ロックギタリストがヌーノ・ベッテンコートを必ず聴くべき理由

ロックギタリストがヌーノ・ベッテンコートを必ず聴くべき理由

テクニカル系ロックギタリストとして商業的に成功を収めた1

速弾き偏愛主義の僕が書くブログを読むくらいですから、すでにヌーノについて先刻承知のコトと思いますが、ごくカンタンに彼のプロフィールを。

ヌーノ・ベッテンコートは1985年にバンド「エクストリーム」結成、1989年にデビュー。1990年リリースの「ポルノグラフィティ」でシングル曲が全米1位を獲得。

1995年にエクストリームを脱退。その後、ソロ活動を主体とし、2008年バンド再結成し、アルバムをリリースしています。

また、卓越したウデを買われ、ジャネット・ジャクソンのアルバムやリアーナのコンサートツアーに参加するなど、世界的シンガーからオファーを受けるほどの売れっ子でもあります。

テクニカル系ロックギタリストとして正確無比な演奏をライヴで体現できる中、一介のギタリストとして商業的に最も成功を収めた1人といっても過言ではありません。

もう1つ、ギタリスト目線で彼のシグネチャーモデルにも触れておきたいところであります。

ヌーノが愛用しているのがワッシュバーン製「N4」で、ナチュラルカラーのアルダーにリバースヘッドという、瞬時にヌーノモデルと判るルックス。

構成パーツ類は速弾き御用達ともいえるもので、ピックアップはビルローレンス製ハムバッカーをフロント・リアに2基搭載。ブリッジは激しいアーミング向きのフロイトローズ。

気になる値段は30万円台というなかなか高価なもので、フェンダーUSAのハイエンドモデルが買えてしまうほど。

あいにく、実際に弾いたコトがないのでレビューは書けませんが、シングルコイル偏愛主義の僕はイマイチ興味が湧きません。ただし、ヌーノファンには垂涎であるコトに間違いないでしょう。

 

音の粒子が1つ残らず際立つ「聴き疲れしない」速弾き

エクストリームの中心的メンバーとして存分に速弾きを披露したヌーノは、当時のギターキッズにとって当時「Mr.Big」メンバーだったポール・ギルバートと双璧をなす超人気。

残念ながら、僕が大好きだったイングヴェイ・マルムスティーンの人気は今ひとつ。速弾きに熱中していた周りのエレキギター弾きは、ポール派かヌーノ派で分かれていました。

あれから30年、アルバム「エクストリーム」はとっくに手放してしまいましたが、ファンク色が強い粘っこく絡みつくようなリフと、スキッピングやタッピングを絡めた超絶技巧は溜息もの。

特に、ギターソロで音の粒子が1つも潰れずにキレイに揃う速弾きは、荒くれイングヴェイや正確無比であるが故に無味乾燥になりがちなポールのそれとも全く違う。

ファンクがルーツであっても、ヌーノのトレードマークたる「音の粒子が際立つ速弾き」の本質はネオ・クラシカル直系。ヴィニー・ムーアやランディ・ローズを思わせるものであります。

 

注目すべきは右手ではなく左手、卓越したフィンガリングが身上

ヌーノの音の粒子がキレイに揃う独特の速弾き、アレはどのようにして展開されているのか?

CD音源だけでは分析できないので、彼のライヴ映像を自分なりに研究していくうち、ある仮説が成立するコトに気付きました。

それは他でもない、左手の達者かつ器用な動き、すなわちフィンガリングの妙であります。

こういう書き方をすると、まるで右手の動き、すなわちピッキングが凡庸に思われてしまうので、ここでは右手よりも左手に注目してほしいというニュアンスでご理解ねがいます。

長めにストラップをかまえて、親指をグッと立てるかネックを握り込むようにして弾くのがヌーノの基本的なフィンガリングスタイル。

一方、ピッキングはカッティングなどのリフではオーソドックスなストロークを展開するものの、速弾きでは手首よりピックを摘む人差指と親指を細かく上下させる独自のスタイル。

ピッキングのタッチは非常に柔らかく、ピック先端で弦を滑らせるようなニュアンス。尖っているのはフレーズのみ、その対比もまたヌーノの魅力であります。

さて、速弾きですとどうしてもピッキングに注意が向きがちですが、音の粒子が揃った速弾きは、1つ1つのピッキングごとに音を素早く切るところがキモとなっています。

あまり切りすぎるとミュートまたは音詰まりに聴こえてしまうので、1つのピッキングをした瞬間、ヌーノの左手すなわちフィンガリングは、

瞬時に指板を押さえて音を出す→指を指板から浮かせる

あれほどの速弾きフレーズを展開する中、いとも容易くコレを繰り返しているのです。コレこそがヌーノの音のツブがキレイに揃う理由なのです。

軽快なリズムで始まったかと思うと、そこから怒涛の速弾きが延々と続くヌーノ屈指のテクニカルナンバー「flight of the wounded Bumblebee」を聴けばすぐ判ります。

ライヴ映像でこの曲を弾くヌーノのフィンガリングを確認できますが、フレーズが単調にならないよう、フィンガリングの指圧をわずかに緩めて指板から浮かせて速弾きするシーンがあります。

そのシーンだけ微妙にスタッカートがかかったような音になるので、エレキギター弾きでなくとも「ああ、ココだ」とすぐに気付くハズ。

ピッキングするごとに瞬時に指板を押さえ、次の瞬間、指板から指を浮かせる。いうのはカンタンですが、コレを実践するのは本当に難しいのであります。

ピッキングとフィンガリングのタイミングが完全に一致する、コレが絶対条件だからです。

コレが速弾きでなければ、中級以下のギタリストでもどうにかクリアできるでしょう。ところが、16連符の連続速弾きを展開する中で音を切るのは至難のワザなのです。

いかなるトリッキーなプレイも超絶技巧もラクラクこなしてしまう屈指のテクニカル系ギタリストですが、根本はオーソドックスな速弾きを展開するのがヌーノ。

バリバリに歪ませた、大音量で尖ったフレーズを展開するのが速弾きの醍醐味ですが、音のツブをキレイに弾き切る基本姿勢は、すべてのロックギタリストが目指すべき指標であります。

ぜひとも一度はヌーノを聴くコト。できればライヴ映像で、視覚と聴覚をフル動員して体感すべきであると断言します。

音楽性が好みでなくとも、そのプレイを一聴すれば、彼が「ミュージシャンズミュージシャン」の称号を得ているコトが妥当な評価であると納得できるハズです。