なぜ、ストラトキャスターがこれほど愛されるのか

なぜ、ストラトキャスターがこれほど愛されるのか

結局、最後に辿り着くのがストラトキャスター~その理由に迫る

エレキギターを弾くようになってから30年が過ぎ、その間に所有してきただけでも10本以上、楽器店や友人のギターを加えれば、それをはるかに超えるエレキギターに触れてきました。

ここでエレキギターにまつわるナゾナゾを1つ。発売されて以来、世界中のギタリストに愛され、亜流やクローンを含めたら、世界で最も売れているエレキギターは何でしょう?

答えはフェンダーのストラトキャスターです。「いやいやレスポールだろ?」という声もあるかも知れませんが、どの年代のギタリストにも好んで愛用され、どんなジャンルだろうがスンナリ馴染んでしまう万能性と懐の深さはレスポールを超えるものであります。

当ブログの趣味のカテゴリでも時おり登場するストラトキャスターですが、その構造や機能などについてはすでに触れてきたので、今回はなぜこれほど世の中にストラトキャスター使いがあふれているのかという点について考察してみたいと思います。

なお、「ストラトキャスターって何?」という初心者の方につきましては、過去のブログで詳しく綴っていますので、基礎知識をふまえた上で続きを読むとさらに判りやすいと思います。

過去ブログ:エレキギター「はじめての1本」を選ぶなら→コチラ

過去ブログ:テレキャスターvsストラトキャスター→コチラ

 

とにかく何をやっても馴染んでしまうストラトの懐の深さ

ストラトキャスターの七不思議ではないですが、ロック・ポップス・ジャズ・ヒップホップ等々、とにかくどんなジャンルであろうがストラト使いは必ずいます。ストラトキャスターが使われないジャンルは、歪みが激しすぎてシングルコイルが不向きなメタルくらいでしょうか。

あらゆるジャンルで使える万能選手なのだから、さぞや高精度・高品質・高音質の三拍子が揃った奇跡のギターのように思われるかも知れませんが、実態は真逆です。それらに高額という四拍子が揃っているのは、むしろギブソンのレスポールの方であります。

所有したコトはありませんが、僕もエレキギター弾きの端くれ。本家ブランドの双璧をなす2つのモデルを試奏したコトがあります。その際の体験談を申し上げますと、「アレ?」と拍子抜けしたのがストラトキャスターでした。

フェンダーのストラトキャスター(フェンダー以外の同型モデルは「ストラトキャスターモデル」あるいは「ストラトキャスターのコピーモデル」と別物扱いとなります)も価格帯によってモノが違うというコトもあるでしょう。

では、僕がたまたま試奏したモデルがハズレだったのでしょうか? たぶんそれは違うと思います。では、フェンダーというブランドにお金を払っているのか? それも違う。では「欠点も魅力のうち」といった判官びいきでストラトキャスターが選ばれているのか? それも違う。

その答えは実に主観的なものでありますが、僕が思うのはストラトキャスターだからこそ出せる音、ストラトキャスターだからこそ可能にする演奏を具現化する不完全さと不安定さを残したままの構造にこそ集約されているのだと。

 

ストラトの魅力は、不完全さと不安定さを内包した汎用性

メーカーが違うからといえばそれまでの話ですが、ストラトキャスターと比較されるレスポールは、同じエレキギターでありながら基本理念が全く違います。

ボディとネックを高精度の加工技術によって組み合わせて接着するセットネック構造、メイプルとマホガニーを張り合わせたボディ本体、ボディトップのボディのエッジに施されたバインディング加工。構造が複雑になれば完成まで時間がかかるし人件費もかかる。

一方で、レスポールに遅れて開発されたストラトキャスターは低コストで大量生産できるよう、簡素化と合理化を徹底。ボディとネックを木ネジ4本で固定するボルトオン構造、張り合わせた板を切り抜いたバインディング加工なしの単純仕上げ。

また、電気系パーツの取り付け方法も同様の理念で設計されています。レスポールはボディを加工してピックアップやスイッチ類を直接取り付けた複雑な構造ですが、ストラトキャスターはピックアップとスイッチ類をピックガードに一元化した単純な構造。

こうした理念の違いによるところが大きいのでしょうが、安定の高音質を手軽に出せるレスポールに比べて、ストラトキャスターの調整は本当に難しい。歪ませ過ぎれば即ノイズを拾うし、特性を把握した上でセッティングしないとチープな音しか出ない。

ところが、セッティングがバッチリ決まり、特性を把握した上で演奏するとトンデモナイ音が出る。「ストラトってこんなイイ音で鳴るんだっけ!?」と、他でもないギタリスト自身が驚くのです。僕もそんな驚きの体験をした1人でした。

20代の頃は使いこなすコトができず見向きもしていませんでしたが、上記の体験を経てからは、すっかりストラトキャスターの虜であります。

安定しているというコトは、どんなセッティングをしても無難である一方、どんなセッティングをしてもそれ以上の音が出ないというコトでもあります。

馬で喩えれば、レスポールはいつも安心感バツグンのサラブレッド。一方、ストラトキャスターは不完全さと不安定さを内包した扱いづらさに悩まされるが、いったんツボにハマれば想像を絶する凄まじいポテンシャルを発揮するマスタング。

 

ストラトは使いこなすギタリスト次第、そして使うギタリストを選ばない

ストラトキャスターのリアピックアップに隣接するヴォリュームノブは、ヴォリューム奏法に向いている一方で、慣れながら意識しないと、ピッキングのたびにヴォリュームが小指に接触して0に向かって動いてしまう扱いづらさがあります。

エレキギターにとっての最大の革新と呼ばれるシンクロナイズド・トレモロブリッジは「この辺りが限界」というアーミングの力加減とコツを体得しないと、アーミングを使うたびにチューニング狂いを誘発します。

構造上、ハムバッカーよりもノイズを拾いやすいシングルコイルは高音域の切れ味バツグンの極上サウンドを楽しむコトができる反面、歪み系のサウンドメイクには非常にナーバスなセッティングが求められます。

このように、本当にちょっとしたコトでサウンドもプレイも大きく左右されてしまうのがストラトキャスターです。しかしながら、些細なコトが大きく影響に出やすいという特性は、ギタリストのプレイスタイルやサウンドメイクの違いがハッキリ体現できるというコトでもあります。

つまり、見た目はどれも同じでありながら、繰り出されるギターサウンドは千差万別、ギタリストの個性が強烈であればあるほど、ストラトキャスターもまた個性的な唯一無二の存在になる。

ある種の不完全さと不安定さを内包しつつ、使うギタリスト次第でありながら、使うギタリストを選ばない。それこそが、ストラトキャスターというモデルが世界中で愛されている最大の理由なのではないかと考えています。