ロードバイク、登坂を制する者はロングライドを制する

ロードバイク、登坂を制する者はロングライドを制する

先日、高気温の晴天に恵まれた日曜に今シーズン初のロングライドに出かけました。ちょっと寝坊してしまったので予定よりも距離を短縮しましたが、それでも往復156キロを走破。久しぶりにロングライドを堪能できました。

ロードレースでは、選手の脚質によって役割が分かれます。例えば、瞬発力に恵まれているヒトはゴール前で勝負を仕掛けるスプリンターに、登坂(ヒルクライム)が得意なヒトは山岳賞を狙えるクライマーに。ちなみに、僕の脚質は完全にスプリンターです。

スプリンターはヒルクライムが苦手な傾向で、僕も典型的なスプリンター脚質であります。筋肉量が多く瞬発系の運動は得意ですが、坂道は重力の法則をモロに受けてしまいます。つまりカラダが重くて上がらない。ヒルクライムは、ただ辛いだけの苦行にしか思えません。

片道50キロを超えるロングライドに出かけた場合、絶対に避けては通れないのが峠であります。国土の約7割が山岳地帯という山国である以上、いちどロングライドに繰り出したら必ず峠越えをしなければならない宿命にあるのです。

従って、極端に登坂が苦手なローディーが(僕の場合は単に貧脚なだけですが)、ロングライドを快適に楽しむためには、いかに効率的なヒルクライムを具現化できるかが重要になってきます。

 

ロングライドの峠越え、傾斜に合わせた乗り方を知る

一口に「峠」といっても、なだらかに長く続く峠もあれば、距離はそうでもないけれど急勾配という峠もあります。中には、急勾配の峠がいくつも連続する山岳地帯もあるでしょう。

僕の場合は1つでもヒルクライムを避けてロングライドを楽しみたいローディーですので、たとえ遠回りになろうとも急勾配を外したコース取りをします。それでも絶対に避けられない峠の1つや2つはありますので、いかに効率的にやり過ごすかに苦心してきました。

結果、緩やかな坂道と傾斜がキツい坂道の2パターンに合わせたライディングスタイルを駆使して毎度お約束となっている必然の峠越え、不可避なヒルクライムを克服するコトにしています。

ゆるやかな坂道=ブラケットまたは下ハンドルを握ってシッティング

ところでロードバイクは、「ドロップハンドル」という特殊な形状のハンドルを装備しています。U字型に湾曲した特徴的なハンドルです。また、ブレーキと変速機が一体化しており(前後左右に稼働します)、ハンドルから突起のように飛び出して装着されています。

なお、その突起は鷲づかみで握れる構造になっており、そのパーツを「ブラケット」と呼びます。上ハンドル、下ハンドル、ブラケット、これら3つを握るコトでロードバイクを乗りこなすのですが、ヒルクライムを効率的にこなすには、それらを適材適所で使いこなす必要があります。

話を戻し、山頂のふもと、または峠越えした後に、比較的なだらかな坂道が続くコトがあります。そのような場合はブラケットまたは下ハンドルを握って、シッティング中心(サドルに座ったまま)でペダルを踏みます。

向かい風の場合はその限りではありませんが、ゆるやかな坂道の場合は平坦地プラスアルファ程度のペダリングでも充分にスピードが乗ります。その後に控えるヒルクライム、峠越えまでは体力を温存しておきます。

急勾配の坂道=下ハンドルを握ってシッティング、時々ダンシング

一方、山頂に向けて峠越えが始まったら、ブラケットから手を離し、下ハンドルに握り換えます。登坂でブレーキ操作はしません。右手の指先でシフトレバーを動かしながら、風向きや残存体力を勘案してギアチェンジする程度です。

ペダルの踏み方ですが、基本はシッティング中心で登坂します。サドルから腰を浮かせ、立ち漕ぎするダンシングは疲労を拡散させるために時々行う程度に留め、再びシッティングに戻します。

ゆっくり、コツコツと、脳内ジュークボックスで好きな音楽を鳴らしながら、あるいは道路標識のポールを1つずつ数えながら山頂に向かって黙々とヒルクライムを続け、山頂に到達したら極楽の下り坂を軽快に流し、蓄積した疲れを吹き飛ばしましょう。

 

急な坂道ほど下ハンドルを握った方がラクな理由

坂道を登る際、上半身を前傾姿勢にしすぎると息苦しくなるのでブラケットあるいは上ハンドルを握ってヒルクライムを行うのが良いとする考え方があります。僕もロードバイク初心者だった頃はそのスタイルを踏襲してきました。

ところが、一見ラクに思えるライディングフォームが実は余計に疲れるというコトに気付き、その後は下ハンドルをしっかり握る前傾姿勢にフォームを矯正した次第です。

では、なぜ上体を起こしたフォームがかえって疲れるコトになるのか? 人体の構造と物理法則を知れば、自ずとその答えは導き出されるコトになります。

そのヒントは、陸上競技における短距離走でのクラウチングスタートのフォームにあります。

両肘と両膝の距離が近くなるほどペダリングの効率が上がる

ペダルを踏んでクランクを駆動させてチェーンを回転させる物理エネルギーを生み出す際、人体は肘を体幹に引きつける動きになります。ペダルを踏む脚力と上体を引きつける腕力が合致した瞬間、最大トルクを生み出すコトができるのです。

もうひとつ重要なのが、ペダルを踏む膝と上体をバイク本体に引きつける肘の距離が近づくほど、より踏力が発揮されます。人体の構造上、両肘と両膝の距離が近づけば近づくほど効率的に踏力が加わるのです。

この論理で振り返りますと、ブラケットや上ハンドルを握るコトによって両肘と両膝の距離が遠くなります。つまり、ペダリングに向けた踏力が充分にロードバイクに伝達できず、運動エネルギーが分散してしまうのです。

確かに上体を起こした方が呼吸はラクになります。しかしながら、せっかくの踏力がムダに逃げてしまうのはロードバイクの推進力を弱める結果となります。そうなればかえってムダな体力を消耗させてしまうコトになります。

多少、呼吸が苦しくても息ができなくなるほどではありません。慣れでどうにでもなります。あとは前傾姿勢を維持し、両肘と両膝の距離をグッと縮めて踏力のパワーロスを最小限に抑える。

限りある脚力をペダルに込め、踏力を余すことなくクランクを駆動させて推進力に変えるのです。

上半身をたわめて弓形にする姿勢が最も瞬発力を発揮できる

両肘と両膝の距離をできる限り縮め、上半身をたわめて弓形にして、全身の瞬発力を凝縮させる。その一連の動きをどこかで見た覚えがないでしょうか? その1つが、先に綴った短距離のクラウチングスタートであります。

クラウチングとは「屈む」という意味で、ゼロスタートからトップスピードに達するまでの時間を極限まで短縮するためのスターティングフォームでもあります。効率的に運動エネルギーを地面に伝えるため、スターティングブロックも使います。

陸上に限らず、人体が最も瞬発力を発揮するためには上体をたわめて弓形になる、つまり前傾姿勢が最も効率よく運動エネルギーを発動するコトができるのです。棒立ちでは瞬時に動けません。

重力という物理法則に逆らい傾斜を駆け上がっていく。人体とロードバイク、2つの重量物を運搬するために、傾斜がキツい坂道では上ハンドルやブラケットを握らない方が実はラクである。

一見、逆説的なこの事実を知っておくコトが、ロングライドにおけるヒルクライムを制するカギとなります。ペダリングの1つ1つを100%推進力に変えるために。

もちろん、相応のトレーニングを積まなければ下ハンドルを握り続けるコトは困難です。一朝一夕に体力は身につきません。ロードバイクを楽しみながら走行距離を延ばし、カラダを鍛え続ける。

そして本番の日、ヒルクライム込みのロングライドへ繰り出すのであります。