エレキギター「超ゆるい感じの練習」のススメ

エレキギター「超ゆるい感じの練習」のススメ

かれこれ6年ほど前、ひょんなコトから同業者でバンドを組むコトになって、色々な経験をさせてもらうことができました。バンド仲間との苦楽の日々は良き思い出となっています。

ところが2021年現在、世界中を未曽有の混乱に陥れた新型コロナウイルスの猛威は衰えるコトなく、バンド活動は実質上の無期限中止。バンド練習はおろか、人前で演奏する機会も皆無。

長らく続く自粛生活の余波を受け、帰宅後や休日、気が向いた時だけストラトキャスターを抱えてほとんど惰性ともいえる自主練習がほんの少し。

手グセといいますか、すでに弾けるようになった曲をひととおりプレイしてみたり、好きな速弾きフレーズをサラっとやってみたり、たまに鏡でフォームをチェックしたり。

しかしながら、そんな自堕落な練習をしているコトによって普段はまず体感できないメリットが。

それは、次の演奏の機会までに課題曲(といっても100%コピーですが)をマスターしなければならないといった切迫した状況でない「超ゆるい感じの練習」ができるコトであります。

「まぐれ当たり的に弾ける瞬間」を意図的に何度でも再現する、要は弾けるようになる。

そのヒントは「超ゆるい感じの練習」にこそあります。今回は「超ゆるい感じの練習」でなければ得られないメリットの数々について綴りたいと思います。

中級ロックギタリストの上達を阻む2つのカベ

誰でも練習すれば、必ず「ある程度のレベルまで」エレキギターを弾けるようになります。尤も、「ある程度のレベル」の定義には個人差がありますが。

グレイ・ラルク・ルナシーのコピーであれば中級ロックギタリストにとってちょうど良い課題曲が揃っていますし、努力次第で必ず弾けるようになります。

ところが、イングヴェイ・マルムスティーンやポール・ギルバートあたりがバリバリ弾きまくっているような曲となると、恐らく10年単位での練習が必要になります。

こうした難曲は「いつかステージで披露してやる!」とコツコツ地道に練習するしかないのですが、まぐれ当たり的に「アレ、いま弾けた!?」という瞬間を体験したコトはないでしょうか。

とても気分が乗っている時とか、自分では良く判らないけど絶好調という時に、いつもなら絶対に弾けないハズのフレーズが全くミスせず弾ける瞬間があります。

ところが翌日やってみると、やっぱり弾けない。何度やっても弾けない。いつも躓くところで必ず躓く。「あーあ、やっぱ弾けねえ」と基本練習を再び繰り返す。

僕だけでなく、だいたい弾けないフレーズで悩んでいる中級ロックギタリストはみんなこんな感じではないでしょうか。情けないような腹立たしいような、そんな気持ちですね。

当然ながらフレーズはすべて暗記できている。ゆっくり弾けば正確に弾けるし、オリジナルと同じテンポでも多少ぎこちないが弾ける。なのに、100%の成功率にならない。

では、なぜそのようなコトが起こってしまうのか?

それは、「巧く弾きたい=巧く弾かなければならない」という思い込みによって起こる心理的負荷によるところが大きいのです。

つまり、失敗できないという緊張感や失敗したくないという焦りが、本来できるハズの演奏にミスを誘発させるのです。まさに悪魔のささやきといったところでしょうか。

「超ゆるい感じの練習」がもたらす3つのメリット

「本番でビビってミスるのはウデが未熟だからだ。練習で自信がつけば必ず弾ける!」そう考えて地道な反復練習を繰り返す。何度でも、何年でも。

中級ロックギタリストが世界最高峰の速弾きフレーズをライヴで弾き切れるようになるためには、その覚悟と意気込みこそが必要。そう思って僕もガキの頃から練習してきました。

ところが、それだけでは脱中級には至らない。まるで、出口の見えない迷路とか乗り越えられないカベに閉じ込められるような錯覚に陥り、上級ギタリストの領域に辿り着けない絶望に。

ところが、そんな負のスパイラルを一気に打ち破る方法が実は身近なところにあります。バリバリ気合を入れて毎日数時間練習するハードな練習と対極にある練習です。

つまり、ちっともハードでない、なんならエレキギターの練習そのものを放棄してしまうのもアリというくらい対極にある「超ゆるい感じの練習」です。

もちろん弾きまくりたい気分の時は存分に弾くべきですし、あえて「超ゆるい感じの練習」をする必要はありません。

僕もコロナ禍が終息して平和な日々を取り戻すコトができればバンド活動を再開して、あちこちでお呼ばれした会場で演奏します。

それまでの間、「超ゆるい感じの練習」を取り入れるコトによって、実は自分で思っていた以上に演奏力が上がっているコトを体感し、自信をつけて弾みをつけてほしいと思います。

前置きが長くなりましたが、「超ゆるい感じの練習」がもたらすメリットは中級ロックギタリストの上達を阻む2つのカベを軽々とブチ壊す破壊力があるのです。

メリットその1:邪念なき平常心で、本来の実力を体感できる

そもそも「超ゆるい感じの練習」なのですから、そもそも緊張しませんし、焦りも起こりません。そういった心理的余裕を崩さないままで潜在能力を引き出すのです。

絶対に成功させてやるという気負いを持たず、失敗したらどうしようという不安も持たない。ただ覚えたフレーズを1つずつ丁寧に、テンポよりも正確性を重視して弾いていくのです。

そうするとフシギなコトに、これまで躓かず弾けたコトがなかったフレーズが、最初から最後までスラっと弾けたりするのです。

もちろん、そのフレーズを弾き切れるだけの演奏力が備わっていればの話なので、「超ゆるい感じの練習」でも弾けないなら単純に演奏力が足りないと思い直して練習に励んで下さい。

逆に、心理的抑圧によって本来の実力を発揮できずに苦しんでいたヒトには「超ゆるい感じの練習」がもたらすメリットが大きいです。

重要なのは1つだけ、心の底から「別に弾けなくてもイイ」と割り切れるコトです。

いざ、弾きたいけど弾けなかったフレーズを前に「ミスしたくない」とか「ミスしたらどうしよう」といった邪念が入った瞬間、「超ゆるい感じの練習」でなくなります。

メリットその2:客観的に演奏フォームを振り返るコトができる

「超ゆるい感じの練習」がもたらすメリットの2つ目は、ミスせず弾き切るという気負いがない分、演奏以外のコトに意識を振り向けるコトができる点です。

例えば、

フィンガリングで指先がフレットと水平になっているか

フィンガリングで弦を押さえる力が強すぎないか

ピッキングのフォームで変なクセがついていないか

ピッキングで弦を弾く力が強すぎないか

これらは、もちろん弾きながら目線を下げて追うコトができますが、「超ゆるい感じの練習」では、鏡で自分の姿を逐一チェックしながらの練習をオススメします。

スマートフォンの動画モードで録画してチェックするのも良い方法だと思いますが、手っ取り早いのは鏡ですので、僕の場合はそうしています。

そうすると、文字どおり別角度から自分の演奏フォームをチェックできます。

自分でいうのも烏滸がましい話ですが、プロのギタリストの教則ビデオで収録されているフィンガリングやピッキングのフォームと通じるものを感じるコトができるようになってきました。

僕が同等に巧くなったという話ではありません。そこから伺える共通点とは「リラックス」です。

リラックスできるためには余裕が伴っていなければなりません。余裕を持たせるためには演奏力が向上しなければならない。演奏力という裏付けがあってこそのリラックスなのです。

超絶技巧を誇るプロのロックギタリストはみな、スタイルやフォームに違いはあっても、例外なくリラックスして弾いています。どんなに速くとも、全身にも指先にもムダな力みがない。

すなわち、観ている側からすれば、巧くなればなるほどリラックスして弾いているように映る。

「超ゆるい感じの練習」には気負いがない分、精神的リラックス状態なので肉体もリラックスする。当然、ガチガチだった身体の力がほどよく抜けた状態になるので指先が良く動くようになる。

演奏フォームを逐一チェックするコトによって、理想のリラックスフォームを実現するコトができます。その先にあるのは上級ロックギタリストだけが知り得る領域であります。

メリットその3:弾ける曲がさらに巧く、弾けなかった曲が弾けるように

僕は手が小さく指が短い分、弦を押さえるのに苦労します。そのため、正確に弾かなければと思う気負いが強い分だけムダな力が入りがちになります。それでは弾けるものも弾けなくなる。

必要最低限の握力で、必要最低限の力で弦を押さえる。同じく、必要最低限の力で弦を弾く。

「超ゆるい感じの練習」なので他のコトに意識を振り向けながら練習できる。時間にも気持ちにも余裕があるので、いつもどおりでも弾けるフレーズを敢えて別なアプローチで弾くのもアリ。

バンド活動が余儀なく中止になる直前、東京事変のコピーを中心にやろうという話になってスコアを自宅に持ち帰って練習していますが、知る人ぞ知る超絶技巧のオンパレードであります。

僕のお気に入り曲の1つ「新しい文明開化」のギターソロでいつもミスするフレーズがあるのですが、上記のアプローチで弾く練習を始めてからはミスの頻度が下がりました。

イングヴェイ・マルムスティーンの超絶技巧の中でも特に難しいとされるインスト曲に「ファー・ビヨンド・ザ・サン」と「エクリプス」があります。

いずれも手強い難曲ばかりですが、フレーズ単位で弾けるようになってきました。「この部分だけならオリジナルのテンポで弾ける」といった状況です。

しかしながら完成度が低く、10回弾いて2~3回はソレっぽく弾けたかなと思う程度でした。

ところが「超ゆるい感じの練習」を続けながら、必要最低限の力で弦を押さえて必要最低限の力で弦を弾く練習を意識していたところ、今日このブログを書く寸前にスンナリ弾けるように。

つい先ほどまで「エクリプス」の中盤で炸裂するアルペジオを練習していたところ、いつもは必ずミスする箇所がスルッと弾けたのでした。「アレ、いま弾けた!?」の心境でした。

この成功体験と興奮をそのままに、次に「ファー・ビヨンド・ザ・サン」のイントロを弾いたら、あらフシギ、こちらも多少ぎこちないまでも以前より格段に巧く弾けました。

その興奮をそのままに、このテーマについて綴ろうと思った次第です。綴り終わったら再び練習に戻りたいと思っています。

今回のテーマ「超ゆるい感じの練習」から「バリバリ本気で弾きまくる練習」になりそうですが。

皆さんも、息詰まった時やエレキギターを弾く気分でない時にお試しいただければ幸いです。