ストラト使いのロックギタリスト、その傾向と特徴について
- 2019.09.15
- エレキギター

独断と偏見で語る、ストラト使いのロックギタリストが好むサウンドメイクの傾向とプレイスタイルの特徴
世界で最も有名であろうエレキギターといえば、フェンダーのストラトキャスターです。
僕がエレキギターを始めた80年代の後半といえば、アメリカのジャクソンやシャーベルといったメタル系御用達の、先端が尖ったヘッドが特徴のモデルが全盛でした。
ところが、しばらくエレキギターを手放していた2010年代はすっかりフェンダーとギブソンの二大勢力が市場を席捲。
中でもストラトキャスターが異様な人気を博しているコトを知り、大変驚いた次第です。
そして、2020年を目前とする現在。シングルコイルの音色にすっかり魅了され、10代の頃は見向きもしなかった僕も完全なストラト使いに。
そこで今回はストラトキャスターを愛用する2人の国産ストラト使いを例に、彼らが好むサウンドメイクの傾向やプレイスタイルの特徴を綴りたいと思います。
この記事を参考に、ストラトキャスターの導入について検討いただければ幸いです。
ストラト使いのサウンドメイクの傾向
クランチやオーヴァードライヴ主体で、激しいディストーションを好まない
ストラト使いに限らず、クランチやオーヴァードライヴで持ち味を発揮するシングルコイルの特性上、激しいディストーションサウンドにストラトキャスターは選ばれません。
速弾きギタリストのレジェンド、イングヴェイ・マルムスティーンもハードなのはプレイのみで、サウンドメイクは意外なほど歪みが抑えられたマイルドなものです。
ストラトキャスターでなくテレキャスターですが、ポール・ギルバートの後任としてMr.BIGに加入したリッチー・コッツェンもナチュラルなサウンドを好むようです。
超絶技巧でリメイクした圧倒的ギターソロを披露する「BARN」のカヴァーも、アルバムを聴く限り、ギターサウンドはクランチというよりクリーントーンです。
クリーントーンであれだけ弾き切ってしまう。ある意味で恐ろし過ぎる話ですが。
話を戻しますが、ストラト使いはジャンルの違いはあっても激しいディストーションを好まないというコトは間違いありません。
たとえハードな曲調がウリのロックギタリストのギターソロであっても、ストラト使いであれば、過激なディストーションではなく、どこか儚さを孕んだオーヴァードライヴを好みます。
ラルクのkenさんが奏でるギターソロは、フロントピックアップの甘い歪みが特徴ですが、その珠玉のギターサウンドは何度聴いて飽きるコトはありません。
空間系やモジュレーション系を駆使した美しいエフェクト効果を好む
繊細な音質とクリアに抜けていく高音域に特徴があるシングルコイルを搭載しているのですから、その魅力を如何なく発揮したいと思うのはストラト使いの性でしょう。
ディレイとコーラスを効果的に絡めた美しいアルペジオ、切れ味が鋭く小気味よいカッティングで鳴らすストラトサウンドの素晴らしさは特筆すべきものです。
強い歪みと分厚い音圧が活きるディストーションはレスポールの得意分野ですが、その一方で繊細なニュアンスを表現するのは苦手です。
こうした美しいエフェクトとともにキレイなアルペジオを奏でるストラト使いは数多くいますが、僕のイチオシは元バービーボーイズのストラト使い、いまみちともたかさんです。
名曲「ダメージ」、いまみちさんが奏でるアルペジオには名状しがたい哀切さがあります。
クランチやオーヴァードライヴ主体、激しく歪まないサウンドメイクは昭和を思わせるものですが、バラードで奏でられるアルペジオの音色はストラトならではの素晴らしさです。
ストラト使いのプレイスタイルの特徴
必ず取り入れているテクニックはカッティング
エレキギターのテクニックは数あれど、カッティングをしないストラト使いを僕は知りません。
カッティングはテレキャスターの代名詞のようにいわれていますが、ストラトキャスターの魅力を最大限に引き出す演奏技法でもあります。
では、テレキャスターとストラトキャスターの音質の違いはどこにあるのかというと、
テレキャスター:中音域に特徴がある/コシが強い音質
ストラトキャスター:高音域に特徴がある/線の細い音質
となります。
テレキャス使いと共通する特徴になりますが、ストラト使いは必ずと断言してイイほど独自の解釈のもとでカッティングをプレイに取り入れています。
ラルクのkenさんは楽曲ごとに「静」と「動」、どちらのカッティングも使い分けます。
「花葬」のイントロで妖しさと切なさを演出したかと思えば、「Heaven’s Drive」では荒々しくたたみかけるカッティングをかき鳴らしています。
ピッキングのニュアンスに、一種の生々しさがある
ストラト使いは、いまみちさんのようにピッキングの1つ1つのニュアンスにこだわるギタリストが多いです。聴覚上、生々しい肌感覚として伝わるほどに。
バービーボーイズの楽曲を聴いていると、ある種の違和感を覚えるコトがあります。
ライヴバンドならではの一発撮りではないかと感じるようなギターサウンドに対して。
もちろんワンテイクで収録したワケではないのですが、10代の頃「目を閉じておいでよ」などの名曲が収録されたアルバム「√5」を聴いての違和感でした。
その違和感の正体が「ピッキングの生々しさ」にあるというコトは後年に気づきます。
当時、打ち込みによるデジタルサウンドに慣れつつあった僕には、アンナチュラルなエフェクトを一切使わないストラトキャスターの息遣いが違和感として聴こえたのです。
ある程度、エレキギターが弾けるようになると、ピッキングのニュアンスが千差万別であるコトを正しく聴き分けられるようになります。
B’zの松本さんやポール・ギルバートのように、正確無比なピッキングのニュアンスを旨とするタイプのギタリストは、ナゼかストラトを好まないようです。
一方、楽曲ごとにピッキングのニュアンスが刻々と変わる(あるいは違う)ような、インプロヴィゼーション重視のギタリストはストラト使いに多いと思われます。
いまみちさんもイングヴェイ・マルムスティーンも、ピッキングのニュアンスは一種の生々しさがあります。
そして、2人のストラト使いが持つ生々しさの正体とは、松本さんやポール・ギルバートのような「つねに画一的でないピッキングスタイル」にあります。
アーミングで、情感豊かな音の揺らぎを得意とする
かつては、チューニングが狂わないロック式のフロイドローズで劇的なアーミングを披露するのがハードロックやメタル系ギタリストの「お約束」でした。
ところが、その構造上チューニングが狂うため、ストラトキャスターのアーミングは、どちらかといえばヴィブラートという表現が相応しいサウンドです。
まるでジェットコースターの急上昇や急降下のように劇的に音階すら変えるアーミングではなく、フィンガリングとしてのヴィブラートとは一味違う音の揺らぎとなります。
個々の楽曲に相応しいアレンジやギタリストごとの方向性によって、ストラト使いのアーミングのニュアンスは違いがあります。
ラルクのkenさんはほぼアーミングを使うコトはないのですが、ライヴ「Snow drop」のラスト1音をピッキングし、ゆるやかで控えめなアーミングをするシーンが観られます。
一方、いまみちさんは演奏の最中、細かな波形で頻繁にアーミングをかけ、プレイにアクセントをつけています。
いずれにしても、ストラト使いは効果的なヴィブラートをかけるコトによって、絶妙な音の揺らぎを演出しています。
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