レガート奏法を制する者は一流ギタリストの証

レガート奏法を制する者は一流ギタリストの証

エレキギターのテクニックの中にレガート奏法というものがあります。レガートとは「途切れずに」「なめらかに(音を)つなぐ」という意味があります。

通常のエレキギターはピッキングによって弦を弾くコトで音を鳴らしますが、レガートでは左手によるフィンガリングのみで音を鳴らします(右利きギタリストの場合)。

具体的には、エレキギターの基礎テクニック、ハンマリング・プリング・スライド、これら3つを駆使するのがレガート奏法の基本となります。

奏法の性質上、ピッキングより音量が小さくなります。通常のサウンドメイクは、クランチまたはディストーションを基本としたセッティングになります。

余談ですが、エディー・ヴァン・ヘイレンの代名詞となったライトハンド奏法もまた広義におけるレガート奏法の1つとしてカウントできます。

速弾きといえばピッキングのやり方について論議されるところですが、バリバリに歪ませながらも流麗かつ聴き心地良いサウンドを聴かせるためのテクニックでもあります。

ストレートに音階に影響する奏法なのでミスをすればすぐに判りますし、ぎこちなさがダイレクトに伝わってしまいます。つまり、ギタリストの巧緻が一発で判ってしまう怖さがあります。

逆もまた然りでして、巧いギタリストすなわちレガート奏法が弾けるヒトと換言できます。

そこで今回はレガート奏法の素晴らしいお手本を世に送り続ける至高のギタリストとその楽曲についてご紹介したいと思います。

レガート奏法を極める至高の2大ギタリスト

レガート奏法の究極ロックギタリストを和洋それぞれ1人ずつ挙げろと問われたら、迷わず下記の2大レジェンドをご紹介します。ご存じB’zの松本さんとジョー・サトリアーニです。

松本孝弘(B’z)

松本さんについては今さらご紹介するまでもないかも知れませんが、数いるプロギタリストの中で最もなめらかなレガート奏法を体現できるギタリストでもあります。

タブ譜を見れば一目瞭然ですが、あれだけの超絶速弾きをいともアッサリ涼しい顔でキメてしまう。どの曲もテクニカルプレイの応酬ですが、松本さんの真骨頂はレガート奏法にあります。

そんなレガート奏法のお手本にして究極プレイの1つとしてご紹介したい曲が「CALLING」。

松本さんのリフと稲葉さんのシャウトが交互に切り換わるイントロ。その最後を締めくくるのが、1弦を大きく上下にスライドしながらプリングとハンマリングを繰り返すレガート奏法。

繰り出されるプレイは、1弦を人差指と薬指でプリングとハンマリングを繰り返す単純なものです。ところが、その動きも速いですし、それ以上にスライドの動きが速い。

あれほど高速でローフレットとハイフレットの間を飛び回るのですから、押弦のポジションがズレたり、どこかで音が途切れたりしそうなものです。

ところが「CALLING」を聴いて判るとおり、まったく音が途切れない。実に滑らかに1つの音階として成立しているのです。

押さえるポジションを正確に弾けない前提でポジションを上下するだけでも間に合わない。

プロの野球選手が打球の飛距離と落下点を瞬時に察知し、確実にフライを捕球する凄さが素人には気づきにくいように、あのフレーズの凄さが判るオーディエンスはほぼ皆無でしょう。

しかしながら、あのレガート奏法がモノにできたら文句なしに上級ギタリストの仲間入りです。

流麗かつ洗練された超高速レガート奏法の極致ですが、年単位で繰り返し練習を積めば必ず弾けるようになります。フィンガリングを鍛えるためにうってつけの基礎練習に。

ジョー・サトリアーニ

知る人ぞ知る、ギター・インストゥルメンタルのレジェンドであります。ジョー自身も超絶技巧の持ち主ですが、彼のレッスンを受けた世界的ロックギタリストを輩出しています。

ロックギタリスト御用達のロングヘアでしたが、現在はスキンヘッドにサングラスがトレードマーク。使用ギターは一貫してアイバニーズのSシリーズです。

変幻自在な孤高のギタリスト、スティーヴ・ヴァイや「メタリカ」のリードギタリスト、カーク・ハメットがジョーの門下生であります。

また、世界的に有名なロックギタリスト2名とジョーがステージで共演する「G3」も有名であり、ワールドツアーを開催。2005年には来日公演も実現しています。

なお、ゲストは錚々たるもので、上記2名のギタリストに加え、イングヴェイ・マルムスティーン、ポール・ギルバート、ジョン・ペトルーシといった超絶技巧の至宝が数多く参加。

ジョーの楽曲は日本のテレビ局でもBGMに採用されており、テレビ東京系でオンエアされている「カンブリア宮殿」のテーマ曲「CLOUD CHANT」もジョーのインスト曲です。

今回、レガート奏法の究極系としてご紹介したいのが1989年リリースのアルバム、そのオープニングに収録されている「FLYING IN A BLUE DREAM」であります。

インタヴューで自分が見た夢を体現すべく作り上げたと語っていたこの曲は、そのタイトルどおり、どこか不可思議な浮遊感が漂う曲であります。

それでも、曲が展開していくうちに、ジョーの真骨頂ともいえる、なめらかでありながら数多くの音が凝縮された速弾きが炸裂。

チューニングも変則ならリズム割りも変則、それでいて正確無比な演奏で弾き切る。そして、今回のテーマでもある怒涛のレガート奏法の応酬が中盤を盛り上げます。

公式ライヴ映像を視聴すれば判るのですが、松本さんの2本指で高速フレーズを弾く奏法ではなく、ストレッチも使いながら4本の指をフルに使ったレガート奏法。

くだんのプレイは公式ライヴ映像の3:20~レガート奏法の応酬として始まるのですが、終盤はアーミングも使いながら1分近く怒涛のレガートを続けます。

松本さんの2本指による高速レガートとの違いは、使う指の数だけではなくリズム割りの複雑さ。

もちろん同じスピードをキープしたまま高速フレーズを弾き切るのも難しいですが、リズムの変化を織り交ぜながら音を途切れさせたりせずレガート奏法をキメるのも難しい。

1弦だけをストレッチしながらプリングとハンマリングしたり、複数弦をクロマチックに押さえていきながら展開していくフレーズもあり、多彩なレガート奏法が集約されています。

もう1つ、このアルバムのラストを飾る名曲「INTO THE LIGHT」にも卓越したレガートが存分にちりばめられています。

なお、そのアルバムを買ったのは高校時代でしたが、残念ながら、あれから30年が経過した今も弾ける気がしません。良い練習にはなると思うのですが。