マーシャルの新型フルチューブ、DSL40CRについて

マーシャルの新型フルチューブ、DSL40CRについて

エレキギターを始めて30年。そのキャリアで初となるフルチューブアンプとして購入したのが、DSL(デュアル・スーパー・リード)シリーズのコンボアンプ、DSL40CRです。

同等スペックの他メーカーモデルに比べてリーズナブルな価格設定であるコト、何より実際に店で試奏してみて「コレは使える!」と確信できたコトが購入の決め手となりました。

プリアンプ・パワーアンプ、すべての信号増幅を真空管で行うフルチューブアンプ。

その素晴らしさについては当ブログ「真空管の神髄を知らずしてギターアンプを語るべからず」で大絶賛したところですが、それから数ヶ月が経過しました。

幸い、バンド関係者の知人が管理する倉庫で、本番とまったく同じ(あるいはそれ以上に)爆音を鳴らせるという非常に恵まれた環境にあります。

その練習場で存分にDSL40CRを鳴らしているワケですが、今回は実際にDSL40CRを使い込んでいるうちに、良くも悪くも色々と判ってきたコトがあります。

そこで今回はDSL40CRユーザーとして、このギターアンプを徹底解剖したいと思います。

徹底解剖、DSL40CRというコンボアンプについて

マーシャル直系、極上のディストーションサウンド

もはや解説不要でしょうが、「これぞマーシャル」といったファットなディストーションを存分に味わうコトができます。

いちど、フルチューブアンプの極上な歪みサウンドを味わってしまったら二度とソリッドステート(トランジスタ)には戻れなくなるほどに。

少々重くてかさばろうが、機材持ち込みによるライヴがあれば何としてでも練習場から持ち出してやろうという気になるというものです。

旧型のDSLシリーズは、ウルトラゲインチャンネルの赤いLEDが点灯したとたん、チリチリと焦げつく歪みを押し殺すかのような荒々しさが際立っていました。

そのヒリつくような攻撃的ディストーションも決して悪くはないのですが、現行DSLシリーズはどんなジャンルのロックにも自然に融和してしまうマイルドさがあります。

まさに、過激な歪みを追い求める求められた80年代ハードロックと一線を画する違う味付けです。現代のロックシーンに合わせたキャラ設定がなされたというコトでしょう。

バイクでいえば、プロでも思わず引く危険なレーサーレプリカから、大型免許取り立ての初心者がソコソコ速く走れてしまうスーパースポーツに進化したようなものです。

小規模ライヴでも充分に使える余裕の高出力

DSLシリーズはスタンバイスイッチ(電源スイッチを入れて真空管が温まるまで待機させる)が出力選択スイッチと一体型になっています(OUTPUT)。

スタンバースイッチは3点ロッカー式となっており、上に押すと20Wの低出力(LAW)、中心に合わせるとスタンバイ、下に押すと40Wの高出力(HIGH)に切り換わります。

基本的な取り扱いとしては、まずスタンバイスイッチが中心に合っているか確認して電源スイッチ(POWER)をONにして数分待ち、スタンバイスイッチを入れます。

その際、個人練習あるいはドラム抜きでバンド練習する場合であれば20Wモードで充分です。

一方、ドラムが入った瞬間、その音量ではギターサウンドが聴こえなくなりますので(ロックなら確実に)、40Wモードに切り換えるコトになります。

限られたスペースでの練習場では、ドラムだけは室内中にまんべんなく拡散しますが、それ以外のスピーカーを介して鳴らす楽器は指向性が強いため、聴こえづらくなります。

しかしながら、チューブアンプで40Wもあれば、練習はもちろん、機材持ち込みのライヴでも、必要な音量が充分に確保できます。

100人程度のハコ(容積)であれば、ミキサーを介してモニターで増幅しなくともDSL40CRが1台あればどうにでもできるでしょう。

多彩なセッティングが行える機能を装備

DSL40CRは、同シリーズの現行コンボタイプ(アンプとキャビネットの一体型)としては最高級モデルに属します。

そのため、スタックアンプにおける同シリーズの最高峰、DSL100とほぼ同じ機能を共有しています(ナゼかフロントパネルの配列は左右逆ですが)。

そのため、たいていのギターアンプに標準装備のトレブル・ミドル・ベース、超高周波帯域を調節するプレゼンスに加え、超低周波帯域を調節するレゾナンスも装備します。

ありがたいコトに高音の耳障りなピーキー音がDSL40CRには無縁なのですが、レゾナンス調節が可能なコトによって、さらにマイルドなサウンドメイクが可能となります。

コレは、僕のようなストラト使いにとって非常に重宝するイコライジング機能であります。

リアパネルには、チャンネル切り換えができるフットスイッチ、エフェクターを直接パワーアンプに接続するセンド・リターン端子(FX LOOP)端子が標準装備されています。

その他、オーディオなどの外部機器を入力するAUX端子(AUDIO IN)や、ミキサーなどの外部機器へ出力するLINE端子(EMULATED OUT)も装備されています。

歪み重視の設計につき、クリーンサウンドは皆無

以上、ここまではDSL40CRの良い点について綴ってきましたが、ここからは良くないと思われる点についても綴っていきます。

まずは、このシリーズ共通のキャラクターなのでしょうが、DSLシリーズはロック限定のギターアンプといえます。しかも、ハードロックやメタル向けの。

クリーン・クランチ・オーヴァードライヴ1・オーヴァードライヴ2と4段階で設定できますが、そもそも、クラシックゲインとウルトラゲインという2チャンネルのゲイン設定です。

ゲイン=ディストーション(歪み)ですから、クリーンといっても歪む事実に気付いた次第。

クリーンとクランチの調節はクラシックゲインチャンネルで行い、歪み(GAIN)と音量(VOLUME)という2つのノブ(つまみ)で調節します。

ところが、クリーンサウンドを出したいと思って歪みを0にすると音が鳴らないのです。必然的に歪みノブを開けるコトになる。そうなればクリーンであっても歪みを帯びます。

パンク一辺倒のバンドやバリバリのハードロックしかやらないというギタリストにとっては無縁ですが、多彩なジャンルを演奏するコピーバンドにとっては少々使いづらい。

クリーンサウンドをベースに空間系やモジュレーション系のエフェクターを使ってアルペジオやカッティングを演奏する際は、DSL40CRのキャラ設定は厄介な扱いとなります。

DSL40CRで使いこなすとなれば、まずはクリーンモード(LEDが緑に点灯)を選択し、歪みを極力絞りながら音量を極力上げるセッティングとするしかないでしょう。

あまり歪みを絞りすぎるとチープなサウンドになってしまうので、歪みノブの目盛り2~3、音量ノブを8あたりで調節し、あとはマスターヴォリュームで。

このように、同じロックでも、クリーン系または軽めのクランチ系サウンドを多用するのであれば、DSL40CRは不向きです。

上記のジャンルで活躍するギタリストがマーシャルからフルチューブのコンボアンプを選ぶなら、「ORIGIN」シリーズのORIGIN50Cがオススメです。

DSLシリーズがヘヴィなディストーション重視なら、ORIGINシリーズはクランチ重視。

W数が10W上がりますが、DSL40CRよりもやや安価といった価格設定になっています。

効いているのかどうか判別しがたいリヴァーブ機能

クラシックゲインとウルトラゲイン、チャンネルごとに独立してリヴァーブ調節できるよう2つのノブが装備されているのですが、コレがほとんど効きません。

とにかくフルテン(目盛り最大)に調整しても、クラシック・ウルトラのどちらも効き目がない。ノブを0にしてから徐々に回していくうち「何となくコレか?」といった程度。

リヴァーブが効かない。たまたま僕が購入した個体に何らかの不具合があるのか、それともDSLシリーズ共通の「抑えた味付け」になっているのか判りません。

どうしても効き具合が気になるというギタリストにつきましては、ディレイやリヴァーブといった空間系エフェクターが必須と考えた方がイイでしょう。