冷静に、障害福祉サービス利用者からのクレームに対応するために

冷静に、障害福祉サービス利用者からのクレームに対応するために

なぜクレームが? その振り返りと検証が必要なのだが…

福祉業界に限った話ではないと思いますが、何らかのカタチでサービス業に携わる限りにおいて、顧客からのクレームが寄せられる可能性をゼロにするコトはできません。かくいう僕も相談支援の経験上、相談者や支援者からクレームを寄せられたコトがあります。

どんなに誠心誠意を込めて対応しても、相手側の逆鱗に触れてしまうコトがありますし、僕自身の至らなさによってトラブルが起こったコトもあります。後者については謝罪とその後の対応で挽回させていだだくしかありません。

ところが前者の場合は、相談者の思い込みや誤解によるものなのか、独特の先入観によるマイナス評価をもらってしまったのか定かでない理由によるものが多くあります。

では、こちらに一切の非がないにもかかわらず、なぜクレームを寄せられるコトになってしまったのか? その検証だけは絶対に欠かせないものであります。

不要な謝罪をする必要はありませんし、クレームを寄せた相手を非難する必要もありません。ただ、そのような状況を誘発したと思われる原因の追究と、そのために可能な検証を行うコトによって、再発防止と今後の改善策が見いだせるハズなのです。

 

時には、どう考えても有り得ないようなクレームが寄せられる

数年前の話ですが、僕が担当する相談者から電話相談があり、利用している障害福祉サービス提供事業所のスタッフの対応が納得いかないとクレームが寄せられたコトがありました。詳細については控えさせていただきますが、絶対に有り得ない内容でした。

「絶対に有り得ない」というのは言葉の綾でして、「ホントにそんな対応を? なんて非常識な」といった意味ではなく、「支援者がそのような言動をするハズがない」という意味での有り得ない内容。虚偽の告発あるいは過度の誤解としか考えられないものであります。

当然、僕の脳裏をよぎったのは後者であり、かといって相談者に「本当ですか?」と疑いをかけるような返答はできません。まずはくだんの事業所に確認し、その結果を電話で返答するというコトで連絡してみたのでした。ところが…。

 

クレームを受けた側が感情的に~充分な検証ができないケースも

くだんの事業所は僕ら障害者ケアマネからの高い評価を受けているところの1つであり、スタッフ一同、本当に誠心誠意でサービス提供に取り組んでいる事業所でもありました。僕自身、当時から現在に至るまで、変わらずお世話になっています。

ところが、その時だけは想定外の展開となりました。普段は温厚そのものの管理者がすっかり激怒してしまい、話し合いにすらならなかったのであります。

もっとも、その管理者がご立腹なのも判る話でした。その相談者はクレームが多く、「○○さんでなければイヤです」と特定の支援者しか受け入れてもらえず、これまでに何度も担当を変えてきた経緯があったのです。

その管理者いわく、「そんなクレームを受けるような支援は絶対にしていない」「これまで何度も担当を変えて、今回も本人の要望に応じたスタッフを担当させている」「気に入らないといわれても変更できるスタッフはもういない」と。

当時を振り返り、僕の伝え方も拙かったのであろうと反省していますが、別に僕もそのような対応をしているとは夢にも思っておりませんし、クレームが寄せられた原因についての振り返りと検証が必要ではないかと伝えたところ、さらに激情。

最終的には、僕へクレームの連絡をした利用者にこそ非がある、考え方を改めてもらわないと困るとの話になってしまいました。このまま続けても事態は悪化の一途を辿るのみと判断し、その後は担当のサービス提供責任者と協議するコトに。

 

唯一の解決策は全員から話を聞き、支援者チームで検証するコト

その相談者が信頼を寄せているスタッフとそうでないスタッフ、両者の間には必ず何らかの違いがあるハズであります。虚偽と思われても仕方ないクレームが出てくるのには、本人にしか判らない理由が必ずあるのです。

それが理不尽なものであろうが、あまりにも独特すぎて常識の範疇を超えたものであろうが、理由さえ判明すれば、その後は最善の対応を検討するコトができます。

もし、クレームが寄せられた理由が理不尽なものであれば、本人に考えを改めてもらうかサービス利用を止めてもらうしかありません。独特すぎて常識の範疇を超えたものであれば、独自の解釈に合致したアプローチで理解を得るコトになります。

最悪なのは、上記のケースのように支援者が頭にカッと血が昇ってしまい、「うちはなんにも悪くない、アイツが悪い」と思考停止し、他罰主義を押し通そうとするコトであります。

僕も相談支援の経験上、さまざまな相談に対応してきましたが、こうしたトラブルを解決するには「クレームを寄せた側の話だけで判断せず、クレームを寄せられた側の話もしっかり聞く」というコトが最も重要であります。

過去、知的障害がある男性相談者から「親に家から追い出された」との訴えがありました。

これが本人の話どおりであれば立派な虐待なのですが、僕が自宅に連絡を入れて話を聞いたところ、「面白くないことがあった息子が癇癪を起こし、そのまま家を飛び出していなくなった。捜索願を出すところだった」との返答が。

親御さんはそのように話しているけれど、本当はどうなのか? 今から親御さんが迎えに来るけど、本当は何があったのか? あらためて訊き直したところ、騒動の真相は親の話どおりでした。

類似したトラブルはいくらでも起こり得ます。支援者から虐待されたとか、他の利用者からお金を盗まれたといった訴えもありました。

当ブログで何度か登場したガー子さんも虚偽クレームの常習者で、よく僕充てに「財布から千円札が盗まれた! スタッフに話したら勘違いだって言われた!」と怒りの電話がありました。当時、通所していた事業所に聞いてみると「なるほど」と真相が判明。

千円札が盗まれたというのは、自分が買物に使ったのを忘れて他人のせいにしていただけであり、盗まれたと思ったその日、高額なお茶を数千円で購入したコトが判明。単に本人が思っていたより1枚多く千円札を使っていたという勘違いによるものでした。

また、ガー子さんは同様の騒動をよく起こしておりました。若かりし頃に水商売をやっていた名残なのか、派手で高価なバッグを福祉就労所に持参。そして、そのバッグを肌身離さずに持ち歩いていたのです。

休憩で喫煙室に行き、他の利用者と談笑しているうちにバッグを置き忘れ、後で「バッグがない、誰かに取られた!」と大騒ぎ。「ガー子さん。さっき喫煙室に置きっぱなしにしたんじゃない?」と指摘されて無事に発見。

 

支援者が常に意識すべきは「事実が真実だとは限らない」

冒頭で某事業所へ再三のクレームを寄せた相談者、親に家から追い出されたと主張する男性相談者、金品を盗まれたと主張するガー子さん。

これらのケースから、われわれ障害者ケアマネは何を教訓としなければならないのでしょうか? それは、クレームを寄せる側にとっての事実が必ずしも真実とは限らないというコトであります。

ただし、実際に虐待や犯罪行為が行われている可能性もゼロではありません。先入観で「どうせ、またいつものウソだろ」と相談者の訴えを軽んじてはいけないのです。

だからこそ、クレームが寄せられた際は、まずクレームに関係するすべてのヒトたちの話を聞き、その結果をもとに客観的事実(すなわち真実)を明確化し、その上で具体的な解決に向けた協議をしなければなりません。それが冒頭で綴った「検証」そのものであります。

3人のケースに共通していたのは、悪意をもって支援者や他の利用者を陥れようとする意図はないというコトであります。つまり、彼ら彼女らはみな例外なく、「真実でないコト」を「事実」だと思い込んでいたのです。

僕のその側に立たされた経験がありますから、クレームを寄せられるコトに対する理不尽な気持ち、納得のいかなさや腹立たしさは充分に理解できます。

だからこそ、感情的になった時や腹の虫が収まらない時は、「事実は真実だとは限らない」という原則を思い出すよう意識するようにしています。

障害者ケアマネたるもの、「できる限り冷静さを保ちながら解決に向けて対応したい」と自戒していかなければ、誰かを悪者にして話が終わってしまいますので。