相談者から心待ちにしてもらうための社会福祉士のモニタリング
- 2019.05.25
- 社会福祉士

モニタリングとは、相談者の居宅等へ訪問してヒアリングを行い、また支援者からもヒアリングを行い、それらの結果をもとに作成したサービス等利用計画を振り返り、評価を下すものです。
相談者やその家族、そして支援者からヒアリングを行い、その内容をもとに計画を振り返り、修正を必要とするか継続で問題ないか判断します。
それらを報告書にまとめて行政担当課へ提出するのがモニタリングの一連の流れになります。
介護保険は毎月モニタリングが規定されていますが、障害福祉は利用するサービスによって3ヶ月あるいは6ヶ月ごとに隔月実施となります。
ただし、計画相談支援を新規導入する場合は例外で、初回から3ヶ月に限って毎月モニタリングが認められています。
以上、ここまでがモニタリングに係る一連の流れですが、その実態は相談者によって千差万別。
さらに障害者ケアマネによってスタイルは十人十色ですので、そのバリエーションは無限に。
相談者にとって最適なモニタリングの在り方とは
相談者が不快な思いをしないモニタリングを心がける
新規でサービス等利用計画を作成
モニタリングで計画を評価し、修正を必要とするか継続で良いか判断
修正であれば計画変更、継続で良ければ次のモニタリング
支給期限の到来に併せてサービス等利用計画を更新
以上がケアマネジメントにおける一連のサイクルです。これらのサイクルにおいて、モニタリングは計画相談支援を行う上で必要不可欠なものであります。
そのため、相談者から「モニタリングやってほしくない」とか「ゼロさんに来られるのが辛い」と思われた時点で計画相談支援が成立しないコトになります。
対人コミュニケーションに過度の負担がかかる精神障害者には最低限の訪問時間で要件を済ませ、担当ケアマネの訪問を心待ちにしている知的障害者には可能な限り時間を取れるよう配慮する。
そうするのは上記の理由があるからです。逆もまた真なり。
「ああ、あのくらいの話を聴かれるくらいなら大丈夫かな」
「次にゼロさんが来た時にはアノ話をしよう」
など、相談者に前向きに受け止めてもらうコトができれば、誰にとっても最良の展開となります。
仮に「相談者にとって最適なモニタリングとは何か?」と問われたら、僕は「相談者にとって不快なひとときにならないモニタリングを行うコトだ」と答えます。
モニタリングのやり方は千差万別~性格や障害特性を充分に考慮した上で
モニタリングは居宅等(障害者支援施設や居住系サービスを利用している相談者は居宅ではなく、その時点で生活拠点となっている住所)へ訪問しての個別面談が原則となります。
学校教師が行う家庭訪問と言い換えるとイメージがしやすいでしょうか。
モニタリングを居宅等で実施するというのは障害者総合支援法で規定されている必須事項です。
そして、本人や家族が「それでイイから」とか「そうしてくれないと困る」など自宅訪問を拒否して電話によるヒアリングを求められても法的に認められません。
過去にそのような相談者がいたのですが、法を曲げて自宅へ行ったフリをしてモニタリング報告書を提出するようなワケにはいきませんので、丁重にお断りさせていただきました。
このように、どのような事情かはさておき、自宅訪問に強い拒否感を示す相談者もいます。
逆に「やあゼロさん、よく来たね。実はゼロさんに見せたいモノがあってね…」など、1時間で面談が終わらない話好きな相談者もいます。
担当ケアマネと世間話も含めてジックリ話したいという相談者には1時間いられるよう配慮。
サービス等利用計画に掲げた個々の支援目標に対する評価のみ確認するだけで充分という相談者は15分程度で終了。
このように、相談者のニーズに合わせて日程調整するのが原則です。
また、精神疾患がある相談者にままあるケースなのですが、一見すると実に愛想よく接待してくれているように見えて、実は非常に気を遣うヒトもいます。
その場合、必要最低限の滞在時間で終わらせるよう医療関係者から事前に確認しておきます。
相談者の性格や障害特性を考慮して日程調整をするのが基本です。
しかしながら、対人コミュニケーションが苦手で強いストレスを感じる精神障害者には、担当の精神科ソーシャルワーカー、訪問看護の看護師や保健師からの情報収集が必須事項です。
逆に、話好きな相談者宅へ行く場合は滞在時間に際限がなくなる場合が多くなるため、「次の予定があるので…」と、あらかじめ滞在できる時間を宣言してから面談に入る必要があります。
くれぐれも、モニタリングが「事情聴取」にならないように
かつての僕もそうでしたが、経験値が不足している新人が陥りやすいタブーの1つが「国が定めたモニタリング様式を埋めるために、確認事項を上から下まで順に質問攻めにする」コトです。
逆の立場になってみてください。
いくら本人の了承を得たからといっても、サービス等利用計画に掲げた支援目標や本人の役割を上から記載された順に質問されたらどう感じるでしょうか。
しかも、「コレはできましたか? では、次にコレはどうでしたか?」などと矢継ぎ早に。
モニタリングの実施時間を必要最小限とし、質問事項についてのみ確認し、終了次第すぐ退散するのが最良という相談者であれば問題ないですが、それが誰にも当てはまるとは限りません。
その担当ケアマネが相談者や家族にどのような印象を与えているかで違いはあるでしょうが、「まるで警察の取り調べを受けてるみたいだ」と気分を害するヒトもいるかも知れません。
一方で、軽妙な語り口で世間話を楽しみたい相談者には、ある種の「軽さ」が求められます。
担当ケアマネとの信頼関係が構築されていない段階の相談者に対しては、返答に困らないような、当たり障りない話題から入り、少しずつ緊張を解いていく必要があります。
このように、関係機関からの情報収集を徹底的に行い、それらをもとに相談者の性格や障害特性を充分に考慮。相談者に最適なモニタリングを追求するコミュニケーション能力が試されます。
最終目標は「相談者から心待ちにしてもらえるモニタリング」
モニタリングに限った話ではありませんが、僕が目指しているケースワークの最終形態は「楽しくおしゃべりしているうちに終わった」と相談者から思ってもらえるコトであります。
「アレ、もう終わり? 次はいつ来るの?」と訊かれるようなら大成功といえるでしょう。
現時点で約50名の相談者と利用契約を締結させていただいていますが、これまで培ってきた過去の知識や経験をもとに、今のところ順調に計画相談支援を行っているところであります。
しかしながら全員が僕に全幅の信頼を置いていただいているかといえば(胸を張ってそうだと断言できれば良いのですが)、決してそうではありません。
その言動のニュアンスの端々で「そんなに何度も来なきゃならないんですか?」と抵抗感を抱いている相談者もいらっしゃいます。
また、僕も世間話は決してキライではないので、つい僕自身がおしゃべりに夢中になってしまい、「そうだ、アノ話を聴くんだった」と気づき、「すいません、聴き忘れたコトがありまして…」と電話で再確認するといった失態も時々やらかしてしまいます。
最近、同年代の女性相談者の契約が増えてきたコトから、「えっ、ゼロさんも好きなんですか?」と10~20代の頃に夢中になっていたマンガやアーティストについて話が盛り上がってしまうコトがしばしば。
人間、フシギなもので、たとえ距離感と違和感を抱く者同士であっても共通の趣味があるコトを知った瞬間、これまでのぎこちないやり取りがウソのように饒舌になってしまいます。
つい先日は、女性相談者Aさん宅で北条司先生の「シティーハンター」の話題で盛り上がった後、その翌日にはBさん宅で荒木飛呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」の話でさんざん盛り上がってしまいました。
Bさんは一軒家で暮らす単身世帯ですが、リビングには若かりし頃の僕が夢中になっていたロックバンドのCDアルバムやDVDボックスがあります。
たまたま目に留まったBUCK-TICK(バクチク)の限定版DVDについて訊ねたのがキッカケで打ち解けるコトができました。
DVDの話題に触れたとたん、Bさんは一気に話を始め、昔からファンだったとかCDもDVDも全部持っている話や限定版を入手するまでの苦労話など、サービス内容とは関係ない話を展開。
それでも僕も当時はBさんがハマっていたバンドやアーティストの話には充分についていけましたので、その点においては僕に対するBさんの緊張は完全に解けたと思います。
海音寺潮五郎先生は傑作小説「孫子」で登場人物にこのように言わせています。「人をとりこにするには、その好むところを以て(もって)するのが効果的です」と。
AさんやBさんとの緊張感が解けたのは、まさにコレによるものでしょう。
とはいえ、おしゃべりに夢中になるのは相談者だけで充分です。相談支援のプロを自認する以上、話に花を咲かせながら、ヒアリングすべき点はしっかり確認しなければなりません。
相手の気勢を察知しながら、あくまで観察者としての視点を忘れてはならないのです。
自戒を込めながら、次のモニタリングに向けて報告書を作成する日々が続きます。
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