エレキギターのサウンドメイクで最も「使える」サウンド、クランチ

エレキギターのサウンドメイクで最も「使える」サウンド、クランチ

運命のイタズラか必然か、同業者を中心に結成されたバンドに加入するコトになって5年の歳月が流れ、その間、コピーバンドとして、ライヴで演奏していないものまで含めると相当な数の楽曲をこなしてきました。

あらためて自己紹介しますと、僕のパートはエレキギターです。以前はヴォーカルやエレアコなども担当しましたが、エフェクターを駆使しての煌びやかなサウンドメイクに苦心した時間が圧倒的多数を占めます。

そして振り返ってみると、ジャンルを問わずさまざまなコピー曲をこなしていく中で、理想の音がなかなか出ないと苦心しつつ、結局はコレに行き着くという「あるギターサウンド」に集約されてしまうコトに気づいた次第であります。

それこそが今回のテーマ、どんなコピーにも「使える」サウンド、クランチであります。

 

クランチさえあれば、ジャズ以外の曲ならすべて成立してしまう

クランチを使わない「ロビンソン」のアルペジオなど考えられない

Spitzの名が世に知れ渡るキッカケとなった名曲「ロビンソン」は、僕らのバンドで結成当初から現在に至るまでライヴで演奏している、本当に思い入れの深い1曲であります。

ギタリスト三輪テツヤさんの切なくも印象的なアルペジオを存分に堪能できる「ロビンソン」ですが、コピーする前はクリーントーンで演奏していると思っていました。ところが、実際に演奏してみると、クリーントーンではなく軽めのクランチをかけているコトが判明。

アルバムのサウンドを注意深く聴いてみると判るのですが、コーラスやディレイなど空間系エフェクトを効果的に使いつつ、歪み系エフェクターかチューブ(真空管)アンプのゲインか不明ですが、明らかにクランチがかかっています。

解説が遅れましたが、クランチとはエレキギターの歪みの名称のひとつです。歪みの強さによって、激しい歪みから順に、ディストーション(またはメタル)→オーヴァードライヴ→クランチなどと表現されます。

音量に比例して自然に歪み成分を含んだ極上のクランチサウンドになるチューブアンプか、ゲイン(歪み)が抑えられた歪み系エフェクターによるクランチを基本とし、グシャリと潰れない程度に空間系エフェクトをかけるのが「ロビンソン」の正しいサウンドメイクです。

実はとても扱いやすいクランチ、そして扱いづらいクリーントーン

ではなぜ僕がここまでクランチサウンド使いをオススメするのかというと、特にソリッドステート(トランジスタ)アンプのクリーントーンはクセが強く、扱いづらいサウンドキャラクターだからです。「ロビンソン」の繊細かつ洗練されたアルペジオの音にならないのです。

チューブアンプであれば話は別ですが、ソリッドステートアンプを使う場合、そのクリーントーンは非常に硬質かつ無機質なもので、チューブアンプ独特の温かみや自然な歪みと対局にあります。

ソリッドステートアンプはその性質上、クリーントーンを使おうとすると、音量を上げるほど音が尖り、ピッキングのたびに鼓膜を突き刺すような不快さを生むのです。

ソリッドステートアンプを使う場合は、アンプ本体のヴォリュームを少しだけ抑え、足りない分を歪み系エフェクターで増幅するようセッティングすればOKです。あとはピッキングのニュアンスとブリッジミュートを組み合わせてリフやバッキング、アルペジオを弾き分ける。

ギターソロでパンチが効いた歪みを利かせたサウンドメイクにセッティングしても、それ以外ではコピーする曲のフィーリングやヴォーカルを引き立たせるために歪みを抑えるのがエレキギターの暗黙の了解であります。そうなれば必然的にクランチの出番が大半を占めるコトに。

ここから先はギタリストの個性や嗜好次第となります。「ロビンソン」を例にすると、僕は強めにクランチをかけ、イントロや間奏のアルペジオはブリッジミュートを適度にからませてキレが良く響くように、歌い始めたら弱めのピッキングに、といった弾き分け方をしています。

ひとつ覚えておいていただきたいのは、ソリッドステートアンプを使う場合は、クリーントーンを使う場合は必ずエフェクターをかけるか、あるいはアンプ内蔵のエフェクト機能を使うコトです。

バリバリのハードロックだけは歪みを強めに、それ以外はすべてクランチで

実際にバンドでコピーしてきた曲を例にしますと、例えばL’Arc~en~Ciel「Driver’s High」や、GLAY「誘惑」などは、終始ゴリゴリのディストーションで攻めるのが正しいサウンドメイクです。ところが、こうした正統派ロックよりも割合ソフトなJ-POPであればクランチが正解。

また、斉藤和義さんの「歩いて帰ろう」やJUDY&MARYの「OVER DRIVE」のように、パンチよりもリフ全体を占める切れ味が良いカッティングがウリの曲をコピーする場合は、クランチでやや強めの歪みをかけると音の粒がキレイに揃います。

変幻自在のサウンドメイクを思いのままに操る。それこそエレキギターの醍醐味というもの。

しかしながら、僕のようにジャンルの坩堝(るつぼ)と化したコピーバンドでセッティングに悩むギタリストに対しては、「そのステージに合ったクランチさえセッティングで出せれば乗り切れる」と伝えたいと思います。

最後に、特にストラトキャスター使いの皆さんにこそクランチを駆使してほしいと思っています。なぜなら、クランチとシングルコイルの特性は最高の組み合わせだからであります。

もっとも、レスポールのハムバッカーによる甘く太くまろやかなクランチも魅力的ですが。