ロックギタリスト「泣きのギターソロ」を極める
- 2020.05.02
- エレキギター

コロナウイルスが世界的に流行する中、それぞれの「STAY HOME」を過ごしている現在。僕も障害者ケアマネという仕事柄、感染予防のため外出自粛の最中にあります。
当然、普段よりもネットで動画共有サイトを視聴時間が長くなりますが、プロのミュージシャンがそれぞれのSTAY HOMEを動画配信しています。
中でも圧倒的なパフォーマンスを届けてくれたのがB’zのみなさん。松本さんやメンバーが自宅でそれぞれのパートの楽器を弾き、稲葉さんがシャウトする「HOME」。
つねに沈着冷静、いつも涼しい顔をしながら超絶技巧をいかようにも弾き切ってしまう松本さんが、P-90を搭載したゴールドトップのレスポール・スタンダードをつま弾く。
ファンでなくとも最初から最後まで聴き入ってしまう素晴らしいセッションでしたが、その歌詞や曲調に合わせた、松本さんの「泣きのギターソロ」に強く惹かれました。
テクニック偏重だけでは絶対に出せない、あのプレイに少しでも近づくにはどうしたら良いか? それが今回のテーマであります。
以下、ロックギタリストが「泣きのギターソロ」を極めるヒントを綴りたいと思います。
「泣きのギターソロ」を極めるために~サウンドメイク編
歪み系エフェクトは抑えめで
泣きのギターソロのサウンドメイクは「ピッキングのニュアンスをいかに生々しく鳴らせるか」に尽きます。実際、プロのギタリストも共通してそのあたりを意識しています。
最近のデジタルアンプの進化は凄まじいものがありますが、泣きのギターソロを最大限に披露するためにはチューブアンプをオススメします。
歪みはクランチ主体を心がけ、歪み系エフェクターを使う場合はゲインを上げすぎないよう調整を。ギターソロで音圧を上げたい場合はブースター系エフェクターを活用しましょう。
オススメなのは、イコライザーあるいはワウペダルをギターソロで使う方法です。
マーシャルアンプを使うなら、ウルトラゲインではなくクラシックゲインでサウンドメイクを。
空間系あるいはモジュレーション系エフェクターを使うとキレイなサウンドになりますが、これらのエフェクトもレベルを抑えて使用しましょう。
シングルコイルが向いている
エレキギターの2大ピックアップ、シングルコイルとハムバッキングのいずれかを選べるのなら、泣きのギターソロを弾く時はシングルコイル搭載モデルを選びましょう。
ハムバッキングはパワフルでノイズが少なく、中音域に特徴があるファットなサウンドが持ち味。歪み系エフェクターとの相性もバツグンですが、一本調子な大味になりがち。
その点、シングルコイルはギタリストごとに異なるピッキングのニュアンス、その違いをハッキリ鳴らし切るコトができます。
エリック・クラプトンを筆頭に、泣きのギターソロをウリにするプロのギタリストがフェンダーのストラトキャスターを愛用するにはレッキとした理由があるのです。
B’zの松本孝弘さんはギブソンのハムバッカー搭載モデルがメインギターですが、泣きのギターソロを弾く際はアコースティックギターやシングルコイル搭載モデルを使っています。
「泣きのギターソロ」を極めるために~ギタープレイ編
ピッキングのニュアンスは緩急と強弱を意識
ハードロックで理路整然とした速弾きでギターソロを弾く場合や、パンクのように勢い重視で怒涛のリフを刻む場合、一本調子のピッキングの方が心地よく鳴らせます。
ところが、ミドルあるいはスローテンポが主体となる泣きのギターソロの場合、ピッキングの1つ1つに情感を込めて弾かないと、まるで大根役者のセリフ棒読みになってしまいます。
その楽曲ごとに込められたアーティストの想いを個々のギタリストごとに解釈し、いかにギターを泣かせるかを考えた上でピッキングするのです。
考えだけでは成立せず、最低限のテクニックも必要となります。ピッキングの緩急や強弱を変えて弾くには、中級以上のテクニックがなければ難しいかも知れません。
初心者はギターソロを弾くだけで精いっぱいだと思いますが、自分なりの想いを込めてピッキングするコトだけは心がけましょう。必ず緩急や強弱をつけられるようになります。
逆に、ある程度のテクニックが身につき、速弾きがスキでたまらないギタリストはついテクニック披露に走りがちに。いわゆる「スピード違反」をしてしまうのです。
泣きのギターソロのアレンジで速弾きフレーズを入れたいのなら、そうする必然性があるか否かを考慮した上で弾くよう心がけましょう。
チョーキングとヴィブラートの鳴らし方がキモ
エレキギターの演奏テクニックの中で、最も難しく、そしてギタリストの個性が如実かつ生々しく表出するのがチョーキングとヴィブラートです。
論より証拠、プロのギタリストが同じ楽曲における泣きのギターソロをプレイしている音源を聴き比べるとハッキリ判ります。
同じギターソロでもギタリストでこれだけ違う。それを知るためには、世界的ロックギタリストの多くがトリビュートしている「リトル・ウイング」が最良のテキストに。
「リトル・ウイング(Little Wing)」はジミ・ヘンドリックスが1967年にリリースした名曲です。秀逸な泣きのソロが印象的で、多くのギタリストが独自の解釈でプレイ。
エリック・クラプトンは緩急を織り交ぜた泣き方、スティーヴィー・レイ・ヴォーンは甘いトーンを駆使したうねりの泣き方、スティング(※注)は脆さと儚さが漂う泣き方。
※スティングはベーシスト、エレキギターは彼の盟友ともいえるドミニク・ミラーが演奏
もちろん、日本人の中にも素晴らしい泣きのソロを弾くギタリストがいます。山本恭司さんです。ここではシグネチャーモデルではなくストラトキャスターで「リトル・ウイング」を名演。
「人生をどう生きたかがギターの音に出る」という山本さんの人生観がモロに反映している、静寂と激情が交差する泣きのギターを延々と弾き切っています。
終盤はワウペダルを噛ませながら、代名詞でもある超絶技巧をサラリと弾きつつ、メインテーマである「泣きのギターソロ」を最初から最後まで弾き切る。
恐らく若い頃の山本さんはこうしたプレイでなかったと思わせる、渋いオトナの名演です。
話を戻しますが、チョーキングで弦を持ち上げる速さや、ヴィブラートの深さや揺らぎの速さを色々と工夫してアレンジを変えてみるところから始めましょう。
チョーキングを折れ線グラフで表現するなら、緩やかな右肩上がりや急激な弧を描く上がり方を、ヴィブラートを心拍計に見立てるなら、パルスの上下や間隔を変えて音を揺らせてみる。
自分自身のこだわりと、好きなギタリストのうねりや揺らぎを取り入れながら、オーディエンスが思わず感情移入してしまうような「泣きのギターソロ」がモノにできますように。
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