どんなに時代が移り変わろうが、ギターロックは不滅なり

どんなに時代が移り変わろうが、ギターロックは不滅なり

2020年代まで残り1年を切った現在、デジタル技術の進化は留まるコトを知りません。ひと昔では高価すぎてとても手が出なかった機材がいともカンタンかつ手軽に入手できます。

当時の機材では本当に表現したい音楽が作れなかったとの思いから、小田和正さんがオフコースの名曲「さよなら」をセルフカバーしたのは、ファンには有名な話です。

デジタル音源の最たる楽器といえばキーボードですし、ドラムやベースといったアナログ楽器でも電子音で忠実に再現するコトができます。実際、80年代の段階でヴォーカルとエレキギター以外をすべて電子音で実用化できるテクノロジーが確立していました。

そして現在、その気になればヴォーカルやエレキギターもデジタル化する技術が確立されています。生楽器を一切使わずに生楽器の音を電子音で何の違和感もなくリアルに再現できる時代が来るのはもはや時間の問題に思えてきます。

実際、初音ミクといったヴォーカル音源が動画共有サイトで擬人化されたり、コンピュータの打ち込みで単独で音楽を発信し、メジャーデビューしなくとも全世界に自らの表現を発信できたりする時代がすでに到来しているのは皆さんもご存じのコトでしょう。

では今後、アナログのギターロックを前面に打ち出したバンドは決して留まるコトのないデジタルテクノロジーの進化の中、いずれ恐竜のように淘汰されていく運命にあるのでしょうか?

コアなファンにとっては悔しい話ですが、ロックの人気が世界的に低迷しているのは間違いない。しかしながら、どんなに時代が移り変わろうがギターロックは不滅、決して淘汰されるコトはないと断言できます。

 

ライヴは聴覚だけで成立するものではなく、五感で味わうもの

電子音は、「音質」は疑似化できても生楽器の「音圧」までは再現不可能

それではなぜ、昔ながらのバンドがいつまでも生き残ると断言できるのかといいますと、どんなにデジタルテクノロジーが進化しても、それはあくまで疑似の域を出ないものだからです。

もう少し具体的に解説しますと、打ち込みと呼ばれるコンピュータ制御によるデジタルサウンドが最終的に出力されるのはモニタースピーカーのみですが、バンドの場合はモニタースピーカー以外にさまざまな出力先があります。この違いがそのまま音圧の差に直結します。

生楽器であればドラム自体が強力な音圧発生装置です。ギターアンプやベースアンプも同じでして、150Wクラスの大型スタックアンプであれば、単体で巨大な会場を音圧で満たせます。

同じW数であっても、聴感上はスピーカーの数が多くなるほど音圧が上がる現象が起こります。スタックアンプのキャビネットはこの現象を活かし、巨大スピーカーユニット1発ではなく、それを4分割し、スピーカーユニット4発の構成になっているのです。

同じ理由で、音圧という点で比較すれば、出力がモニタースピーカーのみとなるデジタルサウンドと、モニタースピーカー以外にも複数の音源が同時にステージを満たすアナログサウンドに軍配が上がるのです。

デジタルサウンドの高音質化は今後も独自の進化を遂げていくものと思われますが、アナログ音を疑似化できるのはあくまで音質のみ。アナログ楽器が放つ音圧までは再現できません。

実際、エレキギターの音しか知らなかった僕がバンドを組んで何に驚いたかというと、ステージに向かい合った際にバンドが放つ音圧を全身で受け止めた瞬間でした。

生楽器が放つ音圧がビリビリ服を震わせ、持っているペットボトルがリズムに合わせて振動する。その中身が波紋を起こす。これはオーディオやヘッドホンでしか音楽を聴いたコトがないヒトには絶対に体感できない驚きであります。

ヒトは生楽器が放つ重低音やノイズを心地よいと感じる生き物

耳をつんざくような不快なハウリングは可能な限り排除すべきですが、歪み音ならではのノイズを使いこなすのはエレキギターならではの魅力であります。

真空管アンプがブーンと唸るような低周波を放つ中、エレキギターの弦振動にギターアンプが反応してフィードバックを起こす、グリッサンドやピックスクラッチでノイズを起こす。

これらのノイズは僕が好んで使う基礎テクニックの1つで、歪み系エフェクターを起動させて演奏する曲であれば、どんな曲だろうが成立してしまう定番でもあります。

間奏やギターソロでも使えるのですが、特に頻度が高いのは曲のエンディングです。まずはピックスクラッチ、次にパワーコードを鳴らし、最後にグリッサンドで終わらせる。コレさえやっとけばキッチリ引き締まるという便利モノです。

これらのノイズを発生できるのは電気じかけのアナログ楽器たるエレキギターの最たる魅力でして、電子音で再現するとなればデジタルサンプリングで同じノイズを繰り返すしかない。コレはとてもつまらないものになります。

なぜならノイズはあくまでもアドリブの1つ、同じギタリストであっても同じノイズを出せるとは限らない。ギタリストが代われば、同じノイズであってもギタリストの数だけ違うノイズが鳴るのです。

生々しいノイズを駆使できるのはエレキギターのみ

画一的で粒が揃ったキレイな音ばかり繰り出される電子音とは違い、いかに心地よくノイズを演奏に乗せられるか? それこそがエレキギターの存在意義であります。デジタル楽器のように決まりきった音程や音階を忠実に鳴らす類のものではないからです。

例えばBOOWY「マリオネット」やL’Arc 〜en 〜Ciel「Honey」のギターソロはノイズを敢えて前面に打ち出した傑作の数々であります。恐らく、ご本人が同じプレイを再現するコトはほぼ不可能でしょう。

ドラムがビートを刻み、バスドラが鳴るたびに客が手にしているペットボトルがビリビリ震える。ベースが生々しく響き渡り、客の全身に心地よい振動が骨身に共鳴する。最高のノイズを発動するエレキギターが客の耳朶から全身を貫く。

ヒトは、こうした生楽器が放つ振動やエレキギターの小気味いいノイズを五感で受け止め、それを心地よいと感じる生き物であります。

ヒトがヒトである限り、どんなにテクノロジーが進化しようが、僕が愛してやまないギターロックが廃れるコトなど絶対にあり得ないのであります。