フェンダーの正統な血族「Made in Japan」
- 2020.01.19
- エレキギター

初の「ストラトキャスター」購入、そのキッカケはマーシャルDSLの導入
一過性の盛り上げりで収束すると思っていたバンド活動が6年目を迎え、「だったら高くても元が取れる」と一念発起し、マーシャルのフルチューブアンプを購入。
それが、当ブログでたびたび綴ってきたコンボ型フルチューブ、DSL40CRです。
マーシャルの新型フルチューブ、DSL40CRについて→コチラ
シェイクダウンの時点から「イイ音!」とメンバーに大絶賛を受けた件も以前綴ったとおりですが、その際、メンバーの1人からこんなコトを言われました。
「ゼロさん、せっかくイイの買ったんだから1本くらいちゃんとしたの買ったら?」と。
つまり、生粋のフルチューブアンプを購入したのだから、そのポテンシャルを遺憾なく発揮できる高スペックの市販エレキギターを購入してはどうかと勧められたワケであります。
自作にすっかりハマってしまい、いまや所有しているのは安価なキットのみ。かつてのフジゲン製の相棒たちは他人の手にわたってしまいました。
自作ストラトモデルを使い回す現状に何の不満もなし。ところが、その一言は、のちに脳内で何度もリプレイされるコトになったのでした。
そこで、マーシャルDSLシリーズの最高峰を遺憾なく鳴らし切るために、久しぶりに市販エレキギターを所有しようと決意。
もちろん購入モデルは決まっています。今やストラト使いを自認するシングルコイル派の僕が買うのだから、当然ストラトになります。
また、どうせなら、これまで買ったことがないブランドからというコトで過去に購入したブランドは除外するコトに。となれば、あのブランドしかない。
そう、正真正銘のストラトキャスターを製造しているフェンダー社であります。
あえて「Made in Japan」から選んだ理由
「ストラトキャスター」はフェンダー社の登録商標でして、それを名乗って良いのはフェンダーが製造したストラトキャスターに限られます(他ブランドのはストラトモデル)。
もっとも、価格帯における序列は一目瞭然。最上位となるのがFender USA、次にFender MEXICO、最後にMade in Japanとなります。
「Fender USAはとても高くて買えない。でもフェンダーのストラトが欲しい」というヒトが選ぶ廉価版を新品で購入したいならMade in Japanしかありません。
安さがウリのMade in Japanですが、その上位モデルを購入しようと思えばFender USAの廉価版が視野に入ってきます。その気になれば「安いFender USA」を買えるワケです。
しかしながら僕は、Made in Japanのストラトキャスターから選ぶコトに。購入したのは焙煎加工を施したリミテッドモデルでした。
Fender USAとMade in Japanは似て非なる別物という指摘はあながち間違いではありません。
最大の違いは、インチとミリによる規格の違いでしょう。構成パーツの単位が違うというコトは、パーツの流用ができないというコトであります。もはや別物といってもイイ。
しかしながら、決してMade in Japanはフェイクではありません。フェンダー社からライセンスを与えられた、れっきとした「フェンダー家の血族」なのです。
ストラト使いを自認する以上、いちどは本家フェンダーのストラトキャスターを購入してみかったのが1つめの理由です。
2つめの理由は、Fender USAよりもMade in Japanに魅力を感じるコトです。
特筆すべきは、本物以上と称される日本製ならではの精緻な加工技術とコストパフォーマンスです。精巧無比な加工技術を誇り、関税や輸送コストがかけられたUSAよりお買い得。
このたび購入したLimited Roasted(木材を焙煎加工した限定モデル)は定価が税抜き15万円、Made in Japanの中でも1、2を争う高額モデルです。
Fender USAの同価格帯ならAmerican performerが狙えますので、本家フェンダーにこだわるならこちらを選ぶべきだったのでしょう。
しかしながら、コスパ面では絶対にMade in Japanの方が「買いだ!」と思った次第。
「Limited Roasted」ストラトキャスターのレビュー
ストラトキャスターの何たるかは割愛するとして、以下Limited Roastedのレビューと、そこから見えてくる「Made in Japanというフェンダー」について綴ります。
手元に届いて日が浅いため、そのポテンシャルの深淵を窺い知るのはもう少し先の話ですが、それでもリミテッドモデル(限定版)の名に恥じない逸品であるコトなのは確かです。
現時点における製品レビューだけでも、これだけ挙げるコトができます。
焙煎加工がもたらす深みのある色合い
焙煎加工によって深みのあるダークブラウンを与えられたアッシュのボディ、同じダークブラウンに統一されたメイプルのネック、その色合いに一目惚れ。
また、同系色のブラック1ピース製のピックガードがチョイスされ、ピックアップ・セレクター・コントロールノブがホワイトという「白と黒の対比」の洗練されたスタイリング。
ロックバンド「赤い公園」のギタリスト、津野米咲さんが愛用しているオールローズのストラトと類似したスタイリングでして、個性的なストラトを欲しいと思っていた僕のニーズと合致。
世界で最も売れているといっても過言ではないストラトキャスター。だからこその選択でした。
狂いや乱れが一切ない緻密かつ丁寧な造り
すみずみまで見渡してみて、まさに日本が誇る工業製品という面目躍如であります。自作するからこそハッキリ理解できる精密無比な技術には感嘆するしかありません。
たとえば、塗装。ボディ・ネックともに木目を活かしたシースルー仕様だからこそ、クリア塗装を均一に美しく仕上げる技術の凄さは自作派にしか伝わらないかも知れません。
塗装を凹凸ひとつない完全平面に仕上げる、僕にはムリです。まさに自作派の夢。
すべてのネジが垂直に絞められているコト(マーシャルDSL40はネジ数本が斜め)や、隙なく固定されているネックジョイント部の加工精度の高さ。
ネックが垂直かつ左右のズレがなく固定されている証明となるポジションマークと弦の位置関係も完璧(12フレット以外のマークが3弦と4弦の間)。
そして、フレット両端に施された、なめらかでキレイな処理。
「そんなの当たり前じゃないか」と思われるかも知れませんが、廉価版をさらに下回るモデルや、一部の廉価版モデルでは、なかなかこうはいきません。
たとえ市販モデルであっても、塗装のムラや欠け、ネックジョイントのわずかな隙間、ポジションマークのズレが絶対にあり得ないワケではないのです。
だからこそ、そんなハズレを引かないよう初心者は楽器店で新品を買うべき。
随所に奢られた厳選パーツの数々
Made in Japanの中でも上位モデルだけあって、パーツ類もコストがかけられた厳選モノばかり。
上弦交換が容易かつ手軽なロック式ペグ、耐久性と硬度が期待できるフレット、軽くてなめらかに動くノブやセレクタースイッチ、ガッチリつながるシールドジャック。
どれも最低限のスペックでしかない僕の自作ギターを弾き込んだからこそ、「こうまで違うか」とハイスペックモデルに奢られたパーツの精度に驚くばかりです。
中でも特に驚いたのが、トレモロユニットの効き具合でした。ギタリストの力点をよく判っている支点の精度とアームの角度。1ミリ動かしただけでしっかりヴィヴラ―トできる。
プロのギタリストが軽くゆるやかにアーミングしてもしっかりヴィヴラ―トがかかっているのに対し、僕の自作ギターでは「これでもか!」と沈めないと音が揺れない。
それはテクニック以前の問題であり、それこそ「ちゃんとしたストラト」を使えば造作なくできたコトだったと今さら気づかされた次第です。
いずれにせよ、ヴィヴラ―トを多用するギタリストにとってありがたい。本当に使えます。
もう1つ、トレモロユニットの効きが素晴らしいのはミドルスペック以上のモデルに採用される「2点支持」の恩恵でもあります。
トラディショナルなストラトは6点支持で、トレモロユニット本体を6本の木ネジで固定します。この方式ですと、僕の自作ギターのように相当動かさないと音が揺れない。
一方、ブリッジ可動部を2本の木ネジで固定する2点支持になると、6点支持とは比較にならない可動ができます。小指の先だけでもヴィブラートできるほどに。
もっとも、6点支持がダメだという話ではありません。目指す方向性が違うだけです。
手触りも握り心地も最高のネック
僕は手が小さいので、丸太をタテに割ったような分厚いギブソン系ネックは苦手です。そのため、親指で握り込んでも指が届くタイプのネックシェイプで探していました。
フェンダーは速弾きしやすいCシェイプ、厚みがあってしっかり握れるUシェイプ、クセがあるがネック裏に親指をかけて弾きやすいVシェイプがあります。
当然、Cシェイプのストラトを選んだワケですが、ネックシェイプだけは自作ギターに軍配が。
それでも、厚みはあるけど幅は狭い感触という違和感がある程度の話です。慣れればコレはコレで弾きやすいと感じるものでした。
一方、自作ギターでは絶対にできないサテンフィニッシュで仕上げられているのは高ポイントです。一般的な塗装は「ツルツル」なのに対し、サテンフィニッシュは「サラサラ」だからです。
「ツルツル」仕様のエレキギターで困るのが演奏中に汗で滑るコトです。「サラサラ」仕様は指がネックに食い込む感触で弾けるため、安定したプレイが実現できるのです。
なお、リミテッドモデルはルックス面と演奏性を両立させるため、ヘッド表面は光沢アリの塗装、ヘッド側面とネック裏面はサテンフィニッシュで塗り分けられています。
まるで指先が吸いつくかのような指板
まるで幾年にも熟成させた琥珀を思わせる高級家具のような美しさはいつまでも眺めていられるほどですが、あくまで楽器ですので演奏性こそが重視されなければなりません。
購入の際、弦高を可能な限り低くセッティングしてもらうようオーダーしたので弾きやすい仕様で届いたワケですが、それ以外は弾き込んで指に馴染ませるしかありません。
ハイエンドギターと廉価版の違いは精度の違いでもあり、同じストラトキャスターの造形であっても弾きやすさがまるで違う。狂いのない精巧さはコンマミリ単位で体感できます。
今回のモデルはミドルエンドといったところでハイエンドには及ばないところですが、それでも、ヒトケタ万円のエレキギターとはモノが違うのはすぐ判ります。
以前ブログで、フェンダーの魅力は有機的なチープさにあると綴ったコトがありましたが、それは楽器店で試奏したのがヒトケタ万円の廉価版だったから感じたのでしょう。
造りがしっかりしているというコトがこうもすぐ指に馴染むのかと思ったのは、お馴染みの速弾き、イングヴェイ・マルムスティーンのフレーズを弾いた時でした。
まるで、フィンガリングを繰り出す指先が次々に指板に吸いつくような安定性を感じたのでした。全然ミスする気がしない。どんなに速いアプローチでも正確に押弦できる。
久しぶりにエレキギターを再開する気になって楽器店へ出向いた際、フジゲン製のエレキギターに対して抱いた感触と同じ思いでした。
フレット摩耗を極力回避するため、練習は自作ギターと思っていましたが、真正ストラトの魔力にハマって弾きまくる日々が続きそうです。
畏怖すら感じる直接的かつ強烈な弦振動
このブログを綴りながらストラトキャスターを弾いて、数日が経過して気づいたのかエージングによる効果なのか定かではありませんが、左手に感じる弦振動が凄まじいのであります。
フィンガリングする左手で弦を押さえ、コード弾きをしたり、パワーコードでリフを刻んだりした瞬間にネックへ伝わる弦振動が左手をも振動させるほどです。
コレは過去に所有してきた、いかなるエレキギターでも感じたコトがない、いわゆる「生鳴り」がソリッドギターではあり得ない振動として、「ジュワァァァッ」と左掌全体へ波紋の如く。
解説では、焙煎加工で内部の水分を蒸発させ樹液を結晶化させるコトによって剛性と安定性を高め、深みのあるヴィンテージサウンドを提供するとあります。
本来は比重が重いハズのアッシュをボディ材として使っているにもかかわらず、焙煎加工によって僕が選んだ個体は3.1キロという超軽量(構えてみて「ちょっと軽過ぎた」と後悔)。
その他のモデルも各店に問い合わせたところ、いずれも3.3キロ前後という軽量な個体ばかり。
唯一、かなりペラペラのギグケースだけが不満で、当初の予定よりも高額な出費となりましたが、Limited Roastedを選んだ甲斐がありました。
結論~「花よりダンゴ」派なら、絶対にMade in Japanを選ぶべき
本家フェンダーが欲しいという所有欲や、本家だからこそ味わえるすべてを体感したいのであればその限りではありませんが、そうでなければMade in Japanも選択肢とすべきです。
カスタムショップとはいかないまでも、本家フェンダーの上位モデルを購入する予算がなければ、廉価版に妥協するのではなく、その予算を投入できる最上のMade in Japanを。
その方が絶対に満足できます。
廉価版に妥協し「なんだ、USAってこの程度か?」と思うか、Made in Japanを選んで「以外にイケるな」と思うかはあなた次第。
正直なところ、「モノは試しで」的な博奕を打ったのは否定しません。完全に見た目で一目惚れをしたのが動機ですので。
ところが、実際に購入して試した結果はこれまで綴ってきたとおりです。イイ意味で裏切られて、心から満足しています。当然ですが即、メインギターに昇格です。
そして、正式なストラトキャスターオーナーになった今だからこそ断言します。
「Fender USAだけが正統なフェンダーではない」と。
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