高難度を誇る超絶技巧バンド~東京事変

高難度を誇る超絶技巧バンド~東京事変

その才能も気概もない僕にとってはコピーバンドで課題曲を練習するか、好きなギタリストの超絶フレーズを繰り返し練習するかの2択しかありません。

もちろん、「オリジナルで1曲やろう!」と作詞作曲ができたりリフやアドリブを即興で演奏できたりすれば絶対に楽しいと思います。

しかしながら、昔から独自性を求める欲求はサラサラなく、あくまで好きなギタリストの曲を弾く、エレキギターを鳴らすコトそのものに喜びを見出すコピーバンド指向であります。

そんなワケで現在のバンドに加入して6年目を迎えましたが、胆嚢炎の手術やコロナウイルス禍によって2ヶ月ほどバンドメンバーと疎遠な日々を送っています。

とはいえ、コピーバンドとしての活動は継続しているので課題曲のバンドスコアは渡されており、その中で曲数が最も多いのが椎名林檎さん率いる超絶技巧バンド、東京事変であります。

 

東京事変が演奏できれば上級コピーバンドの仲間入り、でも…

東京事変は2003年に結成され、2012年にいったん解散するのですが、2020年に再結成しました。

妖艶さと儚さを併せ持った美貌と、独特の世界観を持つ歌詞センスとクセのあるハスキーな歌唱が多くのファンを魅了する椎名林檎さんが厳選したメンバー構成。

椎名さんは常人の思考論理では理解しがたい、それでいてフシギな魅力を放つ歌詞が書ける稀有なソングライターでして、草野マサムネさんと双璧をなす作詞家でもあります。

オトナの世界のきわどい色香を存分に歌詞へ凝縮し、日本語を重視した和の世界観で作詞し、曲のベースとなる時代も現代から過去(江戸時代あたり?)を思わせる多彩さ。

「群青日和」や「丸の内サディスティック」のような、バンド名に由来する東京をモチーフにした曲もあれば「長く短い祭」「新しい文明開化」のような過去をモチーフにした曲も。

こうした一本調子でない様々な世界観を演出する楽曲を展開する東京事変ですから、エレキギターの演奏ジャンルも多岐にわたります。

 

オーソドックスもトリッキーも何でもアリのエレキギター

バンド結成初期の頃に、打楽器系を担当していたメンバーから「東京事変? 死にますよ(笑)」と何気に言われたコトがあります。

そのメンバーは学生時代からバンドでドラムを叩いており、現在は社会人ブラスバンドで活躍している腕利きの1人なのですが、だからこそ一気にコピーする気が萎えたものでした。

それから数年が経過し、まがりなりに中堅バンドとして演奏力にも自信がついてきたコトもあり、東京事変を歌いたいというヴォーカルも多かったので去年の冬あたりからコピー開始。

ちなみに、最初の課題曲は「群青日和」と「閃光少女」でした。

中級程度の実力を持っているギタリストであれば、これら2曲のギターソロはそう難しいものではありません(というか、閃光少女はソロというよりはリフ主体のフレーズですが)。

やってみて気づいたコトですが、東京事変のコピーの難しさは運指のトリッキーさと変則リズムによるタイミングの合わせづらさにあります。

「群青日和」は僕が最も好きな曲でもありましたので、ギターソロはわりとスンナリ弾けるようになりました。一方、曲の大部分を構成するカッティングに長期間の練習を要しました。

イントロからヴォーカルの歌い出し、サビとギターソロ後からエンディングまでのカッティングは4拍子に収まらない変則リズムの応酬なのです。

こうなると不器用な僕には地獄のトレーニングでして、小節ごとに右手のストロークをアップから始めたりダウンで切ったりと実に忙しない。

左手のフィンガリングも同様に忙しい。せっかく覚えたポジションも、ギターソロ後にキーが転調するので、ストロークのタイミングは同じでもポジションは1音上に移行するのです。

「ジュディマリ」ことJUDY AND MARYもそうですが、変則リズムによるトリッキーなカッティングはリズム隊のビートを意識した上で弾けないとグチャグチャになります。

ココが東京事変におけるエレキギターの難しさでして、変則リズムによるカッティングやリフを、リズムやテンポを充分に意識して弾けるだけの演奏力が求められるのです。

ギターソロも非常にクセがあり、浮雲さんはライヴパフォーマンス込みで涼しいカオをしながら、実に淡々と弾きこなしてしまいます。

個人的に敬遠したいと思う曲は「キラーチューン」です。イントロのチキンピッキング、ときおりチョーキングなどの小技を挟んだカッティング。弾かなくても苦戦するのは一目瞭然。

スリーフィンガーもそうですが、ピック弾き主体のエレキギター弾きにとって、中指や薬指で弦を弾くのは非常に厄介な課題なのです。イイ練習にはなるのですが。

そういう意味で、クラシックギターやエレキベースなど指弾きを経験したギタリストは、「キラーチューン」のコピーをする上で確実に優位に立てます。

「修羅場」のイントロのようにスウィープピッキングを使うフレーズもあります。

ただ、テンポがあまり早くないのでオルタネイトで弾いているヒトもいれば、チキンピッキングとスウィープピッキングを併用しているヒトもいます。

「キラーチューン」と「修羅場」に共通するのは多数の弦を上下する「タテの動き」が多いコト。

3~4フレットずつ上昇したり下降したりするフレーズは弾きやすいですが、単音で上昇下降する動きはフィンガリングの基礎ができていないとスムーズに弾けないのです。

このように、右手と左手の動きが中級以上のレベルで使えないと東京事変のコピーは地獄の登竜門となりますが、一定のレベルを超えたあたりから面白いように弾けるようになります。

最後に東京事変をコピーする際に使用する機材についてですが、基礎的なサウンドメイクはあまりエフェクターを効かせない、ギターアンプのクランチが主体となります。

そのため、分厚いディストーションに向いたレスポール系ではなく、繊細なニュアンスと軽快さとキレ味の良さがウリのストラト系を使いましょう。

ストラトキャスターである必要はなく、シングルコイル搭載のエレキギターを選べばOKです。

浮雲さんもさまざまなエレキギターを使い分けていますが、どれもシングルコイルのモデルです。

「修羅場」のようにギラつくカッティングはオーヴァードライヴ系のエフェクターを使い、ソロでブースター系のエフェクターを噛ませるとイイでしょう。歪み過ぎないよう意識を。

「群青日和」や「新しい文明開化」もリフはクランチで、ソロはバリバリのディストーションで。アルバム版の群青日和はファズ系を使っています。

ファズはピッキングのニュアンスがグシャグシャに潰れるほど強烈な歪みなので、なかなか出番が回ってこないエフェクター。ここ一番の強烈な個性派です。

 

バンドアンサンブルが非常に難しい

僕はエレキギターしか弾けないので他のパートのコトは推測するしかありません。ただし、一緒に演奏している様子から、ある程度は推測できます。

そこから推測できるのは、どのパートも「絶望的に難しい」というコトであります。

どうもトリッキーなのはエレキギターに限った話ではないようで、ドラムもベースも変則で高難度テクニックの応酬、各自ともに苦労しています。

当然、アンサンブルが合わない。どこかで必ず演奏がズレる。誰かがモタつく。

非常に残酷な話ですが、東京事変のコピーの怖さは、メンバー間格差といいますか、その力量差がそのまま如実にアンサンブルに反映されるというコトであります。

東京事変のコピーバンドに挑戦するというコトは、全員が腕利きでなければ、そうでないメンバーが悪い意味で目立って(浮いて)しまうのです。思っている以上にモロバレしてしまう。

「なんかギター、モタついてない? 他はイイ線いってるのに、アイツだけヘタだな」と。

洋楽ハードロックにありがちな、特定のパートだけが突出して難易度が高いバンドのコピーですと、エレキギター担当だけが腕利きで速弾きが巧ければどうにかサマになります。

誤解がないよう注釈しておきます。超絶技巧のリズム隊を従えているロックバンドはザラでして、ドラムやベースが前面に出るⅩ JapanやMr.Bigは例外的な存在であります。

こうした技巧派バンドは例外なくドラムもベースも超絶技巧が揃っているのですが、ヴォーカルやエレキギターを引き立たせるために、あえて超絶技巧を抑えて裏方に徹するものなのです。

椎名林檎という稀有なヴォーカルを前面に打ち出すために、バンドメンバーは決して前面に出ない。それでいて、あらゆる楽曲でメンバー全員が裏方に徹しつつ超絶技巧を存分に披露する。

東京事変をコピーする時、どのパートであっても絶望的に難しいと感じるのは当然の話なのです。でも、だからこそコピーバンドが腕試しに挑戦する価値があるのです。

人気抜群の東京事変、アンサンブルがキッチリ合うようになれば、絶対に客ウケします。