったのです。なぜなら、ガー子さんがそこで働き続けるコトを強く望んでいたからであります。

*   *   *

超久々の苛烈モードでガー子さんに反省を促した後、くだんの理事長へすぐに電話を入れました。「僕からもガー子さんに話をしました。きっと反省して態度を改めると思うので、どうか長い目でよろしくお願いします」と。

それから数ヶ月、様子を見守っていたのですが、担当スタッフに定期的に電話連絡で確認したところ、「あれ以来、ガー子さんがトラブルを起こすコトは一切なくなりました。理事長も安心しています」との返答が。

なお、ガー子さんからも福祉就労所のグチ電話が一切こなくなりました。