ギタリスト目線で語る、Mr.children(ミスチル)の魅力
- 2019.07.16
- エレキギター

もはや解説不要のモンスターバンド、ミスチルことMr.children。デビューから現在に至るまでの間、世代を超えて多くのファンを惹きつけてやまないステキな4人組であります。
「ミスチルといえば誰?」と聞かれたとすれば、100人中99人はそのヒトの名を答えるであろう、バンドの主要メンバーといえば、シンガーソングライターにしてギターヴォーカルを担当する桜井和寿さんでしょう。
その甘いルックスだけでなく、情熱的な咆哮も優しいささやきも見事に表現してみせるヴォーカル、そして、そのほとんどを手がける卓越した作詞作曲のセンス。「天は二物を与えず」などしょせん持たざる者への慰めにしか思えなくなるほど。
Mr.childrenの特色といえば、ヒット曲があまりにも多すぎるため「ミスチルといえばこの曲!」が成立しないコトでしょう。僕の年代ではミリオンヒットを連発した90年代の初期から中間期、アルバムでいえば「VERSUS(ヴァーサス)」や「Atomic Heart」あたりの収録曲でしょうか。
もちろん、これらの楽曲はギターヴォーカル桜井さんあってこその名曲たちとして認知されているのですが、桜井さんだけでMr.Childrenがモンスターバンドとして成立するワケではありません。
Mr.Childrenは桜井さんという主役を引き立たせるために裏方の仕事を完璧にこなす「もうひとりのギタリスト」、田原さんの存在があってこそ成立するのです。
至高のバッキングギタリスト、田原健一さんの功績とは
バッキングギタリスト~その存在感をあえて前面に出さない「裏方の仕事人」
エレキギターといえば、バンドの花形、ヴォーカルに次いで聴衆の目を惹きつける存在であります。その代表格といえば、当ブログでもたびたびご登場いただく布袋寅泰さんが筆頭でしょう。
「とにかく目立つ! それが仕事」といわんばかりにステージを縦横無尽に駆け抜け、キャッチーなメロディでリフを刻んだかと思えば、至高のギターソロを奏でて聴衆を強く惹きつけ、酔わせ、あるいは泣かせる。ヴォーカルと交互にステージを席巻するタイプのギタリストです。
エレキギター担当のギタリストといえばこのような役割を担うのが常であり、L’Arc 〜en 〜CielのkenさんやB’zの松本さんもそのタイプに属するギタリストであります。
また、ツインギター編成のバンドでは役割分担が決まっています。例えば、X JAPANにおける故HIDEさん、LUNA SEAにおけるSUGIZOさん、GLAYにおけるHISASHIさんがハデにステージで魅せるギタリストであります。
一方、ヴォーカルやリードギタリストを引き立たせるために、ただひたすら裏方に徹するタイプのギタリストがいます。当ブログでは「バッキングギタリスト」と呼びますが、上記の例でいえば、PATAさん、INORANさん、TAKUROさんが該当します。
アルバムで楽曲を引き立たせ、ライヴでヴォーカルを引き立たせる
バッキングギタリストの役割は楽曲の根幹をなす演奏(ドラムやベースといったリズム隊としての役割など)と、楽曲の主旋律をさりげなく担当する演奏があります。
Mr.Childrenの田原さんは絵に描いたようなバッキングギタリストであり、ギターヴォーカルの華、桜井さんが基本的なコードストロークを規則的にかき鳴らす裏で、桜井さんのヴォーカルや演奏を引き立たせ、あるいは演奏の厚みを増したり音に彩りを添えたりする役割に徹しています。
Mr.Childrenの楽曲は比較的、通常のロックバンドに比べてギターソロが極端に少ない傾向にあります。まったくないワケではないのですが、ほとんど印象に残るギターソロは演奏していないハズです。恐らく、それが田原さんのこだわりなのでしょう。
田原さんは、ギターソロとして前面に打ち出す音が極端に少ない一方で、桜井さんのヴォーカルにしっかり絡む、印象的なリフや効果的なヴォイシングをさりげなくアレンジして演奏しています。
また、BOOWY時代の布袋さんが、アルバムではキーボードだったパートを敢えてエレキギターで演奏するといったライヴならではのアレンジを即興でこなしていたのに対し、田原さんはバンドピースの1つとしてエレキギターを解釈しているようです。
つまり、ピアノやストリングスがその楽曲に最も相応しいと判断すれば、そこにエレキギターの音を加えるというコトはしていない。もっとも、そのあたりはバンド全体の総意かも知れませんが。
変幻自在な演奏スタイル、楽曲ごとに多彩なサウンドを駆使
また、バッキングギタリストは得てしてギタープレイもサウンドメイクも一本調子の単調なものになってしまいがちですが、田原さんは楽曲に応じて変幻自在なギターを見事に弾き切っています。
歪みはクランチ程度の控えめでクリーンサウンドも鳴らしますし、空間系やモジュレーション系のエフェクターもソツなく使い、ワウペダルもさりげなく取り入れています。
個人的に「田原さん攻めてるな」とギタリスト目線でお気に入りの一曲が初期の泣けるバラード、「Distance」です。イントロのリフは珍しくザラついたディストーションサウンド。また、これも田原さんには珍しく、泣きのギターソロも演奏しています。
ライヴではツインギター編成になるのでしょうが、粗めの歪みサウンドに絡めるように、コーラスと思われるモジュレーション系エフェクターを使ったエレキギターが重ねて録音されています。
また、こちらは「桜井さん攻めてるな」と過激な歌詞と世界観がクセになる「Brandnew my lover」も隠れた名曲の1つなのですが、桜井さんのシャウトに合わせるように、ファズ系エフェクターとフェイザー系エフェクターを使って荒々しく弾きまくっています。
バッキングギタリストあってこその奇跡のバンド、Mr.children
ポップかつキャッチーなメロディと、一人称は決まって「僕」が等身大の男を歌で語る世界観。
それが、Mr.childrenの魅力、テレビの主題歌やCMなどで数多く採用されている理由に違いないのですが、誰もが内包し得る一種の危うさや危なさもまた、Mr.childrenの秘めたるもうひとつの魅力であります。
そして、これらの魅力を確固たる魅力として具現化できる説得力が田原さんのギターに込められていると僕は思っています。まさにコレこそが至高のバッキングギタリスト田原さんの最大の功績であります。
ステージで最高のパフォーマンスを体現してみせる布袋さんや、正確無比な超絶技巧を難なく弾き切ってみせる松本さんは、ギターキッズにとっていつまでも憧れのギターヒーローであります。
一方で、田原さんは布袋さんや松本さんのような「判りやすいギターヒーロー」とは一線を画するタイプのギタリストであります。
しかしながら、敢えてその存在を判りにくいものにしているのは、田原さんの意図を感じます。田原さんが「Mr.childrenにおけるメンバーの1人」としての役割に徹しているという事実を。
僕が所属するバンドではナゼはMr.childrenの楽曲をコピーしたコトがないのですが、人気ドラマ「コード・ブルー」の主題歌、「HANABI」あたりを演奏すれば知名度が高いですし、客ウケ間違いなしだと思っています。
大学時代、アコースティックギターの弾き語りにハマっていた頃はMr.childrenの曲を数多く弾いてきたのですが、あくまで桜井さんのパートのみ。実は、エレキギターのパートは演奏したコトがありません。
バリバリの速弾きではありませんし、難解なテクニックは使っていないと思われるのですが、田原さんのようにヴォーカルを引き立たせられる「裏方に徹する仕事人」としてのエレキギターが弾けるかどうかは未知数であります。
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