相談者のキーパーソンとの信頼関係の構築について

相談者のキーパーソンとの信頼関係の構築について

僕ら障害者ケアマネにとって最も大切な人物なのは、いうまでもなく相談者そのヒトですが、次に大切な人物となるのは「キーパーソン」と呼ばれる存在であります。

福祉業界でいうところのキーパーソンとは「主たる介護者」であり、基本的には家族が該当します。高齢者福祉は娘や息子あるいは孫、障害福祉は両親や兄弟姉妹あるいは祖父母というように。

しかしながら家族=キーパーソンという固定された定義はありません。家族が多い話に過ぎません。親族と疎遠だとか行方不明だとか天涯孤独など、さまざまな事情によって家族でないキーパーソンが相談者を支えている場合もあります。

担当の民生委員や福祉委員といったフォーマルなキーパーソンもいますが、もっと多いのは隣近所の住民とかアパートの大家といったインフォーマルなキーパーソンです。後者については、相談者の生活用品の買物代行や、もっと踏み込んで金銭管理をしている場合も少なくありません。

家族でないキーパーソンが関わっている場合、相談者が強い信頼を寄せているだけでなく、ナゼか僕らのような支援者にプライベートを踏み込まれたくないという意向があります。最低限の情報をもらうのみで、あとは本人の意向に従うコトがほとんどです。

ところが、家族の場合は話が違ってきます。相談者または家族のいずれかに強い拒否がなく、双方が良好な関係にある場合であれば、障害者ケアマネとしては相談者の次に深い関わりを持つコトになるのです。

そこで今回は、家族がキーパーソンになっている相談者との関わりについて、その難しさや配慮を要する点などについて綴りたいと思います。

 

ある意味、相談者以上にセンシティブなキーパーソンの存在

キーパーソンの合意なしには計画相談支援が進まないケースも

これまで障害者ケアマネとして仕事をしてきた中で、適切な障害福祉サービス利用が最善と誰もが確信していても、それが叶わず支援困難者として課題解決が先送りになったケースは大きく分けて2つの事例があります。

それは「相談者がサービス利用を拒否した場合」と「家族がサービス利用をさせない場合」です。

前者・後者とも合致してしまう場合も少なくないのですが、前者あるいは後者だけの場合も解決につながらず、支援者を悩ませるものですが、両者とも拒否する次に厄介なのが後者の場合です。

前者の場合、支援者ならびに家族が一丸となって本人と何度も話し合いを行い、課題解決に向かい話が進むコトがあります。ところが後者の場合、せっかく本人がその気になっても家族がストップをかけてしまうコトに。

家族がサービス利用に消極的な理由としては、「私たちが元気なうちは私たちが責任をもって…」という家族支援で完結しようとするもの、短期入所や移動支援など自己負担が発生するサービスに消極的になるもの、本人がイヤがっているからと問題解決を先送りにするものがあります。

自己負担に消極的な理由や本人がイヤがっている理由であれば、われわれ支援者が手分けしながら家族と話し合いを重ねながら徐々に合意と納得を得るコトで解決に向かって話が進めやすいのですが、話がこじれるのは家族支援で完結しようとする場合です。

家族が責任をもって相談者の面倒を見るというのは至極まっとうなものですし、誰にも批判される謂れがない正当な主張であります。本当にそれで完結するなら、僕らの出番は必要ありません。

しかしながら、その家族が高齢化で支えきれなくなったり、高齢化にならなくとも、不慮の病気やケガによって相談者の面倒ができなくなったりする「不測の事態」はいつか必ず起こります。

本当は、そうなる前に然るべき支援を受けるコトによって不測の事態を回避するのが最良ですが、なかなかそういうシチュエーションにならなければその気になれないのが人情というものです。

そのため、不測の事態に一気に支援を進める準備をしながら見守りと声かけをするしかできないというのが歯がゆくもやむを得ないといった現状となります。

いかにキーパーソンを味方につけるか~信頼関係の構築に心血を注ぐ日々

前職のように基本相談が中心的役割だった頃と違い、計画相談支援に特化した仕事をこなしている現在、すでに相談者がサービスを利用している条件での契約から始まりますので、キーパーソンをいかに自分の味方につけるかが焦点になります。

「味方につける」という表現はあまり響きがよろしくないものですが、もっとよろしくない補足をしますと「僕という障害者ケアマネを信頼してください」といったアプローチを家族に行うコトであります。

とはいえ、ただ「信頼してくれ」といわれるだけでは胡散臭くて信頼から遠ざかりたくなるだけであります。そこで、相談者との信頼関係との構築に細心の注意を払いつつ、これまでの知識経験を総動員して向き合っていくワケであります。

キーパーソンたる家族との信頼関係の構築を滞りなく行うためには、それ相応の戦略というものが必要になります。そのためにはまず、キーパーソンがどんなヒトであるかという事前の情報収集が最重要事項となります。

先述したように、すでに障害福祉サービスを利用している相談者へのケアマネジメントを導入する方法を採っておりますので、インテーク面談の前にキーパーソンを知っている支援者から、詳細な情報収集を行います。

なお、キーパーソンの情報収集をする際の必須事項につきましては下記のとおりであります。

キーパーソンの続柄

相談者にとっての続柄(祖父母・両親・兄弟姉妹・おじ・おば・いとこなど)を確認する。また、キーパーソンが単数なのか複数なのかについても併せて確認しておく

キーパーソンのパーソナリティー

キーパーソンがどんなヒトなのか? その性格的な特性について確認する。中には懐疑的なヒトや攻撃的または批判的なヒトもいるので、そのような情報があれば対応を検討しておく

キーパーソンの思考論理

キーパーソンが障害者ケアマネに望んでいるものを推測するために必要な情報を得る。また、希望していることがらだけでなく、キーパーソンが不安に思っていることがらについても把握しておく

このように、まずは充分な情報収集を行うコトによって分析のもとキーパーソンの人物像を想定し、インテーク面談の進め方を脳内シミュレーションするのです。

あとは過去の積み重ねで培ってきたコミュニケーションスキルを出し切り、インテーク面談の当日、信頼関係の構築に向けて全力投球するのみ。家族の思いを傾聴し、希望を尊重し、不安を払拭する。あとはケアマネの実力次第というワケであります。

 

キーパーソンが複数になるほど複雑化するケアマネジメント

本来、キーパーソンが複数いるほど心強くなるハズなのだが…

常識的に考えるなら、キーパーソンも1人よりも2人、2人よりも3人と、多い方が心強いものがあります。1人しかいなければ、そのキーパーソンに何かあった場合、誰も頼れるヒトがいないというコトになるからです。

実際、僕が長年にわたり障害者ケアマネとして仕事をしてきた中で公私ともに順調な日々を送っている相談者を定義するなら「家族の仲が良くて相互理解があり結束が固い」家族に恵まれているという条件が挙げられます。

逆もまた真なりで、冒頭で事例を挙げたように、相談者の最大の理解者たるべき家族が足枷になる場合や、家族そのものが困難ケースといった場合、必然的に支援者を悩ませる支援困難者に。

このように、キーパーソンが複数いるほど心強い家族支援なのですが、そのためには「家族支援の方向性における家族すべての意向がピッタリ一致している」という絶対条件があります。

本人のためを思って、あるいはその本人を支える家族のためを思っても、家族それぞれの方向性が完全に一致するとは限りません。方向性は同じでも到達するプロセスが違う場合もあります。

むしろ、そういった一途な思いが強ければ強いほど、それぞれが違う人格を持つ家族の思いが微妙にズレてしまっても何らフシギはありません。

キーパーソンが増えるほど難しくなる相談支援

実は、キーパーソンが複数いるという相談者はごく少数であります。たいていは1人いるかどうか、複数いたとしても、主たるキーパーソンとなるのは1人です。

統計を取ったワケではないのですが僕のこれまでの体験からご紹介しますと、キーパーソンで最も多いのは母親+相談者のケースが圧倒的に多いです。次に多いのは祖父母+相談者、父親+相談者というケースは最も少ないです。

高齢者福祉と違い、18歳~65歳未満と障害福祉の年齢層は幅広いので、以上の他に兄弟姉妹+相談者というケースは少なくありません。血縁関係ではないですが配偶者+相談者というケースも。

障害福祉においては、圧倒的多数でキーパーソン1人をいかに味方につけるかというアプローチを求められる状況が多いのですが、ごくまれに2人以上のキーパーソンを味方につけるという高度な対人処理能力を求められる状況もあります。

高度な対人処理能力というのは、キーパーソン同士の意向が一致せずに意見がぶつかりあう状況で、どのようなトラブルシューティングをするかという困難さを意味します。

民主主義といえば聞こえは良いですが、結局、最後には誰かの意見を採用して誰かの意見を不採用にするという非常の決断をせざるを得ない状況もあります。

政治のように、それが正しかろうがそうでなかろうが、数の論理で押し切ってしまえと単純明快な方法が通用しないのが辛いところ。

結局、そういったシチュエーションでどうすべきかというジレンマに陥るのですが、最後にモノをいうのは「本人が幸せになれるか」「本人が望む生活ができるか」という点であります。

相談者が希望する生活を実現するための計画相談支援。どんなに悩ましくても、ココだけは決してブレてはいけないという信念だけは持ち続けなければなりません。