東京事変「新しい文明開化」から浮雲というギタリストを読み解く

東京事変「新しい文明開化」から浮雲というギタリストを読み解く

変幻自在の怪人、東京事変の世界観を体現できる唯一無二のギタリスト

エレキギターを弾かないヒトでも、東京事変のファンであれば、「浮雲」名義で参加しているそのギタリストのコトを知っていると思います。

今回のテーマは浮雲こと長岡亮介さん。僕が所属するバンドでも東京事変は大人気なので、泣きを入れながら「新しい文明開化」の練習がようやく仕上がってきた区切りに。

以前のブログでも東京事変について取り上げたコトがありましたが、

「高難度を誇る超絶技巧バンド~東京事変」→コチラ

「東京事変「群青日和」をバンドで演奏するには」→コチラ

社会人ブラスバンドに所属するメンバーから「東京事変なんか(コピー)やったら死にますよ」と忠告されたのはバンド加入後ほどなくの話ですが、その忠告は至極妥当なものでした。

僕は当然としても、他のメンバーも相当苦慮しており、何度合わせてもイマイチしっくりこない。スカッとしたバンドの一体感が得られない。噛み合わないのです。

僕はさておき、学生時代のバンドコンテストで上位入賞したりブラスバンドで全国大会に連続出場したりと、相応の演奏力を身につけているメンバーでさえ四苦八苦するのが東京事変。

「だったら他のコピーにしとけよ」と言いたくなるのですが、コレがまたステキな曲ばかりなので、その魔力…ではなく、妖しい魅力に取りつかれてムチャをしたくなるのも東京事変。

ファンの皆さんにとっては先刻承知でしょうが、東京事変は椎名林檎さんを中心に凄腕メンバーでガッチリ固められた超絶技巧バンドであります。

そのルーツは腕利きギタリストがひしめくカントリーに

そんな腕利きたちの中でエレキギターを弾く長岡さんは、時に妖艶、時にシック、時にコミカルと、椎名さんが織り成す唯一無二の世界観を見事なアレンジでプレイしています。

僕は、イングヴェイ・マルムスティーンに代表されるネオ・クラシカル系メタルの速弾きがスキでエレキギターを弾いているようなものですが、長岡さんのルーツはカントリーにあります。

カントリーといわれても、ウエスタンハットにジーパンとブーツで身を固めたカウボーイが陽気なギターをテレキャスターでかき鳴らすというイメージしかありませんでした。

確かにそのようなスタイルでステージに上がるカントリーギタリストも多数いるのは確かですが、1つ違うのは「陽気なギター」が信じられないほど難易度が高いモノであるというコトです。

カントリーで最も有名なギタリストは、イギリスが生み出した天才レジェンド、アルバート・リーでしょう。全く疎い僕でさえ、名前だけは知っています。

エリック・クラプトンやリッチー・ブラックモアといった、ロックギタリストの神といっても過言ではない世界的レジェンドが絶賛するほどのテクニシャン。

「とはいってもカントリー? オレのスキなジャンルじゃないしな…」

しかしながら、その演奏を試しに視聴して、そんな認識を改めざるを得ませんでした。カントリーを知らないロックギタリストでさえ一瞬で納得させる素晴らしさ。

とはいえ、クラシカル系のメタルとは一線を画するカントリー気質全開のアプローチは存分に堪能できました。

カントリーで培った演奏力に裏付けされた奇想天外なフレーズ

「新しい文明開化」は椎名林檎さんが長岡さんにストレートな速弾きを求めたというエピソードがあるそうですが、そこは長岡さん。カントリー上がりの変則ワザを織り込んでいます。

星野源さんの大ヒットナンバー「恋」も長岡さんがエレキギターを弾いていますが、ストレートなロックンロールでは絶対にあり得ないアプローチが展開されます。

ミドルテンポなのにフレーズをコピーするのが1つ1つ難しい。いちいち難しい。異常な素早さで弦やフレットを上下左右に大きく飛び越えるフレーズの応酬。

まるで、指板の上をバッタがピョンピョン飛び交うがごとくの忙しさです。

以前、スポーツ系バラエティ番組で「ストラックアウト」というゲームがありました。

念のため解説しておきますと、野球のストライクゾーンを見立てた縦3×横3で9等分された的を狙ってボールを投げるゲームです。

「恋」もそうでしたが、最近覚えた「新しい文明開化」のリフやギターソロもストラックアウトに通じる難しさがあります。「狙ったフレットに素早く正確に指先を届ける難しさ」です。

大きくフレットを飛び越えるフレーズが何度も登場するのですが、そのフレットに向かって正確に指先を移動させなければならない。

「新しい文明開化」では、リフではペダル奏法やオクターブ奏法を多用したフレーズがサビで登場します。ギターソロでは3つの四分音符を1拍に詰め込むなどの変則プレイも。

オクターブ奏法はイントロのリフから始まり、サビではペダル奏法とオクターブ奏法が交互に展開します。ココで意外とクセモノなのが、一見カンタンそうなオクターブ奏法。

オクターブ奏法は同じ音階で1オクターブ異なる2つの音を一度に鳴らすテクニックですが、四分音符で正確に鳴らしていくのが意外と難しい。

個人的に最も苦慮した「新しい文明開化」のオクターブ奏法は(フレットを「F」と表記)、

5弦9F・3弦11F

 ↓

5弦11F・3弦13F

 ↓

4弦8F・2弦11F

 ↓

3弦11F・1弦14F

というフレーズです。単音であれば初心者でも弾けますが、オクターブ奏法になった瞬間、超絶に弾きづらいフレーズに早変わり。

2つの音を同時に鳴らし、かつ正確にポジションチェンジするのはかなり苦労します。

「新しい文明開化」という曲のギターコピーについて一言

ロックギタリストにとっては変則的なクセの強いフレーズをモノにするまで相応に苦慮すると思いますが、決して弾けない曲ではありません。「群青日和」より難易度は高いですが。

まずはポジションを覚えるために練習し、次にアルバムを聴きながらオリジナルに合わせて練習。数をこなして練習さえすれば、この曲のキャッチーな疾走感を存分に楽しめるコトでしょう。

これらのフレーズをモノにするには、百発百中で正確に狙ったフレットに指先を到達させるコト、アルバムを何度も聴き込んで変則的な採譜のニュアンスをモノにするコトが必要不可欠。

このあたりは理屈ではありません。それこそ、キャッチャーが求めた内角低めや外角高めに向かい正確に投球するピッチャーと同じく、地道な基礎練習の反復あるのみです。

今のところヤル気さえ起きませんが、長岡さんのカントリー仕込みのチキンピッキングに挑戦したければ「修羅場 adult ver」をオススメします。

そのイントロはチキンピッキングとスウィープピッキングの併せワザという超高難易度。

もちろん、長岡さんの代名詞ともいえる低音域と高音域を激しく交差するフレーズや変則リズム、細かなフィンガリングをからめながらの王道カッティングも健在。

椎名林檎さんが少女的危うさとオトナの女性としての妖しい色気とともに歌い上げるステキな曲と思いますが、今のところは遠慮したいところ。

バンドメンバーの誰かが「この曲のコピーをやりたい!」と言い出さないコトを祈るばかりです。