反社会的勢力への闇営業問題から学ぶ、社会人としての処世術

反社会的勢力への闇営業問題から学ぶ、社会人としての処世術

所属芸人の反社会的勢力への闇営業に端を発した吉本興業の騒動はこのブログを綴っている現在も未だに尾を引いており、令和元年の夏はお笑い業界の混沌で世間を賑わせました。

本来ですと、こうした時事ネタはあっという間に古くなるので扱うべきでないのですが、組織人として身につけておかねばならない処世術について学ぶべきエピソードが数多くありました。

当ブログで扱うのは、騒動の発端となった雨上がり決死隊の宮迫博之さんでもロンドンブーツ1号2号の田村亮さんでもなく、のちに5時間半に及ぶ記者会見を行った岡本社長でもありません。

僕が注目したのは、本筋とは別に場外乱闘の様相を呈した中で、異彩を放つ問題提起を行った極楽とんぼの加藤浩次さんと吉本興業の最高権力者といわれる大崎会長とのやり取りであります。

断っておきますが、今回のテーマで取り上げるのは組織人として身につけておくべき処世術の1つ、上司との交渉術の正しい在り方について考えるというものであります。

従いまして、特定の団体および個人の人格を貶めたり誹謗中傷したりする意図は一切ありません。その点につきましては、あらかじめご了承ねがいます。

啖呵を切った相手に丸め込まれた時点で勝負アリ

極楽とんぼの加藤さんは、ご自身が司会を務める朝の情報番組にて、公然と大崎会長と岡本社長の退陣を求め、おふたりが辞めなければ自分が吉本興業を辞めると番組内で公言しました。

上記に至るまでの一連の経緯は今回の目的と一切関係ないので割愛させていただきますが、組織人を10年単位で経験した者からすれば、加藤さんは上層部の勇退を求めて背水の陣を敷いたと認識したと思います。

「しくじったら次はない」と。

ところが、フタを開けてみれば話し合いの結果は周知のとおり。大崎会長も岡本社長も退陣せず、加藤さんも番組内で経緯を説明した上で視聴者に謝罪し、辞職の意志を撤回するハメに。

ネットの書き込みを読んでいると、「良くぞ言ってくれた」とばかり加藤さんを称賛したり同情を寄せたりするコメントが多数寄せられていますが、僕は、かなり冷めた目で見ていました。

「大崎会長との会談で自ら発した公約を果たせなかった時点で加藤さんの敗北が決まった」と。

ネットの記事でも今後の加藤さんの行く末を心配するものが寄せられていますが、他人事ながら、僕も同じ意見であります。

成熟した現代社会の法治国家だからこそ「やれやれ」と安心して観ていられますが、これが戦国の乱世だったら…という話です。

 

「条件を飲んでくれなければ辞める!」はタブーと心得よ

当ブログで何度も綴ってきましたが、ヒトは「知・情・意」とは無縁で生きられない生き物です。

そして、大崎会長や岡本社長も同じでありましょう。煮えたぎるハラワタを持て余していると想像するに難くありません。

加藤さんが公共の電波を使って上層部に反旗を翻したものと認識されたワケですから、組織として何らかの制裁を加えてやろうと考えていても、ちっとも不思議ではないのです。

加藤さんが、よほどの覚悟をもって発言したであろうという点については僕も異存はありません。しかしながら、提示した条件が悪すぎました。あまりにも極論に走りすぎたのです。

加藤さんも感情的になってしまったと反省の弁を述べておられましたが、加藤さんがなさった言動は、辞職をタテに上層部を威圧したのも同然だと受け取られても仕方ありません。

誰でもそうですが、いちど感情的になってしまうと、せっかく先見の明が備わっていても、それが完全に曇り切ってしまうコトになってしまいます。

今回のケース、ちょっと冷静に振り返ってみましょう。大崎会長と岡本社長が退陣するコトで本当にすべて解決したのでしょうか。

また、お二人の後任が加藤さんの望む経営方針を打ち出すという絶対的な保証もありません。

背水の陣を敷いて臨んだクーデターが成功したからといって、仮にその後の対応に不満があるからといって何度も自分のクビをかけて退陣を公言する話にもならないでしょう。

もし僕が加藤さんの立場だったら、上層部に直訴する際「条件を飲んでくれなければ辞める」ではなく「辞めたくないので、1つでもイイから条件を飲んでほしい」と伝えたコトでしょう。

「条件を飲んでくれなければ辞める」といった発言は組織人として絶対にすべきでないタブー行為と心得ましょう。

こうした言動は上層部をはじめ周りから危険視されますし、「オレの馘と引き換えに条件を飲め」と迫るのは傲慢だと曲解して受け止められるおそれもあるからです。

自ら提示した条件を曲げるくらいなら最初から言うべきでない

僕のような天邪鬼なヒネクレ者からみれば、加藤さんは条件が通らなければ自ら会社を去ると公言したにもかかわらず、その約束を反故にしたヒトと世間に認識されたといえなくありません。

カイシャの最高責任者を含めた上層部のメインキャストを2人も辞めさせるなどという大風呂敷を広げるのではなく、双方のダメージを最小限に留める提案をすべきでした。

組織人として絶対に覚えておかねばならない鉄則の1つに、「退職の意志表示は1回きり」というものがあります。僕の持論ですが、退職の意志を表明したその段階で後戻りはできないのです。

なぜなら、たとえ慰留されたにせよ懐柔されたにせよ、いったん退職の意志を表明しておきながら撤回すれば「その程度の覚悟か」「退職すると言っておきながら引っ込めた裏切り者」と認識されるからです。

もちろん、みなさん良識あるオトナですし、貴重な人材を流出させずに済んだと胸を撫で下ろしているヒトが大多数でしょう。

しかしながら、それを決して快く思わないヒトも絶対にいるコトを忘れてはなりません。

もし、それが実質的な生殺与奪を握る経営者や役員クラスの人間だった場合、定年を迎えるまで冷や飯を食わされるという覚悟をせざるを得ないでしょう。

「二度あるコトは三度ある」ではないですが、上層部は退職の意志を翻した人材を危険視します。それも当然でしょう。

なぜなら、再び「退職したい」と言い出さない保証はないと見なされるのです。とても重要な仕事は任せられないという話になります。

「条件が飲まれなければ辞める」と公言したなら、その発言に責任を持ち有言実行する。

今回はそれができなかったワケですから、そもそも最初から「条件が飲まれなければ辞める」などと発言してはいけなかったのです。

加藤さんは番組で、辞めずにカイシャに留まって改革する選択肢があるんじゃないかと大崎会長に慰留されて踏みとどまるコトにしたといったお話を番組でなさっていました。

ならば、大変辛口になってしまいますが、一方的に「あなたがた二人が辞めろ」と迫るのではなく、最初から大崎会長と納得いく結論を求めた話し合いの場を設けるべきだったと思います。

*    *    *

加藤さんがそこまでしたから、大崎会長も所属芸人が望む契約方針について前向きに検討する気になったという意見もあるでしょう。どれが正解なのかは芸能界と無縁な僕には判りません。

しかしながら、組織人の一員としての処世術については知っているつもりであります。

求めるべきは共存共栄。それができないようであれば、気に入らないヒトを辞めさせるのではなく自らがその場から去っていく。

「そんなのキレイゴトじゃないか」と一蹴されるかも知れませんが、ヒトの恨みを1つでも買わない生き方を選ぶ方がラクに生きられます。それだけは確かだと断言できます。

自分の馘(クビ)をかけて上層部と交渉する際の注意点。

それは、自分の馘をかけずに上層部と交渉する術を模索するコトであります。