HOSCO製エレキギターキット・ストラトキャスターモデルの製作ポイントについて
- 2019.02.16
- エレキギター

世界に1つのオリジナル~ストラトキャスターモデルを作るなら
半独立型社会福祉士としてリスタートを切るまでのリフレッシュ期間に購入したエレキギター自作キットがつい最近ようやく完成しました。日中忙しいコトよりも帰宅後に当ブログの執筆の時間に追われ、しばらく未完成のまま放置していたからでした。
1つのモデルが気に入ると同時に完成後の仕上がりに不満が起き、ついつい同じモデルをリピート買いしてしまうのですが、今回もストラトキャスタータイプを3つも作ってしまいました。いずれも練習やライヴ本番で使っていくつもりです。
さて、せっかく同じモデルを何度も組み上げて失敗も重ねましたので、今回はこれから自作に挑戦する皆さんに向けて、僕が犯した失敗の具体例や対応策についてご紹介したいと思います。
今回、テーマとして取り上げるのは、ギタリストの中で最も人気があると思われるフェンダー社のストラトキャスターをモデルにした自作キットの製作ポイントであります。
高品質に見合わない良心的な価格設定~自作派にオススメしたいHOSCO製キット
本題に入る前に、僕がエレキギターを自作する際に購入している株式会社HOSCO(ホスコ)についてご紹介したいと思います。
ホスコは名古屋市に籍を置く楽器の輸出入卸業として、1983年に前身となる「サガジャパン」を設立。2007年に現在の社名に変更。自作派に高品質な自作キットを数多くリリースしています。
ネットでの購入者レヴューを参考に初めて自作に挑戦したレスポールスタンダードモデルを皮切りに、レスポールスペシャルモデル・フライングⅤモデル・335モデル、そしてストラトキャスターモデルまで、僕はすべてホスコ製を購入しています。
ネット通販では、エレキギターキットはアメリカ製や中国製など海外からの輸入モデルもあるようですが、僕が断然オススメするのはホスコです。理由は、高精度に加工された良質な木製パーツの素晴らしさです。
また、説明書も日本語で書かれていて判りやすいですし(ただし、レスポール系の配線図は基本構造が理解できていないとハンダ付けに相当苦労します)、ボディ表面の研磨や電装パーツ取り付け箇所のバリ取りのみで、大掛かりな修復作業も不要。
僕はストラトキャスターそのものが持つリアシングルコイルのピーキーな音質がイヤなので(キンキン耳障りな歪み音)、ディマジオ社のモデルでシングルコイルサイズのハムバッカーに交換していますが、それ以外はキット付属の純正パーツしか使っていません。
もちろんパーツ交換によるグレードアップはいくらでも図るコトができますが、純正で充分ライヴで使えるコトは実証済みなので、消耗等で壊れるなどして使えなくなるまでは純正をそのまま使うコトにしています。
ボディ研磨後の目止め作業は必須項目
メイプル以外、目止めしなければ凸凹な仕上がりになる
レスポールスタンダードモデルや335モデルのようにメイプルで化粧木を貼り付けている場合はサンドペーパーで研磨するだけで充分キレイに仕上がりますが、ストラトキャスターモデルなどのようにバスウッドの場合、研磨は当然として、さらに目止め作業が必要です。
実際、同じバスウッドボディだったフライングⅤモデルの1本目の製作時、サンドペーパー研磨後の手触りがあまりにも滑らかだったコトから目止めは不要だろうと判断し、研磨後に直接スプレーで塗装しました。結果、安っぽいDIY工作のような仕上がりに。
透明あるいは着色系の水性ウレタンニスを何度も塗布して木目を活かしたナチュラルな仕上がりを求めるのであれば不要でしょうが、スプレーで単一塗装する場合は絶対に目止めをしましょう。
同様に、レスポールスペシャルモデルのようにマホガニーを貼り合わせたボディの場合、目止めをしなければ、見事なくらい凸凹な仕上がりになって後悔します。せめてボディトップだけは絶対に目止めをしましょう。肌触りも良くなります。
手軽に目止めできるのはサンディングシーラー
目止めとは、木材の種類にもよりますが地中からの水分を吸い上げる円筒形の細胞(道管)など、サンドペーパーによる研磨だけでは埋められない凸凹を埋めて滑らかな表面になるように仕上げる作業のコトです。
目止め作業に使用するのは、砥粉(とのこ)またはサンディングシーラーです。前者は砥粉を水に溶いてボディに塗りつけ、乾燥後に拭き取って道管を埋める作業で、後者は透明ニスと同じ見た目の液体を塗布し、乾燥後にサンドペーパーで研磨する作業です。
ちなみに僕はサンディングシーラー派です。砥粉は水との配合が難しく、拭き取った後始末が面倒なので(細かな粒子がパラパラ落ちます)、手軽なシーラーでボディ表面を滑らかに仕上げました。なお、水性ウレタンニスと同じ和信ペイント株式会社の製品です。
よほどの知識や技術がない限り、レリック加工はオススメしない
いわゆるヴィンテージやオールドと呼ばれる超高額モデル、経年劣化による塗装のヒビ割れや打痕などの傷を高度な加工技術を施すコトによって再現する。それをレリック加工と呼ぶのですが、僕もあれがとてもクールだと思い挑戦しました。そして大失敗。
1本目のストラトキャスターモデルで手痛い失敗をして泣く泣く再研磨の再塗装という余計な工程を経たのですが、僕の技術では絶対うまくいかないと諦め、2本目と3本目は通常のスプレー塗装&水性ウレタンニス仕上げに。
では、一見ボロボロの傷だらけでありながらクールに仕上げるのがなぜそれほど難しいのでしょうか。理由として考えられるのは以下の2つであります。
経年劣化による塗膜のヒビ割れや剥がれ、打痕などの傷を再現するのは高い技術がいる
ギブソン系のギターでもヴィンテージやレリック加工が施されたレスポールが多数リリースされていますが、塗装表面に起こるヒビ割れは当時の塗料だったラッカーが経年劣化して起こるものです。そのため現在のポリウレタンやニスでは起こりません。
そのクラック形状から天気図の等圧線に似ているため「ウェザーチェック」と呼ばれているヒビ割れの再現は急激な熱変化を加えたりナイフの刃先で切り込みを入れながら再現したりと方法があるようですが、プロがやらねばキレイかつリアルな仕上げになりません。
また、打痕の表現も同様でして、僕はカッターナイフを使って削ったり金属板のエッジで叩いたりして再現を試みたのですが、いかにも「刃物や金属で傷をつけました」的な仕上がりに。どうしても販売されているレリック加工ができませんでした。
動画サイトで、ボディを何度もアスファルトに放り投げてレリック加工を試みる方法がアップされていましたが、やはり傷のつき方が不自然で、納得できる仕上がりになっていませんでした。本気で再現するなら、プロに加工を依頼するしかありません。
レリック加工の定石~打痕などの傷がつく箇所や塗装の剥がれる個所は決まっている
ストラトキャスターのレリック加工の画像を何十枚も探しては保存し、見比べていくうちに気付くコトになったのですが、塗装が剥げる個所や打痕がつく箇所が実はある程度決まっているのです。
もちろん、通常はフツウに長く使い続けるうちに自然に起こる劣化を再現するものですが、逆に、「なんでこんなところに打痕やひっかき傷があるんだ?」とギタリストなら疑問に思う箇所も。
例えばボディのエルボー部分(上腕部が接触する個所)が摩擦によって剥げるのは判りますし、エッジ部分に数多くの打痕がつくのも判ります。しかしながら、ピックガード付近に打痕やひっかき傷があるのは、エレキギターの構造上どう考えても不自然です。
ボディの打痕はドアやテーブルなどに不意にぶつけたり、ストラップが外れてフロアに落としたりするコトでできるものであります。また、人目にはつきませんがボディ裏面に、ズボンのベルトのバックルで凹み傷がつくコトも自然に起こります。
一方、人為的かつ意図的に行われない限り、ストラトキャスターのレリックモデルのようにピックガード付近を縁取るように塗装が剥げるような傷がつくコトなど起こり得ないのです。でも、実にクールに映える。
打痕をまんべんなく、かつ均一的にならないように再現する。また、塗装の剥がれもちょっとしたものから木肌が露出するほどハードなものまで適度に再現する。いずれも加工技術だけではなく、視覚的にクールに映えるための美的センスも必要なのです。
ブリッジ取り付けの難しさと弦のネック落ち問題について
ブリッジ取り付け加工は、ストラトキャスターモデルの最重要ポイント
ギブソン系モデルは、すべてブリッジの取り付けに必要な穴あけ加工がなされています。そのため、サンドペーパーでバリを取ったり穴を広げたりするだけの加工で済みます。ところが、フェンダー系モデルは自分でブリッジの取り付け位置を決めなければなりません。
ブリッジの取り付けが難しいのは、ペグからナットを経由して張られた弦がネック上を均等に調整されているか左右のズレを修正するだけではなく、前後にも調整しなければならない点であります。というのも、ナットからブリッジまでの距離は決まっているからです。
ネックの長さ(すなわちスケール)には、一般的にレギュラー・ミディアム・ショートの3種類があります。ちなみにフェンダー系はレギュラースケール、12フレットからブリッジまで324ミリ、ギブソン系はミディアムスケールで314ミリです。
弦をまっすぐ張りつつ、324ミリになるよう定規で計りながら(1弦を基準に計測)、まだ固定されていないブリッジの位置を微妙に動かしながら取り付ける位置を決める。しかも、ピックアップ上に弦が合うよう、ピックガードの位置も同時に合わせなければならない。
前後の距離はブリッジサドル調整で多少の修正が利きますが、左右のズレはどうにもなりません。次に紹介する方法で修正できなければ再加工しかありません。ブリッジを取り外し、いちど開けた6つのネジ穴をすべて塞いで再加工を施す必要が出てきてしまいます。
ブリッジが左右いずれかにズレていないのであれば、ネックが傾いている可能性アリ
完成したギターを演奏している中で、押さえた弦をチョーキングしたりスライドさせたりすると、ツルリとフレットから滑り落ちるコトがあります。いわゆる「弦落ち」という現象で、弦がネックから左右いずれかにズレているコトで起こります。
そのデザインは多種多様ですが、エレキギターの指板には音程を知らせるポジションマークというインレイが埋め込まれています。フェンダー系は丸いデザインが埋め込まれており、それを基準に弦のズレを確認すればイイのです。
つまり、ポジションマークが3弦と4弦の間にちょうど収まっていればズレていないというコトであります。ところが僕の場合、3本目のストラトキャスターモデルで1弦側にズレていたのです。よく目を凝らしてネックを確認すると、弦も心なしか斜めに張られている。
どうやらブリッジの取り付け位置が1弦側に偏っているらしいと気付いた次第でありまして、定規で1弦と6弦の22フレットを計ってみると、1弦側に2ミリほど偏っているコトが判明。
ネックの傾きが軽度の場合は「力技」で修正するコトが可能
そこでネット検索でブリッジのセンターズレ問題について調べてみると、ブリッジの位置がズレているのではなく、ネックがボディに水平に取り付けられていないコトで起こっている可能性があるコトが判りました。
つまり今回の場合でいいますと、ネックが6弦側に傾いている可能性があるのです。そして、傾きがある場合は、まず弦のテンションを緩め、ネックジョイント部のネジ4本を少し緩めてから力でネックを1弦側に矯正し、ネジを締め直すコトで修正できると知りました。
そして実際に上記の矯正を試してみたところ、見事に修復。ピッタリ3弦と4弦の間にポジションマークが収まり、弾いていても弦落ちするコトがなくなりました。
なお、この修正方法が有効なのはフェンダー系ギターに採用されているボルトオンネックのみです。ボディとネックを接着して固定するセットネックでは力技を使えません。
また、力技で修正する際はジョイント部を破損しないよう注意し(ネックポケットにヒビが入るおそれ)、少しずつ力を加減しながら、いちどに修正しようとせず数回にわたって行うよう心がけるコトがポイントです。
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