グラント・グリーンの魅力に迫る~「静寂」を奏でるコトができる至高のジャズギタリスト

グラント・グリーンの魅力に迫る~「静寂」を奏でるコトができる至高のジャズギタリスト

グラント・グリーンとの出会い~ジャズの魅力を教えてくれたギタリスト

当ブログで何度も取り上げているように、僕は現在のバント仲間からメタラーの異名を取るほど、生粋のハードロック大好き人間です。若い頃のようにヴォリューム全開で聴くコトはないものの、好みの音楽ジャンルは10代の頃からほとんど不変であります。

コピーしたのは主にメタルかハードロック(当時は全然弾けませんでしたが)。洋の東西を問わず、80年代から90年代は速弾き全盛の華やかなりし時代だったのですが、その頃に触れた超絶技巧の数々。それがギタリストとしての僕のルーツであります。

妙に腕利きが揃っているわがバンドでどうにかやっていけるのも、ハードロックが好きで速弾きの練習ばかりやっていた過去の蓄積によるものと自己分析しています。

そんな僕ですので、オーヴァードライヴやディストーションが一切かかっていないエレキギターに興味を抱くコトはまったくありませんでした。あの1枚のアルバムに出会うまでは。

 

最初で最後かも知れない衝撃のアルバム「IDOL MOMENTS」

僕が若かりし頃、田舎暮らしで身分不相応な物件でハイエンドオーディオにハマっていたのは過去ブログで綴ったコトがありましたが、同じく若かりし頃にオーディオに凝っていた(らしい)父親の影響によるものでした。

両親が一軒家を建てたのは僕が25歳の頃でしたが、いつの間にかタンノイ製の大型スピーカーを構え、大工さんに作ってもらったらしい木製オーディオラックには、ラックスマン製のプリメインアンプとティアック製のCDプレーヤーが。

そして、僕とはまったく異なる好みのジャンルで揃えられたCDから適当に選んではプレーヤーに入れて聴くというのが帰省の楽しみというか時間つぶしでした。

そこで出会ったのがグラント・グリーンのアルバム「IDOL MOMENTS」だったのです。

スローテンポで奏でる静寂のフレーズ。「えっ、何コレ? すげえイイんだけど」

なぜ惹きつけられたのかは判らない。でも、思わず一目惚れしてしまった好みの子にビビッときたかのような、理論的には説明できない魅力にすっかり取り込まれてしまったのでした。

持ち込んだのは妹だったようで、わが妹ながら良きセンスだと感心。何度も聴いているうちに心底惚れ込んでしてしまい、「悪い、借りるわ」と自宅へ。以来、そのまま僕のコレクションに。

 

グラント・グリーンというジャズギタリストの魅力について

グラント・グリーンは60年代を代表するジャズギタリストですが、巨頭ウェス・モンゴメリーを筆頭にした他のジャズギタリストとは一線を画する存在だったと思います。ジャズが好きではない僕が惚れ込んでしまったのだから、異彩を放つ存在だったのかも知れません。

グラント・グリーンの独自性(他のジャズギタリストとの違い)を列挙すると、主に以下のような特徴が浮かび上がってきます。

最初から最後まで単音のみで弾きこなす、丸みを帯びたピッキング

ジャズギタリストには指弾き派とピック派がいますが、グラント・グリーンは後者です。そして、どの曲であろうとも一貫しているのが丸みを帯びたギターサウンドであります。その秘密は右手のピッキングにあるのではないかと思われます。

モノクロ映像で彼のプレイを見ていると、1音1音、弦をそっと撫でるかのように優しいアタッチメントでピックを弾く様子が見られます。そしてコード弾きは一切しない。終始、単音だけを駆使するのがグラント・グリーンの代表的なスタイルです。

このピッキングこそがギタリストとしてのグラント・グリーンの最大の魅力であり、激しい曲でも耳障りにならず、寛ぎと安らぎすら感じさせるほどのまろやかさを演出します。

特筆すべきは、グラント・グリーンは静寂を奏でるコトができる数少ないジャズギタリストであるというコトであります。僕が特に好きな「IDOL MOMENTS」は、彼の特筆すべき魅力が最大限に詰められた珠玉の名曲であります。

決して技巧に走るコトなく、緩急を織り交ぜたプレイスタイル

ウェス・モンゴメリーが革命的な技巧を駆使した「動のジャズギタリスト」とするなら、グラント・グリーンは終始トラディショナルかつオーソドックスな弾き方に徹した「静のジャズギタリスト」であります。以上、僕の私見ですが。

では、とりたて、奇抜なプレイを一切しないグラント・グリーンの音楽的な魅力がどこにあるかといいますと、「聴衆の気分を害さないよう最前列から一歩、身を引いたスタンス」を体現した音楽性にあると思っています。

押し付けたりしない。いつでも、そして、いつまでも聴いていられる。

結局、そうした音楽性こそが、僕のように何度でも繰り返し聴くファンを魅了する名曲を生み出すのでしょう。グラント・グリーンの人柄が現れている気がします。

主役と脇役をバランスよくこなし、各パートの個性を尊重する協調性

グラント・グリーンの最大の魅力は、技巧派ギタリストにありがちな「俺が俺が」的な鬱陶しさがないコトであります。ライヴアルバムでは、彼自身の見せ場をキッチリ魅せるのはもちろん、曲に応じてバックバンドの見せ場もキッチリ演出しています。

エレキギターはアンサンブルでこそ活かせる楽器であります。アコースティックギターのように、「ギター1本ですべてOK!」のようなオーケストラ的な役割をこなすには向いていません。弾き語りもまた同様です。

つまり、たとえジャズであろうが、エレキギターの役割は他のパートとの協調あってこそ果たせるものであります。グラント・グリーンはそのあたりの本質をしっかりわきまえており、各パートの個性や魅力を引き立てながら音楽を組み立てているのであります。

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今回はグラント・グリーンをご紹介しましたが、静寂を奏でる至高のジャズギタリストは他にも、ケニー・バレルやバーニー・ケッセルといった素晴らしいプレーヤーがいます。

みな故人ではありますが、彼らが残した名作アルバムやライヴ映像の数々は永遠であります。