ギタリストが知るべき「弘法筆を選ばず」の極意

ギタリストが知るべき「弘法筆を選ばず」の極意

今回のテーマは、僕のようなギター弾きにとって耳が痛いことわざ「弘法筆を選ばず」です。

技量さえ優れていれば、道具の如何に左右されず最高のパフォーマンスを発揮できるという意味であり、技量の未熟さを道具のせいにしてはいけないという戒めの意味でもあります。

かつてはリアハムバッカーしか使わなかった若かりし頃、当時は考えもしなかったシングルコイル偏愛主義に鞍替えした現在については、当ブログでもたびたび触れてきました。

また、シングルコイル使いになってから、過去30年のギター歴で一度も所有したコトがなかったフェンダーのストラトキャスターを購入し、ストラト関連の記事も綴ってきました。

参考記事

フェンダー・ストラトキャスターのトリセツ(取扱説明書)→コチラ

購入して初めて判るフェンダー・ストラトキャスターの魅力→コチラ

フェンダーの正統な血族「Made in Japan」→コチラ

続・Limited Roastedストラトキャスターのレビュー→コチラ

真正ストラト2号機の購入を決意し、新型コロナウイルスで国から支給された定額給付金で68年型のストラトキャスターを購入しました。1号機と同じメイドインジャパンです。

2号機についてのレビューは別な機会に取り上げるとして、1号機と2号機の違いとそこから判る取り扱い方の違い、そして今回のテーマについて考察していきたいと思います。

 

エレキギター弾きが模索すべき「弘法筆を選ばず」は2つ

その1「どんな機材を使おうが同じ音を出す」という考え方

エレキギターキッズだった頃からお世話になっている専門誌「ヤングギター」で頻繁に書かれる、「どんな機材を使おうが、そのギタリストの音しか出てこない」という言い回しについて。

例えばザック・ワイルドが来日して読者限定のギグを敢行した際、「ギターアンプはリースのマーシャルだったのに、ザックが弾いたらザックの音しか出てこない」といった具合に。

もちろんザック・ワイルドだけではなく、ポール・ギルバートもイングヴェイ・マルムスティーンもジョー・サトリアーニもスティーヴ・ヴァイも全く同じコトがいえます。

わが国が誇る超絶技巧のレジェンド、松本孝弘さんはさらに上をいきます。どんな機材を使おうが、必ず同じサウンドを鳴らします。サウンドメイクを含めて不変というのは驚愕の一言。

松本さんのように、ヤマハのシグネチャーモデルだろうが、ギブソンUSAのレスポールだろうがフライングⅤだろうが、絶対にアノお馴染みのサウンドを鳴らせる。

コレはもう一般的な「弘法筆を選ばず」が示唆する意味そのものであります。

その2「機材ごとの特性を活かした弾き方をする」という考え方

もう1つ、このことわざが示唆していると思われるのは「その道具の特性に使い手が合わせる」という意味です。

コレをエレキギターに置き換えますと、ストラトはストラトの音しか出せませんし、レスポールはレスポールの音しか出せません。それらの個性に合致した鳴らし方をするというコトです。

ストラトをメタル仕様の激歪エフェクターで鳴らせば、音がグシャグシャに、あるいはハウリングしまくりの聴くに堪えないノイズになります。クランチ主体のサウンドメイクが王道です。

さらに、鳴らし方だけでなく、機材の特性に合致した弾き方を心がけるようにします。

ストラトはレギュラースケールの21フレット、レスポールはミディアムスケールの22フレット。ネックジョイント方式やカッタウェイ形状もそれぞれ異なります。

ストラトとレスポール、それぞれの個性を殺さない弾き方を心がけるコトによって「道具の個性を最大限に活かす」コトがもう1つの意味に合致した考え方です。

すなわち、機材によってサウンドやプレイスタイルが変わるコトを是とする考え方でもあります。

ただし、レスポールでの分厚い音圧のカッティングでも仕方ないとか、ディストーションの迫力に欠けたストラトによるリフでも止むを得ないといった割り切りが要ります。

 

「機材に合わせた弾き方」でエレキギター弾きへ

どんな機材を使おうとも同じサウンドを実現してみせるというコトは、超絶技巧だけでは埋もれてしまうロックギタリストの中で異彩を放つ個性そのものであります。

しかしながら、ちょっと穿った見方をするなら「何を弾いても何を鳴らしても同じに聴こえる」という弊害、ワンパターンなマンネリズムともいえなくもありません。

せっかく無数にリリースされているエレキギターを使いこなすのであれば「機材が違うとサウンドも変わるね」といった変幻自在さを身につける、そういう方向性もアリだと思います。

メリットその1~機材ごとの違いが判る

冒頭で少し触れましたが、最近、フェンダーのストラトキャスターを新たに購入しました。1号機と同じ「MADE IN JAPAN HYBRID」シリーズです。

2号機はセカンドギターとして、1号機よりも税抜き価格で約3万円安い68年式ラージヘッド、チャコールフロストメタリックを選択(現行モデルは7種類のカラーが選べます)。

好きなロックギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンに倣い、ラージヘッドのメイプル指板のストラトキャスターが欲しいと思っての選択でしたが、1号機とはまるで違う弾き心地。

1号機のストラトもメイプル指板で同じですが、ネック形状の違いがそのまま弾き心地の違和感に。1号機はモダンCシェイプ、2号機はUシェイプとなります。

モダンCシェイプは掌にギュッと収まるシャープな握り心地でしたが、Uシェイプはモコっとしており、僕のような手が小さなギタリストには少々持て余す厚みがあります。

このフィーリングの違いは、もちろん座ったままで弾いても顕著ですが、特にストラップに下げてスタンディングで弾くとさらに際立ちます。2号機のモコっと加減は指が届きづらいのです。

もう少し具体的に説明しますと、スタンディングで速弾きする際、低音弦に指が届きづらく感じ、モダンCシェイプよりも手首を返さないと指先が届かず弾きづらいのです。

このため、速弾きを披露しなければならない楽曲もフォローしなければならないオールラウンドで使い勝手が良いのは1号機となります。

では、すべての面において2号機が1号機に劣るのかというとそんなコトはなく、モコっと加減が優位に働くコトもあります。カッティングやコード弾きを多用する際の弾きやすさです。

掌全体がピッタリと、ネック裏面が完全に密着するコトによるものなのか、指先が届きづらくなるデメリットと引き換えに、グリップ力が最大限に発揮されるコトによるものと分析しています。

野球のバットの両端を持ち、それぞれ逆方向に捩じってみると、グリップ側を掴んでいる方が絶対に力負けします。物理法則でヘッド側を掴んでいる方が強く回転力をかけられるからです。

同じ原理が働くのか、複数弦を押さえる場合、ネック裏が掌全体にピッタリ密着する方が効率的に指先に力をかけることができる。そのため「押さえやすい」と感じるのです。

コード弾きだけでなくカッティングもやりやすい。布袋寅泰さんの「BAD FEELING」のイントロを弾いてみると、2号機の方が圧倒的に弾きやすかったです。

2点支持のトレモロユニットを搭載しているコトが操作性における唯一の共通点で、アーミングの違いは感じられませんでした。ココだけは想定どおりで正解でした。

メリットその2~機材の特性に合致した使い分けができる

今後はオールラウンドで扱いやすい1号機をメインに、モコっと加減が速弾きで扱いづらい2号機を半音下げチューニングでセカンドギターにしようと考えています。

すなわち、東京事変「群青日和」やイングヴェイの曲など、半音下げチューニングで弾かねばならない場合に2号機を使う算段であります。

手が小さいギタリストにとってUシェイプは速弾きに不向きですが、半音下げチューニング専用とするコトで弦のテンションが緩やかになるため、少しだけ押さえやすくなります。

弦を押さえる負担が軽減すれば、その分だけ速弾きがしやすくなります。

ストラト2本を効率的に使い分ける場合、それぞれの特性から考慮すると以下のとおりになります。あくまで僕の場合ですが。

細身のネックシェイプが速弾きしやすく、広く浅くオールラウンドで扱える1号機は、レギュラーチューニングでメインギターに

Uシェイプのモコっと加減が速弾きで扱いづらい2号機は、弦のテンションが緩やかになって押弦しやすくなる半音下げチューニングでセカンドギターに

どんなエレキギターを弾いても違いが判らないというギタリストは真の「弘法筆を選ばず」を体現した天才タイプ。できれば僕もそう生まれたかった。

しかしながら、身銭を切って複数の異なる機材を購入し、弾き込んで特性を知り、それぞれの使いこなし方をマスターするコトはできます。

ちなみに、モダンCシェイプのストラトキャスターは高額シリーズで採用されるレアモデルであり、圧倒的多数を占めるのはUシェイプです(2020年6月現在)。

そのため、希少価値が高いモダンCシェイプよりもUシェイプの弾きこなし方をマスターした方が、ストラトキャスターで選択できるシリーズが多様化します。

また、何かの機会で「ちょっと他人のストラトを拝借して…」という場合、Uシェイプのモデルを弾かねばならない可能性が高いというコトになります。

以上のケースや、マイギターが故障や破損した等の突発的トラブルで余儀なくUシェイプを代替で使わなければならない状況も想定されます。

さまざまなタイプのエレキギターに弾き慣れておくコトは、ギタリストにとって緊急的な情報適応力を高めるコトにつながります。

また、「自分が弾きやすいエレキギターを選ぶ」から「弾きづらいエレキギターの弾き方を知る」に意識をシフトチェンジするコトによって基礎的な演奏力が向上します。

それぞれの特性に合致した弾き方を模索するコトによって、そのうち「このエレキギターの弾き方(鳴らし方)が判ってきた」という前向き思考がフツウになります。

そうなれば過去の僕のように、例えばネックが太いストラトは最初から選ばないという食わず嫌いから脱却できます。あるいは、ちょっとの工夫で弾きやすくなる方法を模索できます。

どんなエレキギターだろうが超絶技巧を披露できる「弘法筆を選ばず」はムリかも知れません。

しかしながら、どんなエレキギターだろうが、ちょっとつま弾いて特性を見極め、それぞれの良さを最大限に活かせる「弘法筆を選ばず」であれば、努力次第で実現できます。