なぜ「ストラトキャスター」がブッチギリで売れるのか

なぜ「ストラトキャスター」がブッチギリで売れるのか

似て非なる存在、「ストラトタイプ」と「ストラトキャスター」

今や、世界で最も売れているといっても過言でないエレキギターといえばストラトキャスター。

通称「ストラト」ですが、正式名称の「ストラトキャスター」の名を冠して良いのはフェンダーとスクワイヤーのみ。あとは「ストラトタイプ」であります。

登録商標の関係上、レオ・フェンダーが1946年に創業したフェンダー社とその子会社が製造するモデルだけがストラトキャスターを名乗るコトができます。

と、ココまでは法律上の解釈なのですが、ただソレだけでフェンダーを買い求めるのかといえば、それはまた違うといえましょう。

数あるストラトモデルではなく、フェンダーのストラトキャスターこそが売れているのです。

ストラトキャスターがどのようなモデルなのか。その特徴や弾きこなし方については、当ブログでご紹介してきたところであります。

しかしながら、類似品も含めて楽器メーカーが「ストラトキャスターもどき」を販売していますが、ストラト使いは決まってフェンダー製を買い求めます。

そこで今回は、なぜフェンダーが選ばれるのかについて、僕なりの解釈を綴りたいと思います。

 

ストラト使いが「フェンダーのストラトキャスター」を選ぶナゾ

ストラトキャスターをメインで使っているプロのギタリストは洋の東西を問わず、それを紹介しているだけで、ちょっと長めのブログ1記事が仕上がってしまいます。

というワケで割愛しますが、それほどプロ・アマ問わずエレキギター弾きが使う汎用モデルです。

ちなみに、僕が愛してやまないL’Arc-en-Cielのギタリスト、Kenさんも、シグネチャーモデルが発表されるほど徹底したストラト使いの1人であります。

さて、「ストラトキャスター」と強調しているのは理由がありまして、数ある亜流を蹴散らして、「フェンダーからリリースされているストラトキャスター」が売れているのです。

世の中のエレキギターはフェンダーのストラトキャスターとギブソンのレスポールに集約される。僕の持論ですが、亜流ストラトでは絶対に到達できない造形美があります。

個人的な趣味や独断と偏見もありますが、ヘッドデザインに限っていえば、ストラトキャスターが頂点に君臨します。

亜流ストラトもどきの嘆かわしいのは、本家ストラトキャスターの造形を崩して模倣するコトです。後述するフジゲン製における唯一の不満がソコにあります。

ボディやピックガードは忠実に模倣しておきながら、ヘッドだけはメーカーの個性を持たせようと色気を出す。

まるで、極上のフルーツに粗悪な白砂糖をぶっかけるが如きの所業にガッカリします。

その点、ストラトキャスターの完璧無比な造形を隅から隅まで忠実に模倣するコトを潔く断行するモモセやヴァンザントの企業方針は本当に素晴らしいと絶賛しています。

カタチは模倣するがサウンドは唯一無二の個性を、あるいは模倣の極致を具現化した。その姿勢を心からリスペクトします。

高額であっても、ストラト使いが最後に帰結するのはフェンダーUSA

話が逸れてしまいましたがが、フェンダーのカテゴリで比較しますと、アメリカで製造されている「フェンダーUSA」がダントツの一番人気であります。

さらに比較しますと、同じフェンダーUSAの中でも、以下の3つのブランドがあります。

最高峰のビルダーが贅を尽くして造り上げたフェンダーカスタムショップ、標準的な製造ラインで造られたフェンダーレギュラーライン、廉価版を製造するスクワイヤーです。

カスタムショップ製となれば、本国で買えば多少は安いでしょうが、日本では最低40万円から、上を見れば軽々と100万円を超えるハイエンドとなります。

最初から買う気もないのに試し弾きさせてもらうのは気が引けるのでカスタムショップ製は触ったコトもありませんが、レギュラーラインなら何度か扱ったコトがあります。

そこで抱いた感想なのですが、やはり楽器オンチの本領発揮で「アレ? 何コレ」でした。

精度が高くて丁寧な造りという点でいえば、本国アメリカを凌ぐストラトモデルは多数あります。かつて僕が所有していたフジゲン製もその1つでした。

一方、加工精度だけなら本物ですら凌駕するメイド・イン・ジャパン

フェンダー社からライセンスを発行されたフェンダージャパン(現在はMIJ)と比較しますと、フジゲン製は最低でもプラス30,000円以上の加工精度を誇ります。

エレキギター弾きにしか通用しない感覚でしょうが、造りがイイ逸品というのは、ボディが脇腹や肘のあたりに触れる感触や、ネックを握った際の手触りで違います。

もちろん音質も同様でして、僕が挫折した速弾きの練習に没頭するキッカケになったのはフジゲンのエレキギターを試奏した瞬間でした。

しかしながら、ストラト使いがみんなフジゲンを選ぶかといえば、僕のようなフジゲン派は少数。圧倒的大多数はスペック的に劣るフェンダーを選ぶのです。

僕には、どうしてもそれがフシギでなりませんでした。

実際、バンド練習に持ち込んで弾いていても、別なギタリストが「ゼロさんのストラト、音イイね」と高評価。

そのギタリストもストラトキャスターを所有していますが「ノイズがひどくて使い物にならない」と、僕のフジゲン製が低ノイズであるコトに驚いていました。

それには理由があります。フジゲン製はノイズ対策が日本人らしい丁寧さで施されていました。

個体差が少なくムラがない国産製~国民性が反映された信頼性の高さ

ピックガード裏面には、そのシルエットとピッタリ同じ輪郭でノイズ予防のアルミ箔が接着され、ボディ側のピックアップ装着部のポケット内に導電塗料がキレイに塗布。

コレがフェンダー製ですと、ピックガード裏に四角くアルミ箔が貼りつけられ、ボディに塗られた導電塗料も、ピックガードで見えないとはいえ、はみ出し部分が目立ちます。

また、フジゲン製のネックジョイント部のポケット(ネックの凸とボディの凹)が隙間なく加工されているのに対し、フェンダー製にはポケットの隙間や塗装の欠損が。

垂直あるいは直角でないといった加工精度の格差によるものであります。わずか0コンマ数ミリのズレですが、素人目にも明らかなほど、その差は歴然であります。

その他、フジゲン製のミドルエンドあたりからは、フレット両端が引っかからないように球面加工されているとか、塗装ムラが一切ないなどの丁寧な造りがウリとなります。

カスタムショップ製を知っているギタリストからは、同じアメリカ製であってもレギュラーラインとは別物だと聴いたコトがあります。

しかしながらコストパフォーマンスで考えると、僕なら個体差が著しいとの悪評高いフェンダーのカスタムショップ製に賭けるくらいなら、20万円クラスのフジゲン製を選びます。

あるいは、モモセやヴァンザントといった日本が誇るハイスペックメーカーからストラトモデルを選ぶでしょう。あえてフェンダーを選ぶ理由が判らない。

しかしながら、今はストラト使いがこぞってフェンダーを選ぶ理由が少しだけ判る気がします。

 

ストラト使いは、フェンダーならではの「数値化されないスペック」に惹かれる

フェンダーというメーカーは、弾き手がいかに自分のモノにするか、育てるか、使いこなすか、といった楽しみ方ができるコトを想定してエレキギターを製造しています。

というのも、エレキギターの始祖ともいえる老舗、エレキギターを知り尽くした巨大メーカーが、その程度の命題を判らないハズがないからです。

事実、フェンダーはストラトキャスターの欠点といわれている負の特性をリカバリーするモデルをリリースしています。

シングルコイルはノイズが多い→ノイズレス仕様のシングルコイルを搭載

シングルコイルは音質が細くて歪みに弱い→リアハムバッカーを搭載

ネックジョイントの角が当たって弾きづらい→ヒールカットジョイントを採用

ところが、トラディショナルと呼ばれる50~60年代のレプリカが未だに超人気を博しています。

実際、行きつけの楽器店に行っても、スタンダードばかりが店頭に並び、MIJ製のハイブリッド(伝統派とモダン派の折衷)はほとんどお目にかかるコトがありません。

そういう意味では、ストラト使いがフェンダーに求めているのは国産メーカーのような高精度かつ質実剛健なエレキギターではないというコトが判ります。

ストラトキャスターにあってストラトモデルにないもの。それは数値化されないスペックです。

バイクでいえば、誰でも一定以上の水準を発揮できてしまうスーパーフォアではなく、危険極まりないが、乗り手次第で凄まじい走りができる初期型NSRが面白いという話です。

誰が扱っても弾きやすくクセがないというコトは、誰が弾いても同じ音しか出せないというコト。つまり、すでに完成形であり、そこから先はないというコトであります。

一方、完成形でないというコトは、それだけ持ち主のクセや好みに合わせてセッティングが煮詰められる余地が残されているというコトであります。

逆に、その不完全さを敢えて残し、ソレも個性と割り切った上で弾きこなすという別なアプローチで楽しむコトもできます。

フェンダーのストラトキャスターは、まさにこのような特性を持たされて世に出たモデルであり、ストラト使いの数だけ唯一無比の音が生み出されるのです。

ストラトキャスター本来の魅力を失わせない、それが不完全さを残している理由

もうひとつ、不完全さを敢えて残したまま製造と販売を続ける理由があります。

それは、「その不完全さがあるからこそ出せる音」を売り物にしているというコトであります。

上述のとおり、フジゲン製のストラトモデルは、シングルコイルの宿命ともいえるノイズを極力、排除するための手間暇を惜しまない加工がなされています。

しかしながら、これらの加工を施すコトによって、シングルコイルのキレの良さとか高音域の伸びやかな響きがスポイルされるというデメリットが生じてしまいます。

確かにノイズ対策は重要ですが、それによってストラトらしさが損なわれてしまうワケです。

では、フェンダーはどのような解釈をストラト使いに求めているか?

それは、「ストラトのみが持ち得る魅力を最大限、凝縮してある。あとはユーザー次第」です。

ストラトキャスターの魅力を存分に味わうコトと引き換えに、ノイズ対策はストラト使いが各自で行わねばならないというコトです。

それはギターアンプやエフェクターのセッティングを煮詰めるコトもありますし、手のミュートやヴォリュームノブを素早く操作するコトでノイズを出さない嗜みでもあります。

持ち主が独自の解釈をもってセッティングを煮詰め、その個体に相応しい扱い方をマスターする。

思い通りに扱うコトができ、その結果として想像以上のサウンドが飛び出したりするコトの喜びを味わわせてくれるのがフェンダーのストラトキャスターなのです。

扱いづらさや不完全さ、あえて改善をせずに残したままの欠点の数々。そのいずれも確信犯的。

あるいは、そうしなければストラトキャスターの魅力が発揮できないがゆえの苦肉の策。

乗り手次第では駿馬になる、そう簡単に思い通りにならないジャジャ馬だからこそ売れる。

こうして改めて考察してみると、「フェンダーのストラトキャスター」だけが売れ続けている理由が少しだけ判りかけた気がします。