ロックなギターソロの真骨頂は「緩急」にあり

ロックなギターソロの真骨頂は「緩急」にあり

僕は「エレキギターといえば超絶技巧の速弾き」全盛の洗礼を受けた世代なので、ロックバンドのギターソロこそがギタリストとしての華と思っています。

そして、ロックバンドの数だけギターソロの表現方法がありますが、スリリングなフレーズが展開するギターソロほど興奮します。

スリリングとは抽象的な表現ですし、僕がそう感じたからといって万人が同じ印象を持つとは限らないのですが、そう感じる要素を解説するコトはできます。

「スリリングなギターソロ」に共通する要素、それは「緩急」にあります。

 

スリリングなギターソロに共通する要素、それは「緩急」

ところで、ヒトはどんな時に最も「速さ」を体感するでしょうか?

最初から最後まで怒涛のように繰り出される高速フレーズの応酬でしょうか? 違います。

むしろ、高速フレーズの絶対速度が実際にはそれほど速くなくとも、緩急を取り入れたフレーズの方が、ヒトは体感的に「速い」と感じます。

活字ではイマイチ伝わりづらいのですが、コレを聴覚でなく視覚に置き換えて考えると判りやすい。この国の住人にとってお馴染みのスポーツ、プロ野球で考えてみましょう。

プロ野球の世界では160キロの剛速球を繰り出すピッチャーがいます。ですがストレート1本だけでは打ち取れません。優れた動体視力を持つバッターに必ず打たれます。

ズバ抜けた動体視力でなくとも、160キロのストレートならプロの目なら慣れてしまうでしょう。音速を超える超剛速球なら別でしょうが。

一方、150キロに満たないストレートでも百戦錬磨のバッターが空振りするシーンを数えきれないほど見かけたコトがあると思います。

ピッチャーがバッターに仕掛ける「緩急による揺さぶり」によるものです。

直球を投げると見せかけて変化球を投げる。あるいはその逆か。何を投げるか判らない。その駆け引きに翻弄された結果と考えるのが妥当でしょう。

回転系の変化球を除外し、スピードだけで考えても同じ。150キロのストレートの次が110キロのチェンジアップがきたら空振りの確率は高まります。逆もまた真です。

すなわち、速さと遅さ、緩急をつけるコトこそが体感的に「速い」と感じさせる最高のスパイスとなるのです。

このポイントをバンド当時からソロとして活躍される現在もなお、終始一貫で取り入れているのが、我が国が誇るレジェンドの1人、布袋寅泰さんです。

布袋さんは、曲ごとに創意工夫に溢れたオリジナリティが高いギターソロを弾いておられますが、緩急を存分に取り入れた名曲としてオススメしたいのがライヴ版「FUNNY BOY」です。

今回のブログで僕が訴えたいコトのすべてが、この曲のギターソロに凝縮されています。

では、スリリングなギターソロ、すなわちオーディエンスに緩急を感じさせるにはどのようなアプローチが有効なのか考えてみたいと思います。

 

「スリリングなギターソロ」を実現する緩急のつけ方

フィンガリングにおいて「ヨコの動き」を取り入れる

スケール内をタテに超高速で上下するピッキング&フィンガリングもスリリングなギターソロに違いないのですが、体感的にはヨコの動きを取り入れるべきです。

やり過ぎにならず効果的に取り入れるという程度問題がありますが、スライド(グリッサンド)をギターソロで必ず使うようにするのです。

例えば、1~3弦で展開させても良いフレーズを、あえて1弦だけで弾くのです。そうなると指板を押さえる方の指が大きく左右に、すなわちヨコに動くコトになります。

これらのアプローチを積極的かつ大胆に活用しているバンドがL’Arc~en~Cielです。代表曲に、「花葬」「WINTER FALL」「DRIVER’S HIGH」があります。

中でも、ギタリストKenさんの凄さが凝縮された名曲中の名曲が「HONEY」です。この曲のソロは、疾走感あふれるスリリングな「ヨコの動き」は圧巻です。

しかしながら、バンドスコアを見れば一目瞭然ですが、実は複雑でテクニカルなフィンガリングをしていません。

あのスリリングな疾走感のヒミツはヨコの動きに加え、もうひとつ重要な要素があります。それはワウペダルの存在です。

右利きギタリストでいえば、指板を押さえる左手が左から右、すなわち左から右側へスライドする際にワウペダルを踏むのです。

踵側で踏んで浮かせたワウペダルを爪先方向へ踏み込み、音を下から上にエフェクトさせるのと、左手の指先が鋭くスライドするタイミングを合わせてピッキングする。

ワウペダルの踏み方については、オリジナル曲を何度も聴き込んだ上で試行錯誤するしかない。

ここから先はギタリスト各位のセンスと練習がモノをいうところですが、ヨコの動き+ワウペダルあってこそのHONEYです。

アルバムでは恐らくファズ系のエフェクターがかけられていますが、ライヴではワウペダルのみで演奏しているようです。

ワウペダルを使うギターソロが炸裂するラルクの名曲は、他に「HEAVEN’S DRIVE」があります。ライヴ映像では、Kenさんがソロ後半でワウペダルを踏んでいるのが判ります。

速弾きを最小限とし、単音の1つ1つを長く延ばす

1つのギターソロの中に、速弾きフレーズをところどころに盛り込む以外は1つの単音を引きずるように長く延ばす印象的なギターソロを展開する方法もあります。

歪み系エフェクターはもちろん、コンプレッサーやディレイなど、サスティーンを最大限延長するエフェクターを駆使して「1つの音をそこまで引っ張る?」と緩急をつける。

さんざん1つの音を延長させて次の瞬間、プリング&ハンマリングも必要に応じて取り入れつつ、滑らかなフィンガリングで速弾きを展開。そして、次の音を延ばす。

当時、こうしたアプローチはどのロックバンドもやっていなかったと断言できるほど画期的だったロックバンドがLUNA SEAです。

ビジュアル系はイロモノとしか思えなかった僕が初めて「美しい」と思うほど圧倒的ビジュアルを誇っていたLUNA SEAでしたが、それ以上の衝撃だったのが「ROSIER」。

その気になればいくらでも速弾きできるだけの超絶技巧を持ちながら、1つの音をあれほど余韻として印象的に聴かせるギターソロを知った衝撃は今でも忘れられません。

そうしたスタイルはLUNA SEAの代名詞でもあります。同じく疾走感あふれるスリリングな名曲に「STORM」があります。

また、スリリングとは違いますが、泣きのイントロからギターソロまで印象的な音の引きずり方を展開する「I For You」もLUNA SEAを語る上で外せない一曲です。

ミドルテンポで展開する抒情的な名曲「GRAVITY」のギターソロも、「音を引きずる余韻+一瞬の速弾き」という定番のスタイルでプレイされています。ご参考まで。