素朴な疑問、サービス等利用計画は誰のためのモノか?

素朴な疑問、サービス等利用計画は誰のためのモノか?

サービス等利用計画を読んでもらう相手は本人だけではない

サービス等利用計画(以下「計画」とします)は、相談者は当然ですが、行政の障害福祉担当課や障害福祉サービス提供事業所からの理解も得なければなりません。なぜなら、計画が障害福祉サービスにおけるすべての基本指針となるからです。

まずは本人からの理解を得る。次に行政の理解を得る。最後に障害福祉サービス提供事業所からの理解を得る。これら3つのステップを1つずつクリアしていきながら計画成立に辿り着く。これが障害者ケアマネの主たる仕事の1つであります。

別な表現をすれば、本人・行政・事業所の3者に向けたプレゼンが1つでもうまくいかなければ、3つのステップのいずれかで頓挫してしまいます。たとえ無事に支給決定を受けたとしても、サービス担当者会議で事業所にダメ出しを受けたら、これまでの苦労が水の泡に。

そこで重要なのは、本人・行政・事業所の3者が求めるニーズのいずれにも応える計画でなければ成立しないという基本原則をつねに肝に銘じて作成しなければなりません。そのためには、3者のニーズを個別ごとに正確に把握するコトが必要不可欠になります。

それでは、3者がそれぞれの立場で求めているニーズとそれに基づくアプローチの在り方について、事例をもとに綴っていきたいと思います。

 

サービス等利用計画の作成に係る注意事項~本人・行政・事業所別に

合理的配慮のもとで理解と納得を得る~本人に向けて

障害者ケアマネがまず行わなければならないコトは、本人主体の原則に基づいて、本人が納得するサービス等利用計画案(以下「計画案」とします)を作成するコトであります。

行政が支給決定の是非を判断するための計画案ですので、計画成立における最初の関門といえます。しかしながら、こうしたウラ事情は障害者ケアマネの都合であります。表現はよろしくないですが、本人への配慮を求めるべきコトではありません。

そのため本人に向けては、「ヒアリングされた結果がきちんと反映されている」「判りやすく記載されていて100%内容が理解できる」「不愉快になるNGワードが入っていない」といった点が重要になります。

僕は、アセスメント訪問で本人からヒアリングした内容を一字一句もらさず書くというくらい徹底して活字に落とし込むよう心掛けています。計画案の様式は全部で4つありますが、僕が作成する「基本情報」と「現在の生活」は膨大な活字量になります。

そこまで徹底するのは3つの理由があります。1つ目は本人からの信頼関係の構築。「ゼロさん、こんなとこまでキッチリ聞いてたんだ」「確かにそんな話をしましたね」と納得してもらえます。2つ目は行政や事業所への情報提供、3つ目は僕自身の備忘録として。

基本的な考え方は以上のとおりですが、障害特性ごとに計画作成における合理的配慮が加わります。例えば知的障害で文章に苦手意識を持っている相談者に対しては、漢字やアルファベッドにルビを振り、読む負担を軽減するよう文字数を少なめに作成します。

もうひとつ重要なのが、「マイナス的な表現をできる限り使わない」という基本姿勢であります。マイナス的な具体的表記でなければ理解できないという相談者は例外ですが、原則的には、例えば「病状を悪化させない」ではなく「今の健康状態を長く保つ」と言い換えます。

申請する支給量の積算根拠を明確かつ具体化する~行政に向けて

行政が最も意識するのは、計画案を通じて障害者ケアマネが申請する支給量が妥当であるか否かという点です。仮に「本当にこんなに支給量が必要なのか?」と疑念を持たれたなら、その計画案は行政を納得させられるだけの積算根拠に乏しいというコトであります。

その障害者ケアマネが客観的に専門職の目をもって必要だと判断したのですから、僕はその判断が間違っているとは思いません。ですが、行政を納得させられるだけの具体的な説明が足りていないのだろうなとは思います。

こうした場合、二流、三流のケアマネは得てして行政を責めがちになりますが、それは技量不足を露呈しているというもの。特に支給量について限度ギリギリかどうかの算段はつくハズですから、まずは計画案を作成する前にアセスメント訪問の結果をもとに事前相談すべきです。

僕なら、口頭だけで伝えるのではなく、独自に作成したアセスメントシートを持参します。それをもとに、通常の支給限度ギリギリ、あるいは行政としては超過していると判断するかも知れないが、担当ケアマネとして必要な支給量だと伝え、理解を得るための話し合いをします。

なお、僕の場合は、計画案を提出する際、提出義務はありませんが必ずアセスメントシートも添付します。積算根拠として一読いただくコトによって、おこがましいかも知れませんが行政に誤った支給決定をさせないという自負のもとで。

逆の立場になったらどうかというシミュレーションをすれば、以上の流れが然るべきアプローチの1つになります。障害者ケアマネからの申請をもとに判断しなければならない行政サイドにとって、その判断材料となる情報は1つでも多い方が良いに決まっているからです。

現実的に提供可能な計画案を示す~事業所に向けて

さて、計画案を作成して本人から承諾を得て、その計画案をもとに申請した支給量が決定されれば、最後にサービス担当者会議を開催するコトになります。

そこで問題になるのは、僕ら障害者ケアマネはあくまでサービス提供に係る基本方針となる計画を作成するまでが役割であって、その後は障害福祉サービス提供事業所(以下「事業所」とします)に一任しなければならないというコトであります。

つまり、計画案の内容が当該事業所で実際に提供されるサービスの実態と乖離(かけ離れている)したものであっては意味がない。まさに、絵に描いたモチというコトになりかねません。

障害者総合支援法では、サービス担当者会議(以下「担会」とします)を経て承認された計画案をもとに、事業所ごとに個別支援計画を作成し、具体的な支援計画を立ててサービスを提供する流れになります。

このように、法律上では担会が終わった後にアクションを起こすコトになるのですが、実質的にはそれでは不都合が生じます。計画案の作成と同時進行で事業所に打診し、計画案のとおりサービス提供が可能かどうかをヒアリングします。

例えば、居宅介護等(ホームヘルプサービス)で、本人が希望する時間帯が土日の夕方だとします。しかしながら、わがマチでは土日の稼働状況が低めであり、すでに利用している訪問先を優先順に回っている状況にあるため新規訪問が困難なのです。

しかも、夕方の時間帯というのは夕食準備のニーズが非常に高い激戦区でもあります。そのため、事業所に確認もせずに土日の夕方に調理で訪問するという計画案を提示しようものなら「いやいやゼロさん、ウチではとてもムリですから」となります。

このような絵に描いたモチ的な計画案にならないよう、あらかじめ事業所に本人の希望を打診し、それがムリであれば妥協案はないか、実現可能な計画案を事前協議するのです。

このようなプロセスを経て、「平日の夕方であれば訪問可能」「土曜はムリだけど日曜の13時~15時の間であれば訪問可能」といった返答を得る。そして本人に希望どおりの訪問は困難という事情を説明し、妥協案を提示して承諾を得る。

訪問系サービスに限った話ではありませんが、事業所の規模によって稼働状況は大きく異なります。そのため、サービス提供を依頼する事業所ごとの事情を勘案し、行政と同じく事前協議をしっかり行うコトによって実現可能な計画案を作成するのです。

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このように、本人だけではなく、行政担当者や障害福祉サービス提供事業所が何を求めているかについても把握し、理解を得られなければサービス等利用計画は成立しないという話でした。

ここまで読んでいただいて、「だったら、サービス等利用計画って一体誰のモノ?」という疑問が浮かぶヒトもいるかと思います。その答えは単純明快。サービス等利用計画は誰のモノでもない、相談者そのヒトのモノです。

しかしながら、「サービス等利用計画は誰のために作るモノ?」と問われたなら、僕は次のとおり即答するコトでしょう。

「サービス等利用計画は、みんなのために作るモノです」と。