エレアコ~1本持っていて決して損はない「もうひとつのエレキギター」

エレアコ~1本持っていて決して損はない「もうひとつのエレキギター」

ライヴの定番、エレアコ

エレキギターの音色がエフェクターを駆使した極彩色とするならば、単色の濃淡のみで情感豊かな音色を奏でるのが「エレアコ」ことエレクトリック・アコースティックギターです。

エレアコは、いわゆるフォークギターに代表されるアコースティックギターにピックアップとプリアンプを内蔵したエレキギターの血族の1つです。本体の生音だけでも鳴らせますが、ステージでノイズレスな音量を確保できるのが最大のメリットです。

エレアコには通常のエレキギターのように弦振動をダイレクトに拾うピックアップではなく、弦振動→ボディトップ振動→ブリッジ振動と広がってゆく振動をブリッジ裏側で拾うピエゾ端子(注射後に貼りつける医療用パッチに似ています)で間接的に拾います。

弦振動を電気信号に変えてギターアンプに送るのがピックアップの役割なのですが、ピエゾ端子の電圧は非常に微弱なため、ギターアンプに送る前に増幅する必要があります。その役割を担うのがギター本体に内蔵されたプリアンプです。なお、電源は9Ⅴ型乾電池が定番です。

 

なぜ、エレアコがライヴの定番なのか

マイクやピックアップを一切使わず、生音に肉声のみで弾き語りをする場合はエレアコでなくとも問題ないのですが、バンドで鳴らしたり、ステージでギターヴォーカルがマイクを通して歌ったりする場合は基本的にエレアコが使用されます。

マイクをギターに近づけて集音するコトも技術的にできなくはないのですが、当然、他のパートの音も拾ってしまうのでノイズも同時に拾ってしまいます。そのため、ギターアンプ直結で鳴らせるエレアコの方が音量と音質、いずれにおいても優れているからです。

エレアコにはプリアンプが内蔵され、純粋なギター本体の音色を忠実にギターアンプで増幅させるコトができるだけでなく、たいていのプリアンプにはトーンコントロールが装備されているため、低音・中音・高音のバランスを自在に調整するコトも可能です。

また、エレアコの基本的な仕組みはエレキギターと同じですので、エフェクターも使用できます。エレアコ専用モデルもありますが、空間系(ディレイなど)やモジュレーション系(コーラスなど)のエフェクターであれば、エレキギターのものと共有できます。

ギター本来の生音を楽しみたいという趣旨とは反しますが、そのステージごとの音響特性、ギターアンプとの相性、そしてヴォーカルや各パートとのトータルバランスを考慮したサウンドメイクができます。これらのメリットが、圧倒的にエレアコが多用される理由です。

もうひとつ蛇足まで。エレアコの長所でもあり短所なのですが、アコースティックギターに比べて生音が小さいという特性があります。アンプを通さないで鳴らすには不向きですが、自宅練習では音が大きすぎず、近所迷惑になりづらいというメリットになります。

 

エレアコは、弾き語りにもソロにもバンドにも使える万能選手

僕は当ブログで何度も取り扱っているように、エレキギターをメインで使用しています。ここ数年、エレアコは持っていませんが、大学時代から最初の転職をするまでの10年ほど、エレアコで弾き語りを中心に楽しんでいました。

もちろん同じ時期にエレキギターも弾いていましたが、両者の使用頻度は比較にならないほどでした。ほとんど義務と化したバンド活動がなければ、今でもエレアコ片手に、どこかの福祉施設のボランティアでお気に入りの一曲を弾き語っていたかも知れません。

僕が長期間にわたってエレアコを愛用していたのはもちろん理由がありまして、ディストーションで歪ませたサウンド以外であれば何でもこなせる万能選手だったからです。独りギタリストを貫くのであれば、エレアコほど最適な相棒はいません。

弾き語りに使えるのは当然ですし、ギター1本のインストゥルメンタルで聴かせるコトもできます。僕の場合、映画「レオン」のエンディング、スティングの「SHAPE OF MY HEART」や「FRAGILE」といったお気に入りのリフを耳コピで楽しんでいました。

 

エレキギターからエレアコに持ち換えた際の注意点

同じ遺伝子を共有する血族とはいえ、エレキギターとエレアコには似て非なる部分が多数あります。初めてエレアコを購入する際に配慮すべきポイントや長年にわたって使い続けるためのポイント、ライヴで使い分ける際の注意点を以下にまとめていきます。

エレアコに張る弦は、できるだけ細めのものを使う

エレキギターとエレアコ、弾き心地で最も違和感を覚えるのはネックの太さでもボディの大きさでもなく、指板を押さえた時の弦の硬さです。エレアコはとにかく弦が硬いのです。

弦が硬いのは弦の種類が違うからで、弦の太さを表す数値で比較すると、エレキギターの1弦は090~011が一般的ですが、エレアコは010~013となります。僕は細めの090を使っていますが、そうなるとエレアコの1弦がエレキギターの2弦よりも太くなります。

弦はその太さや硬さから、太い順にハード、ミディアム、ライトなどと呼ばれますが、エレアコとエレキギターを使い分けるならエレキギターに近い弦を張りましょう。特に同じステージで両方を使う場合は迷わずエレアコに010を使うべきです。

細くなると音も貧弱になるという批判もありまして、生粋のアコギ使いは細い弦を使わないという話も聞きますが、多少のサウンドキャラクターの違いなどプリアンプのセッティングでどうにでもできます。むしろ確実に弾きこなせるコトを優先しましょう。

握った際、エレキギターの感触に近いネックを選ぶ

僕が過去に使ったコトがあるエレアコはアメリカ製のオベーション(葉っぱをあしらったデザインでボディ上部に複数のホールが空いているのがトレードマーク)、国産のヤイリです。

オベーションはボディバックがプラスティック製であるコト、亀の甲羅のようなフォルムであるという特徴があります。また、ボディトップもカーボンで構成されたモデルもあります。

このような特異なボディ形状でしたが、ボディエッジがスッキリしており、通常のエレアコのように脇が大きく開いてしまうコトがなく、ボディトップが少し上向きになるため人体の構造に合致し、とても弾きやすいのが特徴です。

僕が買ったオベーションは「エリート」と呼ばれるモデルの1つで、ネックがVシェイプという、これまた変わった造形をしていました。通常のネックはDシェイプと呼ばれるカマボコ型ですので、握ればすぐにその違和感に気づきます。

ところが、これがまたすぐに手に馴染み、そしてフシギに弾きやすい。ラウドネスの高崎晃さんもVシェイプを愛用しているとのコトで、確かにコレなら速弾きもできそうだと思わせるほどの弾きやすさでした。

もちろんⅤシェイプのエレアコはごく少数ですので、あえて選ぶべきとは申し上げません。唯一、「握った際にエレキギターと違和感がないと思えるモデルを選ぶべき」というポイントを押さえておけば問題ありません。

もっとも、マーチンなどフォークギターブランドのモデルに比べれば、エレアコはエレキギターと大きくかけ離れたネック構造をしていないので、それほど神経質になる必要はありません。

ちなみにマーチンは丸太を輪切りにしたようなグリップで、僕の小さな手には不向きでした。

湿度管理に神経質にならないで済む国産モデルを選ぶ

エレアコに限らず、アコースティックギターとは弦振動をボディトップで増幅させ、ボディ内部の振動をホールから音を放出する構造になっています。そのため、なるべく弦振動を妨げないよう、塗装は極力薄く、あるいは塗装せずに製造されます。

これはギター中心部に開けられた穴から除けば一目瞭然でして、ボディ内部は一切塗装がなされておりません。エレアコもまた塗装されているのはボディ表面のみです。

一方、通常のエレキギターはソリッドボディ(単板または合板による一枚板)で、弦振動をボディ内部で増幅させる構造ではなく、弦振動そのものを直接ピックアップで拾うという方がニュアンス的に正しいでしょう。

両者の生音増幅の違いは以上のとおりですが、エレアコにはエレキギターで配慮する必要がない、「ある致命的な欠点」を抱えています。構造上ボディ裏側の木が外気に露出しているため、非常に湿度変化に弱いのです。

皆さんも楽器店でギター展示スペースを覗いたコトが一度はあると思いますが、どのお店でも共通しているのが、エレキギター展示スペースとエレアコなどアコースティックギター展示スペースが分かれているコトです。

日本一のギター街、御茶ノ水駅周辺ではビル1棟がすべてギター販売スペースという大型店が複数ありますが、こうした専門店になれば階そのものが分かれています。例えばエレキギターは2階、アコースティックギターは3階というように。

その理由は両者における湿度管理の違いによるものでありまして、特にアコースティックギターの展示スペースには「これでもか!」というほど加湿器が多数配置されているものです。湿度が低くなりすぎると、乾燥によって収縮し、ボディが割れるなどのダメージが発生するからです。

実際、僕がオベーションを手放した理由は他社への譲渡や中古下取りでなく廃棄でした。ボディが中心からまっぷたつに割れてしまったのです。修理もできたのですが、多額の費用がかかるため、泣く泣く諦めました。

このようなトラブルに見舞われないためには徹底した湿度管理によるボディ保護しかないのですが、それ以上に手軽な保管法があります。それは「日本国内で採取された木材で製造されたギターを選ぶ」という方法です。

高温多湿な外国で伐採された木と、湿潤と乾燥いずれも訪れる四季折々の日本の気候で育った木、どちらが日本の空調事情に合致しているか? あえて申し上げる必要などないでしょう。

実際、次に購入したヤイリはオベーション以上に適当な管理をしていたのですが、ボディに亀裂が入る兆候すらなく、諸事情により手放すまでの間、何ひとつトラブルを起こすコトなく僕の相棒を務めてくれました。

よほどの思い入れがあるなら外国製エレアコを選んでも良いと思いますが(欲しいと思った1本を買うのが最良のシアワセなのは僕も重々承知しておりますので)、耐久性の高さや神経質な管理をしなくて済む手軽さを求めるなら国産性を選びましょう。

僕のように、高価な1本を無知と無精がゆえに破損してしまう泣きをみないためにも。