ギターソロで流麗な速弾き、フィンガリングの極意とは

ギターソロで流麗な速弾き、フィンガリングの極意とは

どのスポーツでも共通しているのは「最高のパフォーマンスを体現するためには、決して力んではいけない」といったリラックス理論であります。

そして、この理論を体現するには、それぞれのスポーツで最低限必要とされる膂力や腕力を備えているコトが絶対条件であります。

非力なバッターが理論的にスイングしてもホームランを打てないように、エレキギターにおいても脱力系リラックス理論を体現するためには最低限の筋力が必要となります。

「ただ弦を弾いているだけ」と思われがちですが、エレキギター弾きは想像以上のカロリー消費をします。ピッキングにせよフィンガリングにせよ、相応の筋力が求められるからです。

特に、連続スウィープを繰り出す際や高速リフをダウンピッキング中心で刻む際、指板を押さえる側の握力やピッキングする側の腕力をコンスタントに維持できるかどうかが問われます。

充分に休憩が取れる練習や1曲勝負のコンテストなら問題ありません。

しかしながら、1日数回ステージに立つとか1回あたりの演奏時間が長いライヴではどうか?

流麗な速弾きを長時間キメるには、後述する筋力マネジメントが必須となります。

 

イングヴェイ、流麗な速弾きとスキャロップド加工の相関関係

エレキギター専門誌「ヤングギター」でも、海外の洋楽ロックギタリストも「秘訣はリラックスにアリさ」と口を揃えています。

彼らのスタイルは千差万別。しかしながら、みなリラックス理論を体現しています。

特に感銘を受けたのがインギーことイングヴェイ・マルムスティーンのプレイスタイルでした。最も衝撃だったのが、まるで指板を撫でるかのような流麗なフィンガリングだったのです。

インギーは、「スキャロップド」と呼ばれる加工を施したストラトキャスターを使用しています。本来はフラットなすべての指板を1つ残らず半月状に抉っているのです。

スキャロップド加工のメリットは、より小さな力で押弦できるようになるコトです。ムダな筋力を使わずに流麗なフィンガリングが体現できやすくなります。

もう1つのメリットは、ヴィヴラ―トやチョーキングがより強くかけられるコトです。というか、「かかりが良くなる」といった方が正しいでしょう。

しかしながらデメリットもあります。本来は指板に指先が当たり指圧が一定になるところですが、スキャロップド指板になると、押さえる力加減が難しくなります。

難しくなるというのは、無加工より強く押さえてしまいがちになるというコトです。そして、強く押さえすぎるとピッチ(音程)がシャープしてしまうのです。

こうした加工を施したシグネチャーモデルで速弾きを展開するのがインギーのスタイルです。

恐らく、彼の繊細な指圧が「まるで撫でるような」フィンガリングに見えたのでしょう。

スキャロップド加工がもたらす2つの効能

スキャロップド加工の存在、そのメリット・デメリットを知った頃の僕には疑問でした。

「どうして彼は弾きづらいスキャロップド加工を施したストラトを愛用しているのか」と。

一説には彼が敬愛するギタリストのひとり、リッチー・ブラックモアの影響ではないかとのコト。確かにラージヘッドを好み、センターピックアップを下げるのはリッチー流です。

インギー本人は決して認めないでしょうが、スキャロップド加工もまたリッチーのスタイルを踏襲したものと思われます。

しかしながら、このように弾きづらいのが明らかなスキャロップド加工をあえて使い続ける理由が見当たらないワケではありません。

僕が考える理由としては、次の2つの効能を狙ってのものではないかと推察しています。

必要最低限の指圧で押弦できるコトによって、流麗な速弾きを実現

必要最低限の指圧で押弦できるコトによって、握力の温存が図れる

「スキャロップド加工の駆使」という筋力マネジメント

1つめの効能について、あらためて解説するまでもないでしょう。力がかかっていないのだから、その分だけ運指が素早くできるからです。問題は2つめの効能です。

冒頭で、エレキギター弾きは想像以上に体力を消耗する話をしました。冬でさえ「部屋がヒンヤリしている」と思って練習を始めたら、いつの間にか背中にじっとり汗をかいているものです。

けっこうなカロリー消費が見込めるエレキギターなのですが、アレンジによっては消費の度合いが急激に跳ね上がる曲もあります。

メタリカのようにハイテンポで怒涛の連続ダウンピッキングが求められる楽曲はもちろんですが、インギー十八番のスウィープピッキングも容赦なく体力を消耗するのです。

それも、フィンガリングする側の握力に高い負担がかかるのです。

曲の序盤、2弦スウィープが果てしなく続く「トリロジーOP5」を例にしますと、「どうしても巧く弾けない」と、何度も練習を繰り返すコトになります。

ところが、フィンガリングする側の握力が長く持たない。酷使によって乳酸が溜まるのでしょう。気力体力は残っていても握力を使い切ってしまうのです。

では、なぜそういうコトになるのかという話ですが、これはもう「不要な力が入ってしまい握力をムダに消耗してしまう」に尽きます。

コツをつかみ慣れればどうというコトもないのですが、ポジションによっては多少のストレッチも必要になるため、余計に力が入ってしまうのです。

ムダな握力を使わない筋力マネジメントをしなければ、たとえ一発本番であっても2弦スウィープの終盤で握力を使い切ってしまうコトに。

一方、スキャロップド加工の指板で、必要最低限の指圧で押弦を続けるコトができればどうなるか。極端な話、2弦スウィープを何度でもリプレイするコトができるでしょう。

これは実際に「グーパー」をやってみれば判ります。指板を押さえる側の手で(右利きなら左手)、握り込んだ手を開き、そして握る動作の繰り返しをします。

その際、強く握り込んでから開くパターンと、軽く緩やかに握り込んで開くパターンでそれぞれ、時間を計測してみてください。前者のパターンですと後者の1/2も持たないハズです。

正しい指圧でなければ弾きこなせないスキャロップド加工のストラトキャスターを愛用するコト=握力の消耗を最低限に留める筋力マネジメントに直結しているのです。

 

最低限の筋力をモノにしたら、次は筋力マネジメントへ

インギーフリークにとってはお馴染みのスキャロップド加工ですが、速弾きしやすくなるシロモノではなく、むしろ速弾きしづらくなるシロモノでもあります。

形容するなら「速弾き養成ギプス」のようなもので、正しいフォームで、適切な指圧をもってして押弦しなければキレイに鳴らせないのがスキャロップド加工なのです。

とはいえ、インギーのシグネチャーモデルはフェンダージャパンがリリースしているとはいえ高価ですし、インギーのコピー以外には何かと使い勝手がよろしくない。

また、全スキャロップド加工のモデルは他に流通していませんし、手持ちの1本を加工するにしてもプロに依頼すれば相応の出費がかさみます(自己改造はオススメしません)。

そこでスキャロップド加工に頼らない筋力マネジメント、すなわち適切な指圧で押弦できるコトに注力してほしいと思います。

特に2弦スウィープを延々とプレイする場合、握力がなくなってきたと思ったらムダに強く指板を押さえているコトになります。

そこで何をするのかといいますと、意識して押さえる力を緩めるのです。

その際、左右の動きをシンクロした方がやり易いです。右利きギタリストの場合は、左手の指圧を緩めるのと同時に右手のピッキングをソフトに弾くのです。

ピッキングのアタックを弱めると勢いが弱くなると思えますが、押弦とピッキングのタイミングが完全に一致すれば、音がかすれるコトはありません。

それでも弾きづらいと感じるのであれば、可能な範囲で弦高を下げたり細めのゲージを使ったり、機材セッティングの工夫をすべきです。

「握力を鍛えればどうってコトない」と、トリルやプリングを3分続けて1分休む繰り返しをするボクサーばりのトレーニングを推奨するヒトもいますが、僕はオススメしません。

過度なトレーニングはケガの元です。事実、僕自身も腱鞘炎に悩まされました。

エレキギターを弾くための最低限の筋力をモノにしたら、アンナチュラルな筋力アップを求めるのではなく、その筋力をいかに温存するかに注力してください。

その試行錯誤を繰り返すコトによって、基礎体力も必ずや自然に向上していきますので。