真空管の神髄を知らずしてギターアンプを語るべからず

真空管の神髄を知らずしてギターアンプを語るべからず

マーシャルの醍醐味はフルチューブでしか味わえない

消費税の増税を前に、長期間にわたって保留にしていた高額な機材の買物を決断しました。ギターアンプの真骨頂、フルチューブ仕様のマーシャルアンプです。

その理由は当ブログの記事「ライヴで手持ちのギターアンプを使い回す基礎知識」を読んでもらうコトとして割愛しますが、使い勝手が良いコンボタイプを購入。

いつもお世話になっている楽器店の店員から「真空管のヴォリュームはソリッドステート(トランジスタ)の3倍」と教わった情報を基本とし、

・W数は、現在所持しているソリッドステートから逆算して20~40W

・10~12インチのセレッション製スピーカーユニットが使われている

以上2点を基本とし、ネットでレヴューの情報収集をしたり動画共有サイトでサウンドをチェックしたりしながら初めて購入するフルチューブアンプを選定。

結果、マーシャルの「DSL40c」を購入するコトを決断して発注した次第でした。

後日、そのサイズと圧倒的な重量に「いろんな意味でデカ過ぎ?」と後悔が脳裏をよぎりましたが、練習場に持ち込んで使ったところ、ジャストサイズだったコトが判明。

そのサウンドがメンバーから大絶賛を受けたかについては後述しますが、増幅回路をすべて真空管(チューブ)で統一されたアンプがいかに素晴らしいかをご紹介します。

結論から申し上げますと、30万オーヴァーのハイエンドギターであっても、その満足度は10万円クラスのチューブアンプのそれに匹敵すらしないという事実であります。

これは無知だった僕の懺悔禄として綴っておきたいのですが、チューブアンプの何たるかを知らず、ギター歴30年以上をムダに過ごしてきました。

コレほど素晴らしいサウンドが手に入れられるなら、過去に買い換えてきたエレキギターがいかにムダな出費だったかと、その無知さ加減が思い知らされるほどに。

僕がマーシャルのギターアンプを食わず嫌いしてしまったのは、プリ・パワーそれぞれの増幅回路に真空管が使われている「ホンモノのマーシャル」を知らなかったが故であります。

 

ただマーシャルの名を冠しているだけのソリッドステート&ハイブリッド

僕が所属するバンドの練習場に置かれているマーシャルは一見してチューブアンプ然としているのですが、製品名でネット検索するとプリ管のみのハイブリッド仕様と判明。

ギターアンプの増幅回路はオーディオのソレと同じ、音源信号を増幅するプリアンプとスピーカーユニットを鳴らす出力まで増幅するパワーアンプの2部構造となっています。

ピックアップで拾った弦振動やボディ全体からの共鳴を含めたエレキギターの生音をどのように料理するか、ギターアンプのキャラクターを決めるのがプリアンプというワケです。

ハイブリッドはプリアンプあるいはパワーアンプのどちらか一方に真空管が、もう一方にソリッドステートが使われています。

マーシャルのハイブリッド版はプリアンプに真空管が使われているのですが、あくまでも廉価版の「フンイキマーシャル」でしかありません。

暴言を承知で申し上げますと、マーシャルの代名詞、高音質なドンシャリサウンドが不愉快な方向性に誇張されたフルチューブの劣化版と言わざるを得ない。

僕がマーシャルを敬遠してきたのは、ハイブリッド及びソリッドステートのマーシャルは耳に痛い不快きわまりない高音域と、あまりにもチープな低中音域に辟易していたからです。

ところがDSL40cを練習場に持ち込み、火を入れて(真空管を温めて)鳴らした瞬間、そして鳴らせば鳴らすほど「なるほど、だからマーシャルなんだ」と納得。

そのサウンドで、僕だけでなくバンドメンバーに対しても圧倒的な説得力を発揮したワケです。

「ゼロさん、ギター弾かない私たちにも判るわ。音が全然違う」と。

他のメーカーはともかく、プロをはじめとした世界中のギタリストを虜にする「真のマーシャル」とはフルチューブモデルのみです。

これまでの僕のように、以上の真実を知らずしてマーシャルを語るべきではありません。

 

ギターアンプ市場において、未だにフルチューブが席巻する理由

百聞は一見ならぬ一聴に如かずですが、世界のプロミュージシャンが愛用してやまないのは未だにフルチューブアンプです。

もちろん、スタックアンプの生みの親、マーシャルのようにステージ映えするというビジュアル面でのアピール度の高さも重要な要素の1つには違いありません。

しかしながら、ルックスのみ旧世代でありながら中身は世界最先端のデジタル仕様という話は皆無。信憑性の低いウワサにすら上がってきません。

iPhoneに代表されるように、音響機材のほとんどがデジタル化され続けている一方、唯一ギターアンプについては旧態依然、真空管の牙城が崩れる兆しすらありません。

その理由はネットでさんざん語られているところなので割愛したいところですが、一言でまとめてしまいますと「フルチューブでしか出せない音があるから」に尽きます。

遠い未来、フルチューブを完全再現できるデジタルアンプが開発されるのかも知れませんが、その未来は遥か先であると予見できます。

なぜなら、「ボカロ」、ヒトの肉声を電子音声に変換する技術が「いかにもコンピュータ音声だとすぐ判る程度の解像度」に留まっているからです。

エレキギターはヒトの肉声と同じ、究極にして至高のアナログサウンドです。つまり、デジタルによる疑似音源では絶対に再現できません。

ヒトの数だけ声が違うように、エレキギターのピッキングのニュアンスも、ギタリストの数だけ違う。そこにフィンガリングのニュアンスが加わるのです。

このように、ヴォーカルとエレキギターは、ある種の画一化ができないパートなのです。

そして、十人十色のニュアンスを正確無比に増幅できるのは最上質なアナログ技術、すなわちフルチューブしかない。

「だったら、ヴォーカルも真空管で増幅すりゃイイじゃないか?」という話になりますが、ココがヴォーカルとエレキギターの大きな違いがあります。歪みの有無です。

ヴォーカルの歌声はそのまま忠実に増幅しなければなりません。一方、エレキギターはその代名詞、「歪み」を敢えて発生させた上で増幅させるプロセスが必要になります。

そして、その歪み特性が最も上質なサウンドとして増幅できる、そのための唯一無比のデバイスが真空管なのです。

チューブアンプの特性や、その独自のサウンドを形容する説明として、

ソリッドステートに比べ、有機的な温かみがあるサウンド

歪ませて弾くと、1つ1つの音に聴き心地の良い粘りがある

ソリッドステートよりも、聴感上における音量と音圧がある

ソリッドステートよりも、立体的かつ三次元的に音が広がる

ギタリストの演奏を忠実に再現できるので、練習用に最適

などがあります。

いずれも、フルチューブアンプでしか実現できない真空管の持ち味であります。

テクノロジーの進化により、ピッキングのニュアンスを忠実に再現できるソリッドステートもありますが、絶対に再現できないであろうと思われるのは音圧です。

音圧を水圧に置き換えると、同じW数であっても、ソリッドステートがシャワーなら、チューブは消防散水用ホースから噴き出す水圧に匹敵するほど別物であります。

キャビネットに腰かけて弾けば、ピッキングするたびに重低音が轟く大排気量のエンジンのような音圧が伝わってきます。

その振動が空気振動に変換され、骨から五臓六腑まで響き渡る。それが本当に心地よいのです。

 

どうせ買うなら、スピーカーユニットの品質と口径にこだわる

ギターアンプ購入に際して、絶対に考慮しなければならないのがW数(定格出力)の設定です。

特にフルチューブアンプを選ぶ際、ソリッドステートの3倍の音量と音圧があるという原則をもとに各メーカーのモデルから購入する1品を選ぶコトになります。

僕がこれまで使ってきたローランド「CUBE80-GX」は80Wでしたので、冒頭で設定した20~40Wは現行モデルの1/3で逆算したものです。

W数に開きがあるのはメーカーごとに設定がマチマチでして、マーシャルのDSLシリーズでは、コンボタイプで1W、5W、20W、40Wがあります(2019年現在)。

本来は20Wで必要最低限の仕事をしてくれると思ったのですが、あえてヘヴィな40Wを選んだコトには幾つかの理由があります。

出力に余裕があり、20Wと40Wに出力設定を変えられるなら使い勝手が良いと思って選んだのですが、それ以上の選択理由がありました。

その選択理由とは、内蔵されているスピーカーユニットの口径の違いによるものであります。

近年、マイナーチェンジを加えられてリニューアルされたDSLシリーズは、いずれもスピーカーユニットにセレッション製が採用されています。

「セレッション」とはマーシャルと同じイギリスのスピーカーユニットの老舗で、世界初のギターアンプ専用ユニットをリリースしたメーカーでもあります。

ギターアンプ用のハイエンドスピーカーといえばセレッションで、クルマやバイクで「ブレーキはブレンボ」といった一種のステータスモデルでもあります。

なお、セレッションと市場を二分するスピーカーユニットメーカーとしては「ジェンセン」があります。フェンダー製のギターアンプに多く採用されています。

それそのものが高級モデルと認知されるフルチューブアンプにおいて、マーシャル+セレッション、フェンダー+ジェンセンという組み合わせが1つの基準となります。

というワケで、DSLシリーズという時点でセレッション製スピーカーユニットが採用されているのですが、価格と定格出力の違いとともに口径が異なってきます。

定格出力が大きくなるごとに、スピーカーユニットの口径が8インチ、10インチ、12インチと大型化していくのです。

では、スピーカーユニットの口径でサウンドキャラクターがどう変わるかといいますと、

小口径:高音域の再生能力に優れ、高音がクリアなサウンド

大口径:低音域の再生能力に優れ、迫力あるサウンド

となります。

エレキギターが得意とする周波数帯域は中音域なのですが、フルチューブアンプのゲイン(歪み)やディストーションで歪ませると高音域が強くなる特性があります。

つまり、メタルやハードロックでバリバリに歪ませると、小口径のスピーカーユニットは高音域がキンキン耳に痛い音になりやすいというリスクがあります。

タダでさえ、僕がメインで使っているエレキギターは高音域にピークが寄せられたシングルコイル搭載のストラトモデルです。

ならば、少しでもスピーカーユニットの口径が大きいモデルを選ぶべきという話になります。

そして、その選択は大正解。フルチューブの特性も相まって、まったく耳に痛くない極上の歪みを存分に味わうコトができました。

唯一のデメリットは、何度も申し上げますが、そのサイズの大きさと重量です。その音の良さとは引き換えに、機動力がスポイルされてしまう結果になりました。

カタログでは22kgと記載されていますが、それ以上の重量感があります。クルマに積んだら、ミシリと軋みを上げて後輪のサスペンションが沈み込んだほどです。

気軽に運べない重量さえ割り切るコトができれば、最高の相棒になるハズです。

機材持ち込み派のバンドに所属するギタリストには、ぜひともフルチューブアンプの素晴らしさを知ってもらいたい。

最後になりますが、DSLシリーズは間違いなく「買い」です。