信頼関係の構築が困難なケースを担当するコトになったら~その事例と対処法について

信頼関係の構築が困難なケースを担当するコトになったら~その事例と対処法について

すべての相談者が最初から友好的かつ協力的とは限らない

障害者ケアマネの仕事にとって、相談者との信頼関係を構築するための初回面談(インテーク)がいかに重要については、すでに当ブログで取り上げております(詳しくはコチラ)。

初回面談を成功させるための秘訣については、僕が積み上げてきた経験(もちろん失敗も)や先輩ケアマネから学んだ知識をもとに実践してきたものであります。ところが、ごく少数ではありますが、初回面談の後も対応に苦慮するケースもあります。

「以心伝心」とは良くいったもので、相手から明らかに信頼されていない場合は言葉を発さなくとも察知できるものです。好ましく思われているという感触が錯覚であるコトが少なくない一方で、嫌われているという感触だけは100%正しい場合が実に多い。

このように、非好意的な相手に送るサインというのは時に言葉以上に雄弁に語るものでありまして、いったん契約を締結した相談者を相手に「相性が合わないようなので解約というコトで…」という話にもなりません。

 

相談者が発する非好意的サインとその対処法について

障害者ケアマネ(以下「ワーカー」とする)が相談者から嫌悪あるいは敬遠されていると思われるサインの数々を列挙してみますと、およそ次のとおりでありましょう。

ワーカーに視線を合わせない、ワーカーに顔を向けずに会話をする

自宅訪問した際、ワーカーは相談者あるいはその家族の促しに応じ、相談者の正面あるいは90度の位置に着席します。正面に座る場合は相談者に対面し、討論スタイルのように両者の緊張が高まるコトが危惧されるため、90度横に座るコトもあるのです。

その際、たいていの相談者はワーカーと対面して面談を勧めていくコトになりますが、中には顔を真横に向けたままでいたり視線を別な何かに向けたりで、決してワーカーと視線を合わせない相談者もいます。

もっと行儀のよろしくない相談者になりますと、来客者を目の前にしてケータイのゲームに興じたり、テレビ番組に視線を釘付けにしたままで面談に応じたりするヒトもいます。

これは、ワーカーを警戒していたり、面談そのものに不満を持っていたりする場合が考えられます。相談者が望んでいないか納得していないにもかかわらず、支援者や家族から計画相談支援の導入を迫られ、不承不承やらされているといった面白くなさがあるのでしょう。

あるいは、これといって明確な拒否の理由はないものの、未知の第三者であるワーカーとの関係性を構築するコトに対して、人一倍の時間を必要とする相談者もいます。

過度の緊張なのか何らかの不満があるのかは、面談の数をこなしていくコトで明らかになります。前者であれば単純接触効果(別名「ザイアンズの法則」)によって、いずれ緊張が解けて信頼関係の構築がなされていくからであります。

後者についても単純接触効果で不平不満が和らぐ可能性がありますが、ワーカーとの相性や相談者の性格的要因によって信頼関係の構築に至らないコトもあります。そもそも誰かの支援など必要ないとの拒否が根強くあるケースです。

このような場合は決して信頼関係の構築には至りませんので、いったん解約するか計画相談支援の導入を保留にせざるを得ないコトになります。無理強いしても何も良いコトはありません。

ワーカーに対し、決して笑顔を見せない

誰でも会話が弾めば、自然と笑顔がこぼれるものです。インテークの最中で思わず相談者から笑い声が響き渡るようであれば、以後の関係性の構築は約束されたのも同然であります。そこまでハデに盛り上がらなくても、一度でも微笑を浮かべたなら結果は同じです。

ところが、面談の最中にいちども笑顔をみせず、それどころか口を固い真一文字に結んだまま表情をこわばらせた無表情でいた場合、残念ながらインテークは成功したとはいえません。

いわゆる「ツーン」とした表情や、ワーカーと視線を合わさったとしても最初の無表情を崩さない場合です。ワーカーに対して敵意を抱いているか過度の緊張のため表情がこわばっているだけなのか、相談者によっては判別しがたいケースもあります。

こうした場合はワーカーがいくら単独で思い悩んでも答えは導けませんので、インテーク後の情報収集が必要となります。相談者を良く知るキーパーソン、それも家族だけでなく支援者のいずれかにヒアリングを行い、次回以降の方針を模索するのです。

家族の場合、相談者に対する過小評価あるいは過大評価が行われてしまい、誤ったバイアス(偏見)がかかる危惧が考えられるため、第三者の客観的な評価も必要なのです。

実際、僕が担当している新規相談者で以上に該当するケースを担当するコトになり、今後の法人について思い悩んでいるところであります。

その相談者は今年ようやくオトナの仲間入りをした若い女性なのですが、僕に対して何らかの不快感を抱いているのかと思わざるを得ないほど好感触が得られないケースです。

そこで、彼女を知る支援者のひとりに情報収集を行ったのですが、支援者いわく「もともと初対面の相手とのコミュニケーションを極端に苦手としており、誰に対しても初対面ではそのような態度を取ってしまう。長い目で関わってほしい」との返答が。

単純接触効果を信じて、くだんの相談者との面談をこなしながら少しずつ信頼関係の構築に努めていくばかりです。なお、その際に有効と思われる面接技法は「相手の好きなコトについての話題を振る」であります。

ワーカーと物理的な距離を空けようとする

心理学用語で「パーソナルスペース」というものがあります。恋人や親友など親しい相手や好意的に思っている相手との距離は自然と近づく一方、未知の相手や非好意的な相手とは離れたいと思う心理、「これ以上は近づかないで」という物理的な距離であります。

このパーソナルスペースは、当然ながら男女差や国民性の違いなど個人差がありますが、親しさを感じない(むしろ内心で苦手に思っている)相手が近づくと心理的圧迫感を感じてしまいます。

皆さんも、苦手に思っていたり非好意的に思っている相手が不意に近づいてきたコトで思わず上体が仰け反ったり、一歩後退したりしたのを体験したコトがあるでしょう。

相談者が明らかに意図的にワーカーと距離を置こうとした場合は、それに逆らったりせず、相手が許容する範囲内よりも近づかないようにするしかありません。信頼関係の構築によってパーソナルスペースは自然と近づいていくコトになります。

面談を重ねながら、相談者の方から徐々に距離を詰めてくるのを待つしかありません。

ワーカーに返答する際に声が小さい、あるいは声が大きくなる

皆さんも学校で先生から「私語が大きい! 静かに!」と窘められたコトや、逆に「聞こえない! もっと大きな声で!」と指摘を受けたりしたコトがあったと思います。

人間、仲の良い友人や恋人などを相手に話をするときは声のトーンが大きくなったり高くなったりするものです。逆に、苦手なヒトを相手にしているときや自信がないときには声のトーンが小さくなったり下がったりするものです。

ワーカーを相手にして相談者の声のトーンがいつもより小さかったり下がったりしている場合は、相談者は緊張あるいは不快な思いをしていると思って間違いありません。

なお、ワーカーを前にした相談者の声のトーンが普段と違うかどうかは、インテーク時に相談者を良く知る支援者との同席が必要不可欠です。さすがに普段の声のトーンまでは事前情報を得るコトができません。初対面のワーカーには比較のしようがないので。

逆に、ボソボソ小さい声で話していたのに「だからそうじゃなくて!」「もういいって!」など、急に声を荒げる相談者も中にはいます。相談者の意思にそぐわないケアマネジメント導入を試みた際に起こりがちなトラブルであります。

今後の信頼関係の構築のためには、状況に応じていったん面接を切り上げたり冷却期間を置いたりするなどの判断も求められます。

「閉ざされた質問」にのみ答え、「開かれた質問」には決して答えない

「今朝、朝ごはんを食べましたか?」というのは閉ざされた質問であります。「今朝の朝ごはんは何を食べましたか?」というのは開かれた質問であります。

両者の違いは、最低限の返答であるか詳細な返答であるかというものであります。つまり、「はい・いいえ」で返答が成立するのが閉ざされた質問、「はい・いいえ」の返答だけでは成立しないのが開かれた質問であります。

冒頭の事例ですが、閉ざされた質問であれば朝食を摂ったかどうか返答すれば済みますが(あるいは首を縦に振るか横に振るかでも成立)、開かれた質問の場合は朝食を摂ったのならメニューまで詳細に返答しなければなりません。

上記の若き女性相談者も、閉ざされた質問には軽く頷くジェスチャーで返答してくれたものの、開かれた質問に対しては無言で僕を見つめながらしばらく沈黙してしまい、見かねた母親が代わりに返答するといったやり取りが続きました。

問題なのは無言であるというコトであり、別に「朝ごはんは食べてない」「何を食べたか忘れた」といった返答でもイイのです。返答を拒むというコトは開かれた質問には応じたくない、すなわち心が開かれていないという証拠ですので。

とはいえ、相手の心情を忖度して何の会話を切り出さないままでいれば重苦しい沈黙は続くばかりであります。最初はあまりプライベートな質問をすべきでないと思って話題を振らなかったのですが、会話があまりにも続かないため例の面談技法を用いるコトに。

すなわち、支援者から得ていた情報提供書の中に彼女が好きなアーティストについて話題を振ったのです。すさかず母親が「この子は○○がスキで、今日もゼロさんが来るまでアルバム聴いてたんですよ」と援護射撃。

母親が代弁したとおり、僕が自宅訪問した際に携帯電話の端末にダウンロードしたと思われる音楽をイヤホンで聴いていました。僕がリビングにお邪魔して着席したのと同時にイヤホンを外して、次に携帯電話のゲームを始めたというワケです。

母親から、好きなアーティスト名が挙がった次に話題になったのはテレビ好きであるという趣味。夜間帯にオンエアされる大抵のドラマを視聴しており、いずれも録画して楽しんでいるとの説明がありました。

やはり面談技法は効果テキメンでした。彼女の重かった口がようやく開き、ほんの一言二言ですが、好きなアーティストのグループ名や番組名を教えてくれたのです。

事務所に戻った後に情報提供をしてくれた支援者に確認したところ、「ゼロさんとの面談に慣れるまで、しばらくその話題で振ってみてください」との返答を受理。

次回はサービス等利用計画案を作成して自宅訪問する予定ですが、堅苦しい話は早々に切り上げ、彼女が好きなアーティストの話で少しずつ心理的距離を縮めながら信頼関係の構築に努めたいと思います。