旋律の緩急を操る鉄の筐体~ワウペダルを駆使する
- 2019.12.08
- エレキギター

世の中には、数え切れないほど数多のエフェクターがあります。僕もエレキギター弾きの端くれとして、代表的なモデルをいくつか買い換えてきました。
ロックギター弾きにとっての必須アイテム、歪み系はもちろん、定番となるモジュレーション系と空間系、それらがパッケージングされたマルチエフェクター。
さまざまな機能を持ち合わせたエフェクターが世には溢れているところですが、ギタリストの意のままに音程を変化させる「旋律の緩急」をつけられる唯一のエフェクターがあります。
それが今回のブログのテーマ、ワウペダルであります。
「旋律の緩急」を駆使できる唯一のエフェクター、ワウペダル
構造と役割は至極シンプル、だからこそ奥深い
ワウペダルとは、一見するとオルガンペダルのような筐体であり、聴感上で強調される高音域から中音域をペダルのオンオフで可変させるエフェクターであります。
ペダルを踏み込むと高音域が強調された鋭い音に、ペダルを浮かせると中音域が強調された「鼻にかかった」ような、こもった音に変化します。
ペダルを踏み込むスピードや踏み込みの深さに対して忠実に反応するのがワウペダルでして、使うギタリストの技量とセンス次第で聴衆を大いに沸かせるプレイが体現できるのです。
余談ですが、ワウペダルのネーミングは擬音で「ワウワウ」と聴こえるところに由来します。
ワウペダルを使えば、音域の強調に留まらず、旋律の緩急にまでその効果が及ぶのであります。
そのガッチリした鉄の塊を開けてみると、メカニズムは非常にシンプル。9Ⅴ型の電池ボックスと、ペダルの動きに合わせて動く可変抵抗器がこぢんまりと取りつけられているだけ。
デジタル全盛の昨今において、ワウペダルについてはチューブアンプと同じ旧態依然の構造のまま現在に至っています。
しかしながら、オートワウのような電子制御による画一的な動きではなく、ギタリストの個性が生々しく浮き彫りになるワウペダルを使うべきです。
なぜなら、ワウペダルの使い方もまたロックギタリストの個性と技量の見せどころだからです。
使い勝手の良さや運搬性など、ニーズに合致した選択を
僕はジム・ダンロップの「クライベイビー」を使っていますが、音に不満はありません。
しかしながら、買い換えあるいは買い増しをするのであれば、使い勝手の良さと運搬性を意識して2台目を購入するコトでしょう。
なぜなら、現在のクライベイビーをライヴで使っていると、以下の2点で不満があるからです。
エフェクターのようにLED表示がないので、起動されたかどうか判りづらい
重くてデカいので、エフェクターボードの場所を取るし運搬が辛くなる
ワウペダルの起動スイッチはロータリー式になっています。1回強く踏むと起動し、もう1回強く踏むとオフになります(クライベイビーにはペダル爪先下あたりにスイッチあり)。
つまり、強く踏み込まないとスイッチがオフにならないので、オンになったままプレイを続けるというミスが起こりがちになります。
また、クライベイビーは鉄で構成された筐体であります。使われ方がハードですのでそれだけ頑丈にできているというコトでしょうが、サイズ的にかさばるし、運ぶのが苦痛に。
そこで、次に購入する際は、以下2点を満たすワウペダルを選ぼうと考えています。
使い勝手の良さ~ワウペダルのオンオフが電光表示で確認できる
運搬性~エフェクターボックスの省スペース化と軽量化を図る
前者については意外なほど選べません。HOTONEとVOXに該当モデルがあるのみです。
僕と同じニーズを求めるユーザーはいるようで、既存ワウペダルにLEDを増設するモディファイサービスもあります。コストパフォーマンス面では悩ましいところですが。
そして、後者についてもニーズを満たす選択肢はあまり多くありません。
「クライベイビー」を1/2サイズに小型化した「CBM95」か、HOTONEのコンパクトなワウペダル「VOW PRESS」が値段的にも手頃でしょう。
ロックギタリストのレジェンドから学ぶ、ワウ使いのアプローチ
稀代の速弾きギタリストにしてワウペダルの名手、イングヴェイ
最後に、ロックギターをこよなく愛する皆さんに向けてワウペダルの使い方を学ぶ上で参考となるギタリストとその楽曲についてご紹介します。
メタルのジャンルではワウペダルを駆使するギタリストは希少です。そのような情勢の中、速弾きギタリストの中で稀代のワウ使いを1人、ご紹介したいと思います。
そのヒトはAハーモニックマイナーを駆使するクラシカル系の速弾きギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーン。当ブログでもたびたび登場するレジェンドです。
彼はジム・ダンロップのクライベイビーをこよなく愛する、ワウペダルの使い手であります。
そのワウ使いとしての卓越したセンスが存分に盛り込まれているのがアルバム「Eclipse」でして、1つのアルバムでここまでワウを取り入れた曲が収録されるのは珍しいです。
ファンクなグルーヴで始まる「Bedroom eye’s」、お約束の3弦スウィープのギターソロが疾走する「Demon driver」、これらの曲はワウペダルのお手本といえます。
前者はイングヴェイにしては珍しい、ミドルテンポのグルーヴ感あふれるリズム隊に乗せた、少し粘りつくような聴き心地のフレーズを弾きこなしています。
そのプレイは彼が敬愛する伝説のギタリスト、ジミ・ヘンドリックスを意識してのものでしょう。愛用のクライベイビーでファズっぽいサウンドを意識しています。
後者はイングヴェイお得意の3弦スウィープで精巧無比なリズムキープとピッキングの生々しさを両立させた彼ならではの流麗なプレイが展開していきます。
ワウが使われるのは、次に展開するブルージィなフレーズが炸裂する中盤のギターソロであります。(ソロの序盤と終盤はお決まりの3弦スウィープでキレイにまとめられています)。
そして、極めつきなのは「Making love」のロングヴァージョンで炸裂するエンディングのソロです。まさしくワウペダルのおいしいツボを押さえまくった秀逸なアレンジです。
ロングヴァージョンが収録されているのは日本盤の「Eclipse」ボーナストラックのみ。あるいは、「イングヴェイ・マルムスティーン・コレクション」にも収録されています。
「Eclipse」以外でもイングヴェイのワウを堪能できるアルバムはありまして、僕が最もイチオシしたいのが「Magnum Opus」のオープニングを飾る「Vengeance」です。
このアルバムがリリースされた当時は大学生で、しばらくハードロックから遠ざかっていた頃でもありました。
高校当時に貪るように聴いていたインギーを久しぶりに聴いてみようと買ったものでしたが、その素晴らしさにすっかり惚れ直し、以来20年以上にわたり聴き続けています。
これぞ速弾きの王道といった名曲なのですが、ワウペダルのプレイとしては非常にオーソドックスで、ワウ使いの技巧を学び取るなら「Eclipse」を一聴すべきです。
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